受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

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2025年5月のBooks

 Booksコーナーでは、小学校低学年から高学年までを対象とした読み物や、保護者の方向けの図書を、新刊中心に紹介しています。学習の合間などに、ぜひ読んでみてください。

『ワルイコいねが』

  • 安東みきえ=著

  • 講談社=刊

  • 定価=1,650円(税込)

  • 対象:小学校高学年向け

新しくできた友だちは 他人のお葬式を見たがる 「やばいやつ」!?

注目の一冊

 人に嫌われたくなくて、嫌いなものを「嫌い」と言えない美海。そんな美海の前に現れたのは、秋田から転校してきた少女、アキトでした。アキトはその場の空気など考えず、思ったことを何でもストレートに言うため、学校ではみんなに嫌われています。ある日、美海が近所のお寺の前を通りかかると、喪服姿の人たちを電信柱の陰からじっと見つめる人がいました。よく見るとアキトでした。
 「ワルイコはいねが」「ウソつく子はいねが」。鬼のような仮面をつけ、わらの装束を身にまとった男たちが、子どもたちを追いかけ回す秋田の伝統行事といえば「なまはげ」ですが、その話が随所に登場します。「なまはげは子どもたちを脅すだけじゃない。『この子は悪い子じゃない』と言って、なまはげから守ってくれる人がいることに気づかせる行事でもある」とアキト。実はアキトにもかつて、なまはげから自分を守ってくれる大切な人がいたのです。
 アキトはなぜ人の死に興味を持つのか。その謎が明らかになったとき、美海はアキトが抱えてきた本当の思いを知ります。自分の気持ちにうそをつくことに後ろめたさを感じる美海。悲しみの納めどころがわからず、奇異な行動をしてしまうアキト。対照的な2人の少女の友情をていねいに描き出します。

『そらくんのすてきな給食きゅうしょく

  • 竹内早希子=作

  • 木村いこ=絵

  • 文研出版=刊

  • 定価=1,760円(税込)

  • 対象:小学校低学年向け

すべての子どもたちに 安全でおいしい給食を

 そらくんは小学1年生。きょうからいよいよ給食が始まります。きょうのメニューはシチューです。大きな鍋から一人分ずつ器に盛られ、緑色のトレーに。そらくんの分は、調理員さんがピンクのトレーにのせて持ってきました。アレルギーがあって、みんなと同じものが食べられないからです。
 かつてある小学校で、アレルギーのある子が亡くなる給食事故がありました。それ以後、全国で給食の見直しが行われ、安全管理が徹底されるようになりました。すべての子どもたちに安全でおいしい給食を、との願いから描かれた絵本です。

工場大こうじょうだいずかん つくりかたしりたいがいく!

  • うえたに夫婦=作

  • 偕成社=刊

  • 定価=1,980円(税込)

  • 対象:小学校低学年向け

ものづくりには 工夫がいっぱいなのだ!

 「つくりかたしり隊」は、ものがどうやって作られるかを調べる組織です。さっそく「歯ブラシ」の作り方を見てみましょう。工場に入ると、ブラシの毛を植える植毛機や、毛先をカットする機械などがずらり。口に入る歯ブラシに接着剤は使えません。毛の植え方にはすごい工夫があるのです。
 鉛筆・ポテトチップス・靴下など、身近なものが、どのように作られるかを楽しいイラストで紹介します。見開きいっぱいに描かれた工場内の絵を、番号順に見ていくと、完成までの工程がよくわかります。

『ガチャコン電車血風録 地方ローカル鉄道再生の物語

  • 土井勉=著

  • 岩波書店=刊

  • 定価=1,034円(税込)

