受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

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2025年1月のBooks

 いよいよ受験シーズンに入りました。受験生の皆さんは「読書の時間なんてない」と思うでしょうが、この時期の読書は意外に役立ちます。不安感で勉強に集中できないときは、少しの読書で気分をリフレッシュ。読書には集中力を高める効果があります。また、あれこれ考えて眠れない夜、少しでも読書をするとリラックスできます。そんな「ちょっとだけ読書」で上手に受験期を乗り切ってください。そして受験が終わったら、のんびり好きなだけ読書を楽しんでください。

『恐竜博物館のひみつ』

  • 別司芳子=作

  • ながおかえつこ=絵

  • 福井県立恐竜博物館=協力

  • 文研出版=刊

  • 定価=1,650円(税込)

  • 対象:小学校高学年向け

たった一つのかけらでも 見つけたこの化石は 希望のピースだ!

注目の一冊

 それは天野研究員が恐竜博物館に勤めて1か月がたったころでした。夜遅くまで独りで残っていた彼が収蔵庫のドアを開けると、足元に転がっていた大きな石が突然動き出し、しゃがれた声でしゃべり始めたのです。よく見るとそれは、恐竜の展示コーナーの片隅にいるカメの復元模型でした。このカメは甲羅の化石のピースが少ししか見つかっていないので、背中はぼろぼろ。その姿を小学生の博文がばかにしたように見てくるので、カメは残りのピースを見つけてほしくて研究員の彼に声を掛けたのです。その日を境に彼はカメと親しくなり、やがて恐竜の骨格標本たちとも話すようになります。骨格標本たちもそれぞれ事情を抱えていました。そして学校に行かずに博物館に来ている博文にも、人に言えない事情があったのです。
 ティラノサウルス、アロサウルス、プラキロフォサウルスなどさまざまな恐竜、といってもその骨格標本たちが博物館内を動き回る。それだけでもわくわくします。実物頭蓋骨とレプリカ頭蓋骨が口論したり、戦う体勢のまま化石になった「格闘化石」の2頭が再び戦いそうになったり、夜の博物館は大騒ぎ。ストーリーを追いながら、発掘や展示、研究など、恐竜の化石にまつわるさまざまなことを教えてくれます。
 天野研究員と博文の交流、恐竜好きの少年同士の友情など物語としての厚みもあり、恐竜好きでなくても楽しめます。骨格標本などの展示物たちは愛嬌たっぷり。博物館の図書館で、自分たちの生きた姿が出てくる恐竜の絵本を見て喜んでいる姿は、何ともいえません。

『動物の義足ぎそくやさん』

  • 沢田俊子=文

  • 講談社=刊

  • 定価=1,650円(税込)

  • 対象:小学校中学年向け

再び歩けるように 飼い主たちの願いに応え 作った装具は3万匹分!

 もしペットのイヌやネコが病気やけがで歩けなくなったら、どうしたらいいと思いますか。それは仕方ないことだと、少し前までは考えられていました。今は違います。動物の義足やからだを支える補助具を作る専門家がいるからです。
 その先駆けとなって、動物専門の義肢の製作所を立ち上げたのが島田旭緒さんです。島田さんがこれまで動物のために作った装具は3万匹分。イヌやネコだけではなく、ポニーやペンギン、ウサギやタヌキ。脱臼したアイガモが泳げるよう矯正補助器具を作ったこともあります。そんな島田さんの仕事内容と、その装具のおかげで救われた、動物と飼い主さんたちのエピソードを紹介します。

『わたしと話したくないあの子』

  • 朝比奈蓉子=作

  • 双森文=絵

  • ポプラ社=刊

  • 定価=1,650円(税込)

  • 対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け

戻りたくても あのころには戻れない 友だちって何だろう

 6年生の早紀のクラスに転校生がやってきました。驚いたことにその子は、早紀が3年生のときまで仲良しだったわかなでした。「戻ってきたんだ。どうして知らせてくれなかったんだろう」。そう思いながらも、また仲良くできると喜ぶ早紀。ところがわかなは、早紀を見てもうれしくない様子で「わたしにかかわらないで」と言ってきたのです。
 何をするにもどこに行くにも一緒。そんな仲良しだった二人でも、抱えているものが違えば考え方が違ってくるのは当然です。それでも友だちであり続けるにはどうしたらいいのでしょう。友だちって何なのでしょう。お互いを思いながら悩む女の子たちの、友情再生物語です。

『見えないかべだって、越えられる。クライマー 小林幸一郎こういちろう挑戦ちょうせん

  • 高橋うらら=著

  • 金の星社=刊

  • 定価=1,650円(税込)

  • 対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け

障害があろうとなかろうと 登り切れたらうれしい それがクライミングだ!

