受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

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2024年6月のBooks

 図書館では「ぬいぐるみのお泊まり会」という催しがあります。子どもたちのぬいぐるみを預かり、ぬいぐるみが本を読む姿など、夜の様子を写真に撮ってプレゼントするものです。アメリカで生まれた活動ですが、日本でも行われています。今月紹介する『図書館のぬいぐるみかします』は、反対にぬいぐるみが子どもたちの家にお泊まりに行くお話です。ぬいぐるみに絵本を読み聞かせてあげるなど、子どもたちと本をつなぐ役割を果たしてくれます。あなたの街の図書館にぬいぐるみはいますか。

嘘吹うそふきアンドロイド』

  • 久米絵美里=作

  • PHP研究所=刊

  • 定価=1,650円(税込)

  • 対象:小学校高学年向け

「心」だなんて こっ恥ずかしくて言えない でも人間とAIの違いって何?

注目の一冊

 「田中くんってアンドロイドなんだって。知ってた?」ある日、理子は幼なじみの鞠奈に言われてびっくり。隣のクラスの田中瑠卯、通称ルーは男女どちらからも好かれる快活な美少年。そのルーが、「自分は高機能AIを搭載したアンドロイドだ」と、SNSに投稿しているというのです。正義感の強い理子は、なぜルーがそんなうそをつくのか気になり、ペットを見せてもらうという口実で鞠奈と一緒にルーの家に行くことにします。家に行けば、アンドロイドのふりをしている理由がわかると思ったのです。でもルーは家でも終始笑顔で、開発者が自分を「瑠卯」と名付けた経緯や、アンドロイド宣言した理由を話して聞かせるのでした。
 理子はルーに関する疑問を、知り合いの錯に相談します。錯は、息を吹きかけることで物事の真偽を見抜く特殊能力を持つ少年で、学校に行かず、いつもその高いITスキルを使って自室にこもって何かを作っています。この二人の少年がことあるごとに語る、AIやアンドロイドの話がおもしろく、答えの出ない問いがたくさん出てきて引き込まれます。
 人間とAIの違いは何か。物語の終盤でその答えを錯が語るとき、理子は「ロボットに心はあるのか」という言い古されてきた問題を、錯とルーが逃げずに考え続けていたことに気づきます。「アンドロイド? AI? 人間? 考えすぎだ。助けたいから助けに行く」。ルーを取り巻く問題が明らかになり、彼を救うにはどうしたらいいか、皆が悩むなか、まっすぐな理子の正義感が力を発揮します。

『図書館のぬいぐるみかします』

  • シンシア・ロード=作

  • ステファニー・グラエギン=絵

  • 田中奈津子=訳

  • ポプラ社=刊

  • 定価=1,430円(税込)

  • 対象:小学校低学年向け

忘れられていた人形が 図書館で始めた第二の人生 新しい友だちは見つかる?

 アイビーは、アンが子どものころ大好きだった人形です。アンが大きくなってからは、屋根裏の箱の中にしまわれていました。ある日、アンは箱の中からアイビーを出して、自分が働く図書館に持っていきました。図書館には、本のように借りられる「ブックフレンド」いうぬいぐるみたちがいるので、アイビーをその仲間にしようと思ったのです。
 アイビーはさっそく、ファーンという女の子に貸し出されます。でもファーンは「わたし、人形遊びなんかしないのに」と、アイビーを借りたくない様子です。アイビーは、ファーンと仲良くなれるのでしょうか。女の子と図書館の人形が、それぞれの居場所を見つける物語です。

『鳥がおしえてくれること』

  • 鈴木まもる=文と絵

  • あすなろ書房=刊

  • 定価=1,760円(税込)

  • 対象:小学校低学年向け

家の作り方も、ダンスや子育ての方法も 鳥は人類の先生だった!?

 大昔、まだ人類が誕生して間もない時期。人々は狩りや漁をし、ほら穴などで生活していました。やがて草を集めて家をつくるようになりました。それは草を集めて巣を作っている鳥を見たからかもしれません。実際、セアカカマドドリという鳥は、土に枯れ草を混ぜて壊れにくい巣を作ります。この鳥は、人間が丈夫な家をつくる手本にするよう、神様が世界につかわしたと言われています。
 服を作ることも、ダンスや子育てのしかたも、鳥が教えてくれたかのように思えるところがあります。そして今、絶滅した鳥たちは、自然を守る大切さを教えてくれています。鳥の巣の研究家でもある絵本作家が贈る、ユニークな絵本です。

『ぼくのなかみは なにでできてるのか』

  • かさいまり=作

  • おとないちあき=絵

  • 金の星社=刊

  • 定価=1,595円(税込)

  • 対象:小学校低学年向け・小学校中学年向け

悔しくても何も言えないぼく 「どうせ明日も同じだ」 でも本当にそう?

