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『北緯44度 浩太の夏 ぼくらは戦争を知らなかった』
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- ◆有島希音=作
- ◆ゆの=絵
- ◆岩崎書店=刊
- ◆定価=1,650円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け
毎日見ているこの海で 多くの人が亡くなったなんて 俺たち、何も知らなかった
それは浩太が浜で貝殻を拾っているときでした。突然、目の前に見知らぬおじいさんが現れ、すれ違いざまに言いました。「あまり海に来てるとひっぱられるぞ」と。えっ? ひっぱられるって何? 気になった浩太は、クラスで総合学習のテーマ決めをするとき、みんなにその話をしました。すると町の歴史に詳しい父を持つ女子が「昔、浜にたくさんの死体が流れ着いたと聞いたことがある。そのことと関係があるかも」と言ったのでクラスは大騒ぎ。興味を持った浩太は、友だちと一緒にあの謎のおじいさんを探すことにしました。
舞台は北海道の西北、日本海に面する小平町。1945年8月22日、樺太から引き揚げてきた人たちを乗せた3せきの船が、近くの海で旧ソ連の潜水艦からの攻撃を受け、1700人以上の犠牲者を出すという大事件が起きました。その事実を知らなかった浩太たちが、地元の人たちに話を聞きながら調べていくと、ひいおじいさん世代の人たちは、幼いときに見た忘れられない光景を誰にも話せず、心に重荷を抱えながら生きてきたことがわかりました。こんな悲惨なことがあったのかと初めて知った浩太たちの胸はえぐられます。
事件の詳細が次々と明かされるなか、「あのときこうしていたらもっと多くの人を救えたかもしれない」「自分がこんな目にあったらどうしただろう」と、子どもたちは自分事として考えていきます。「知恵があるのに何やってんだ、人間は。絶対にどこかにあるはずなんだ。戦争をしない方法が」。浩太の親友が語るひと言は、使命感とともに故郷の歴史を描き上げた作者の思いにつながります。
『地球の気温上昇がもたらす環境災害 たった2℃で…』
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- ◆キム・ファン=文
- ◆チョン・ジンギョン=絵
- ◆童心社=刊
- ◆定価=1,980円(税込)
- ■対象:小学校低学年向け
気温が2℃上がると 地球の生き物たちの 命が危なくなる!
人間は暑いときには汗をかき、寒いときにはぶるぶる震えることで、体温を保っています。でも自分で体温を調節できない魚は大変です。海水の温度が2℃上がると、魚たちは生きられる水温の海を探して大移動しなくてはなりません。虫だって同じです。気温が高くなり過ぎると、南から北へ虫が大移動をしてきます。そして爆発的に増えた虫は、畑の作物に大打撃を与えてしまうこともあります。
地球の気温が2℃上がったら、生き物たちはどんな影響を受けるのか、子どもたちが直感的にわかるように描いた、韓国発の絵本です。親子で一緒にページをめくれば、地球温暖化について考えるきっかけになるでしょう。
『絵画をみる、絵画をなおす 保存修復の世界』
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- ◆田口かおり=著
- ◆偕成社=刊
- ◆定価=1,760円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け
ただきれいに直せばいい、 というわけではない 奥深い美術品修復の仕事
古い絵画や彫刻は、制作されてからさまざまな経験をしてきています。地震や洪水、盗難にあって傷がついたり、持ち主の都合で端が切られたり。そこで登場するのが修復家です。
修復家は作品がどんな素材で作られ、どのような道のりを歩んできたかを明らかにして、傷や色あせなどがあれば直すのが仕事です。とはいえ、きれいにしすぎてはいけません。それは作品が生きてきた歴史を否定することにもなりかねないからです。場合によってはあえて「修復しない」という選択をすることもあります。イタリアで美術作品の修復を学んだ若者が、仕事の奥深いおもしろさを紹介します。読むと絵を見るときの見方が変わるでしょう。
『透明なルール』
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- ◆佐藤いつ子=作
- ◆KADOKAWA=刊
- ◆定価=1,650円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
「心ひとつに」なんて大うそだ。 35人いれば 35とおりの心があるんだから