 小林幸一郎さんは、パラクライミング世界選手権で4連覇したクライマーです。クライミングとは岩や壁を人の力で登るスポーツ。彼は16歳でその魅力を知りますが、30歳を前に、徐々に進行し、最終的には失明する目の難病が発覚しました。絶望する彼にソーシャルワーカーは言いました。「大事なのはあなたがどう生きたいかです。あなたが動き出せば周りは支えてくれます」と。
 障害のある人たちにクライミングを広める小林さんの活動と、その半生を紹介します。彼の努力もあって、パラクライミングは次期パラリンピック実施競技に決まりました。小林さんがそこまでできたのは、自分から動くことですてきな出会いが得られたからです。

『girls』

  • 濱野京子=作

  • くもん出版=刊

  • 定価=1,650円(税込)

  • 対象:小学校高学年向け

未来に向けて想う おかしいなら「おかしい」と 言える女性でありたいと

 修学旅行で新幹線の座席が並んだことがきっかけで、一緒に過ごすことが多くなった宙、紗奈、美森。共学の中高一貫校に通う15歳の3人には、ある共通点がありました。それは3人とも母親と二人暮らしということでした。
 それぞれ事情は違いますが、3人の母たちは女性として生きづらさを感じながら懸命に生きてきました。そんな母たちに対する彼女たちの思いは複雑で、男性に対する考え方や社会の不均衡なども、3人で話すうちに自分たちの問題としてとらえるようになります。中高一貫校の中3生というまったりした日常のなか、語り合う3人が、未来への視点を見いだしていく姿を描きます。

『やさしい日本語ってなんだろう』

  • 岩田一成=著

  • 筑摩書房=刊

  • 定価=946円(税込)

  • 対象:小学校高学年向け・一般向け

伝わる日本語を通じて 考える、多文化共生社会での コミュニケーションの在り方

 駅で「お困りの外国人には May I help you? と声を掛けましょう」と書かれたポスターを見たことはありませんか。外国人には英語で話し掛けよう、というのは考えてみればおかしな話です。本書によれば、日本に住む外国籍の人で日本語がわかる人は8割以上、また世界で英語がわかる人は2割です。つまり、日本にいる外国人には日本語で、それもわかりやすい日本語で話し掛けるべきなのです。
 「やさしい日本語」とは、外国人に情報を伝えるための、わかりやすい日本語のことです。その普及運動を行う著者が、わかりにくい表現が生まれる原因を挙げながら、多文化共生社会でのコミュニケーションの在り方について考察します。

まちの歴史を読み解く 東京ぶらり 謎解きさんぽ』

  • 岡本哲志=著

  • 株式会社エクスナレッジ=刊

  • 定価=1,980円(税込)

自分の町はどんなところ? 志望校がある地域はどんな町? 本を片手に出掛けてみよう!


東麻布校 校舎責任者

 町の地形や歴史などを明らかにしながら、その町の成り立ちや地名に隠されたおもしろい話を教えてくれる本です。「八重洲」「池袋」「目黒」「六本木」「四谷」「白金」など、比較的なじみのある場所を取り上げているので、自分が住んでいる町やよく出掛ける町はどんなところなのか、興味のあるところに絞って読むといいと思います。
 一つの話題が見開き2ページでまとめられていて、地図や図も多いので読みやすいと思います。地図を見て興味が湧いてくれば、社会科の勉強で地図を見るときにも役立ちます。算数を教えている立場からすると、海抜の数字に注目してみるのもおもしろいでしょう。たとえば、駅はどれくらいの海抜にあるのか、沿線の地域の高低差はどうなっているか、といったことも書かれています。これは実際に電車に乗って、両側の車窓に見える地形の違いを見てみると納得できます。
 東京の地理をある程度知っていないとわかりにくいところもあるので、できれば保護者の方と一緒に読むことをお勧めします。一緒に読んで一緒に出掛けてみてください。散歩や旅行のときもそうですが、今までとは違う視点でいろいろなものを見ることができるようになると思います。外に飛び出すきっかけにもなる本です。
 開成中では「東京問題」といって、東京の地理や文化に関する問題が入試で出題されることがあります。開成志望の人は読んでおくと役立つかもしれません。そうでなくても、学校や大学の話題も多く、自分が志望する学校があるのはどんな地域なのか、なんていう視点で読んでみるのもおもしろいと思います。
 今回は東京の本を紹介しましたが、関西にも同様の視点で書かれた街歩きの本はあると思います。江戸時代と明治時代以降の話題が中心の東京と違い、それ以前の室町時代、あるいは平安・奈良時代にも広がるさまざまな話題が出てきておもしろいのではないでしょうか。ぜひ探してみてください。

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