 1年生のとき、教室でおしっこを漏らして笑われて以来、からかわれることが多いはると。クラスにはもう一人、よくからかわれるやすくんがいます。やすくんは、からかわれても気にしていないようです。でもはるとは、からかわれると何も言い返せず、悔しくても頭にきても笑って我慢してしまうのです。
 「ぼくの中身は弱虫と泣き虫でできている」。悩むはるとに、お母さんは言います。「はるとは強い子だね。自分のことをちゃんと見てる。それは強いからできるんだよ」。やがてやすくんの転校をきっかけに、はるとは大きな一歩を踏み出します。自分の中に少しずつ、違う中身が増えてくることを感じます。

『捨てられる魚たち』

  • 梛木春幸=著

  • 講談社=刊

  • 定価=1,430円(税込)

  • 対象:小学校高学年向け

漁獲した魚の3割が廃棄! 理不尽な現実に 立ち向かう料理人がいた!

 漁獲された魚のうち、捨てられるなどして市場に出回らない魚を「未利用魚」といいます。実は世界では漁獲した魚の約3割が、売る価値のない未利用魚として捨てられています。売れない魚を、経費をかけて市場に出すわけにはいかないのです。料理人だった著者はその事実を知り、何とかできないかと思いました。そしてできたのが、火山灰を使って乾燥させた未利用魚を使った「桜島灰干し弁当」でした。
 なぜ魚は捨てられるのか。日本の漁業を守るにはどうしたらいいのか。海の生態系を守るにはどうしたらいいか。この問題に正面から取り組んだ著者が、自身の活動体験を語りながら、子どもたちにも考えてほしいと訴えます。

『縄文時代を解き明かす 考古学の新たな挑戦

  • 阿部郎=編著

  • 岩波書店=刊

  • 定価=1,034円(税込)

  • 対象:小学校高学年向け

人類学、植物学、動物学 研究成果を結集すれば 見えてくる縄文人の生活

 縄文土器というと、縄目模様などが施された芸術品のような土器を思い浮かべます。でも発見された縄文土器の大半は、すすやおこげが付着していて、煮炊き用として使われていたことがわかっています。では何を煮炊きしていたのでしょうか。縄文時代の人は何を食べ、どんな生活を送っていたのでしょうか。
 かつての考古学は、石の矢じりや骨の釣り針など、出土した道具を中心に研究していました。しかし、現代の考古学はさまざまな方向から研究します。たとえば縄文人の骨の成分を調べれば、食生活がある程度推定できるのです。研究者たちがそれぞれ自分の研究を紹介しながら、考古学は「総合学」なのだと教えてくれます。

りたいこと図鑑ずかん

  • みっけ=著

  • KADOKAWA=刊

  • 定価=1,870円(税込)

用語、記号、種類… 「知らなかった」が満載 覚えるより楽しんでほしい


町田校 校舎責任者

 皆さんは時報を知らせる電話番号を知っていますか。実は「教科書」がすでに略されたことばであると聞いたら、驚く人が多いでしょう。この本は、暮らしの知識から、知る人ぞ知るマニアックなことまで、知りたいこと、覚えていると役立つことを広く教えてくれる本です。たとえば「洗濯表示」。衣類についている洗濯方法を示したマークで、実にたくさんのマークがあります。これを見て「じゃあ自分の服を調べてみようか」と、おうちの方と一緒に確かめてみても楽しいでしょう。「大人も知らなかった」というマークもきっとあると思います。
 算数・国語・理科・社会の4教科に含まれる内容、たとえば地図記号や同音異字、あるいは「円周率」「近代の年号」「臓器の位置とはたらき」など、覚えておくと中学受験に直接役立つものもたくさんあります。「元素記号」や「パソコンのショートカットキー」などは、中学・高校生になってから役立つと思います。
 「覚えなさい」というと気が重くなるようなことも、この本なら、たとえば「徳川15代将軍」のページでは、親しみやすい自動販売機のイラストで紹介してくれるなど、読むのが楽しくなるようなモチーフやデザインで見せてくれるので、気軽に読んで自然に身につくと思います。
 おしなべて最難関校に合格する子や在籍する生徒は、一見無駄と思えるような知識を持っているものです。
 身近なところに置いて、勉強のちょっとした合間などに絵本感覚で読んでください。低学年でも楽しめますし、大人の方が読んでも発見があります。また、親子一緒にページをめくれば話がふくらむでしょう。楽しく読みながら知識の幅を広げ、知的好奇心を育んでいただければ幸いです。

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