  • 対象:小学校高学年向け

ローカル線の未来を照らす 近江鉄道の再生物語

 滋賀県東部の10市町に及ぶ地域を走る近江鉄道。歴史あるこの私鉄の路線が、輸送人員の減少などから「事業継続は困難」と発表したのは2016年のことです。しかし廃線の危機が迫るなか、その8年後、近江鉄道は新方式での運行をスタートさせました。
 全国各地で存続の危機にあるローカル鉄道。その未来を明るくすべく、近江鉄道の再生事例を通して、新しい時代のローカル鉄道の在り方を考察します。なぜ何年も赤字経営を続けながら運行できているのかなどの素朴な疑問にも答えてくれます。

『翼の翼』

  • 朝比奈あすか=作

  • 光文社=刊

  • 定価=858円(税込)

  • 対象:保護者向け

中学受験に挑む親の心情を 生々しく描く話題作が文庫に

 夫は単身赴任で、ふだんは小2の息子と暮らす専業主婦の円佳。軽い気持ちで受けさせた全国模試が良い成績だったことから、息子を進学塾に入れ、中学受験に挑戦させることを決めます。成績が上がるごとに期待がふくらむ円佳ですが、周囲のうわさに振り回されるなか、息子への言動は、わが子を思う純粋な気持ちとは掛け離れていきました。
 中学受験に挑む家族の姿を生々しく描いた話題作が、文庫化されました。「受験に向けてがんばるうちに、失いがちになるものがある、それを失わないでほしい」。著者のメッセージが強く伝わります。

『男子が中高6年間でやっておきたいこと』

  • 工藤誠一=著

  • KADOKAWA=刊

  • 定価=1,650円(税込)

  • 対象:保護者向け

中学生になったら必要な 新しい親子関係とは?

 中学・高校の6年間は「親や友人、教師などにもまれながら、自分自身の価値を模索する時期です」。こう語るのは名門男子進学校、聖光学院の工藤誠一校長です。自立していく過程にある彼らとどんな親子関係を築けばよいのか。その鍵は「わが子と共にみずからも成長する親でありたいと願うこと」と言います。
 聖光学院で中高生男子と向き合って45年。その経験をもとに中高生男子の育て方を、親の気持ちに沿いながらアドバイスします。予測のつかない時代を生き抜く力についても伝授する、今だからこそ読むべき書です。

『空へ』

  • いとうみく=作

  • 小峰書店=刊

  • 定価=1,650円(税込)

今ここで生きていること その当たり前でない事実に 感謝して前に進んでほしい


国立校校舎責任者

 主人公は父親を亡くした6年生の少年です。母親と妹とのアパートでの3人暮らしが始まり、母が仕事に行く間、自分がしっかり幼い妹の面倒を見ると決意します。中学入学後も妹のためにサッカー部をあきらめ、早く帰れる美術部に入ります。でも自分はそこまでしているのに母も妹もわかっていない、そんな思いが空回りします。この物語の一つのテーマは「家族」です。妹の面倒を見たい。お母さんを守りたい。でも自分にできることは限られている。そう思ったとき、感じるのがお父さんの存在の大きさであり、お母さんの存在の大きさです。
 美術部には、人の顔に絵の具を塗ってくる変な先輩がいます。ある日、主人公は顔に「くちば色」を塗られます。「くちば色」とは落ち葉が土にかえろうとするときの色です。「色にはすごく種類があり、どんな色も使いよう。混ぜれば変わる」と先輩は言います。ネガティブな理由で美術部に入った陽介ですが、自分はどんな色に変わるのか。葛藤がうず巻くなか、それでも自分がいろいろな色に染まることを楽しみに思う場面が印象的です。
 今、皆さんも「自分の色」を探している段階だと思います。中学に入れば色の選択肢はどんどん増えていくでしょう。それは家族、友だち、周りの人たちがいてくれるからこそです。たとえば、今サピックスで勉強をしている。それは当たり前のことではありません。今あるその地盤は誰が築いてくれたのかを考え、感謝して前に進んでほしいと思います。勉強はもちろん大切です。でもただ勉強していればいいわけではなく、今あること、今ある出来事の深みを考えて生きてほしいと思います。

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