中学2年生の新学期。優希はクラスの中心、瞳子のグループに入れたのを喜ぶ一方、自分だけ浮かないようにすることに疲れを感じていました。ある日、体育祭のためにクラスのスローガンを決める話し合いがあり、瞳子は「心ひとつに」を提案しました。みんなはその意見に流れそうになりますが、たまたま来ていた不登校気味の転校生が言いました。「心ひとつに」なんて大うそだ、と。
いわゆる「同調圧力」に苦しみ、教室でもSNSでも自分らしく振る舞えないという人は少なくありません。しかし、それは結局、自分で自分を縛っているに過ぎないのでは…。そう気づいた主人公が、クラスメートとの交流を通じて、「透明なルール」を壊していく姿を描きます。
『ぼくの色、見つけた!』
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- ◆志津栄子=作
- ◆末山りん=絵
- ◆講談社=刊
- ◆定価=1,650円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
恥ずかしくても 話してみれば 毎日が変わることもある
信太朗は赤と緑の区別がつきにくいなど、みんなと同じように色が見えません。学校では周りに知られないよう、何とかやっていましたが、母が異常なほど心配することが重荷でした。そんな毎日が変わったのは、5年生になって担任の先生が代わってからです。その先生は一輪車に乗れない、手汗がひどいなど、弱みが多い、ちょっとかっこ悪い先生でした。
できないことや困っていることを人に知られるのは、恥ずかしいかもしれません。でも悩みや不安と正面から向き合って、思い切って人に伝えてみれば、何かが変わるきっかけになることもあります。そんな一歩踏み出す勇気をもらえる物語です。
『中学受験 合格メンタルの作り方』
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- ◆真田涼=著
- ◆日本能率協会 マネジメントセンター=刊
- ◆定価=1,760円(税込)
- ■対象:保護者向け
時期ごとの悩みに 東大生の母である 臨床心理士がアドバイス
学の父、智則は中学受験に失敗した過去があり、何としてでも息子を私立中学に入れたいと思っています。でも、もう6年生の秋だというのに、学はいつもぼーっとしているように見えます。心配した智則は本人に相談しないまま、塾の最終面談で第一志望の学校を変えると言い出します。妻には「いろいろ調べて考えた末に決めた」と言うのですが。
中学受験を経験した保護者であり、臨床心理士でもある著者が、合格に必要なメンタルケアについてアドバイスします。小5・小6の夏、小6の秋、直前期などの時期ごとに、上記のようなショートストーリーから話を進めてくれるので、より身近で具体的なアドバイスが得られます。
『新美南吉童話集』
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- ◆千葉俊二=編
- ◆岩波書店=刊
- ◆定価=924円(税込)
心温まるストーリーなのに すっきりしない読後感 独特の世界観を楽しんでほしい
若葉台校 校舎責任者新美南吉の童話を初めて知ったのは、小学校4年生のときです。国語の教科書に載っていた『ごんぎつね』を読んだのがきっかけで、図書館で新美南吉の本を探して何冊も読みました。当時はどう思ったか覚えていませんが、それまで読んでいた本と違い、ハッピーエンドではないお話が出てきたので衝撃を受けたことを覚えています。新美南吉の作品は心温まるお話が多いですが、なかには人間の弱さやずるさ、はかなさ、せつなさといったものが表れた、後味があまりよくない作品もあります。でも「人を思いやる気持ちは大事だけど、それでもうまくいかないこともあるよね」といった感じで終わるので嫌な印象は残らず、人の心について深く考えさせられるのです。
たとえば、代表作に『手袋を買いに』があります。手袋を買いに行くことになった子ギツネが、母さんギツネに片方の手を人間の手に変えてもらい、「人間は怖いよ。人間でないとわかると檻に入れられてしまうから、人間の手のほうを出すんだよ」と言われます。店で子ギツネは間違えてキツネの手のほうを出してしまいますが、手袋を売ってもらえたので「人間は怖くないよ」と言います。それでも母さんギツネは「ほんとうに人間はいいものかしら」と、問いかけるようにつぶやいたところで物語は終わります。このことばがなければ温かいお話で終わるのに、そうはならないところが一味違います。
『最後の胡弓弾き』と『おじいさんのランプ』も心に残る作品です。どちらも今まで便利で最新だった物が、次の新しい物に取って代わられるお話です。古い物にもそれにかかわった人たちの人生があり、「新しい物があるからもういらない」と片づけられるものではありません。ただ『おじいさんのランプ』は、それを乗り越えて前に進んでいく、すてきなお話になっています。
低学年から大人まで読むことができ、読む時期によって感じ方が違うところも、新美南吉の魅力だと思います。こうした世界観を感じてもらえたらうれしいです。
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