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「柔道整復師」という職業を知っていますか。柔道整復師は医療行為のできる国家資格が必要な仕事です。主に整骨院で働き、骨折や捻挫、打撲、脱臼などのけがを、手を使って行う柔道整復術という方法で、もとの状態に戻す施術をしてくれます。今月紹介する『あたたかな手』は、ただ施術を行って患者さんの痛みをなくすだけではなく、人と人とがつながっていける場所として、傷ついた心までも回復させてくれる整骨院を舞台にした、読み手の心も温かくしてくれるお薦めの一冊です。
『あたたかな手 なのはな整骨院物語』
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- ◆濱野京子=作
- ◆偕成社=刊
- ◆定価=1,650円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
人に触れることが苦手だった 新人柔道整復師の 成長を描く心温まる物語
専門学校を卒業したばかりの新人柔道整復師の春哉は、期待と不安を胸に、小さな町の「なのはな整骨院」で働き始めます。しかし、実際の施術では手が震えたり、患者さんとの会話がうまくできなかったり、自分の未熟さを痛感する日々が続いていました。
整骨院には、ベテランで穏やかな院長をはじめ、優しく頼れる先輩スタッフたちが働いていて、それぞれが春哉を支えながらも、一人前の施術者として成長するよう導いてくれます。また、常連の患者さんたちも個性的で、たとえば、スポーツでけがをした少年、介護で疲れ切った女性、長年の腰痛に悩むお年寄り、そして、体だけでなく心の痛みを抱えた人など、さまざまな事情を抱えた人々が訪れます。春哉は彼らと接するなかで、整骨院が単なる治療の場ではなく、患者さんにとって心のよりどころでもあることを実感します。
そんななか、神出鬼没な地域ネコのマルの存在が、患者さんやスタッフの心を和ませる大きな役割を果たします。マルは気まぐれで自由気ままなネコですが、不思議と患者さんが落ち込んでいるとそばに寄り添い、そっとぬくもりを与えてくれます。
日々の経験を重ねるうちに、春哉は「手当て」という行為が単なる技術ではなく、「人をいやしたい」という気持ちが何より大切なのだと学んでいきます。そして、患者の痛みや悩みに寄り添いながら、自分なりの施術を見つけていく物語です。
『おなじところ ちがうところ』
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- ◆新井洋行=作
- ◆嶽まいこ=絵
- ◆くもん出版=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
- ■対象:幼児向け・小学校低学年向け
「おなじ」と「ちがう」 両方あるから楽しい、 両方あるから豊かになれる
わたしととしきはサッカークラブで一緒。でもわたしは放送委員で、としきは図書委員。同じ放送委員のあかねちゃんは原稿を書く人。わたしはそれを読む人。あかねちゃんとりょうちゃんは親友。でもりょうちゃんとあかねちゃんは肌の色が違う…。
わたしとあの人、同じところもあれば違うところもある。いろいろな2人の間の「同じ」が、人と人とをつなぎ、「違う」が人の輪を広げます。どんなに違っても一緒にダンスができるし、一緒に1枚の大きな絵を描くことだってできるのです。これからの社会を生きていく子どもたちに、多様な個性を認め合い、生かし合う人と人の関係のすばらしさを伝える絵本です。
『新訂版 小学生になったら図鑑』
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- ◆長谷川康男=監修
- ◆ポプラ社=刊
- ◆定価=3,080円(税込)
- ■対象:幼児向け・小学校低学年向け
勉強も遊びも友だちも 小学校生活すべてを網羅 親子のための頼れる一冊
学校ってどんなところだろう。楽しみな半面、不安も大きい入学前。勉強がわかるかな。何でも独りでできるかな。友だちはできるかな。危ないことはないかな。本人はもちろん、ご家族の方も心配になることはたくさんあると思います。そんなときに役立つ、小学校生活のことすべてを網羅した図鑑です。
「学校」「生活」「友だち」「学習」「安全」の5項目に分けて、学校生活に必要な知識・情報・マナーなどを教えてくれます。声掛けのしかた、興味の伸ばし方など、項目の内容に沿った保護者向けのアドバイスも掲載。入学準備だけではなく、入学後の不安や悩みにも対応しており、長く役立つ図鑑です。
『たとえリセットされても』
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- ◆森川成美=作
- ◆双森文=絵
- ◆文研出版=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け
かわいくて勉強ができて 話してて楽しい、そんな 大切な友だちがいます
4年生になると同時に転校した愛。さっそく新しくできた友だち、柚果が家に遊びに来ることになりました。ケーキを出すと柚果は大喜び。フォークでケーキをすくって差し出してくれましたが、愛が口に入れた瞬間、目の前が真っ暗になりました。実は愛はケーキを食べられなかったのです。
通学路に安全監視カメラがあり、登録者以外が通ると通報される。そんな近未来の要素を取り込んだ友情物語です。身近な人が、自分とは違う異質な存在であることがわかったとき、どうしたらいいのでしょうか。気持ちがないAIに言ったことばで、自分が傷つくのはなぜなのでしょうか。いくつもの疑問に気づかせてくれる物語です。
『迷子のトウモロコシ』
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- ◆嘉成晴香=作
- ◆金の星社=刊
- ◆定価=1,650円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
死んでも遠くから 会いに来てくれる、 こんなすてきなことってない!
以前住んでいたアパートに久しぶりに行った理名。仲良くしていた大家のおばあちゃんに、また会いたくなったのです。実は理名の姉は有名な画家。才能のない自分は何かと比べられて傷つくことが多く、その日も嫌なことがあって、おばあちゃんに話を聞いてもらいたかったのです。ところが、おばあちゃんはすでに亡くなり、部屋だけが以前のまま残されていました。
親しかった人が残したアパートの一室。そこでの新しい出会いから始まる、ちょっと不思議な物語です。大切な人を亡くすのは悲しいことですが、残してくれたものがある。自分も大切な人に残したいものがある。そんな作者の思いから作られた物語です。
『スポーツを支える仕事』
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- ◆元永知宏=著
- ◆岩波書店=刊
- ◆定価=1,034円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
プロ選手にならなくても スポーツが好きなら 道は広く開けている
野球にしてもサッカーにしても、プロとして活躍できるのはほんのひと握り。ほとんどの人がけがや成績不振を機に競技から離れ、選手生活を終えていきます。でも「終わり」は「始まり」だと立教大学野球部出身の著者は言います。
スポーツ通訳、スポーツドクター、選手代理人、競技用車いす開発設計技術者、NPB(日本野球機構)公式記録員、栄養サポートスタッフなど、さまざまな分野で選手を支える仕事に携わる人を紹介。その舞台裏と仕事への思いを伝えます。登場するのはいずれも、抱えた悩みや葛藤をその後の人生に生かした人たちです。今、何かのスポーツが好きな皆さん、その先には広い世界が開けています。
『ウルド昆虫記 バッタを倒しにアフリカへ』
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- ◆前野ウルド浩太郎=著
- ◆光文社=刊
- ◆定価=1,980円(税込)
ユーモアある語りのなかに 研究へのぶれない思い 好きを貫く生き方に感銘
茗荷谷校校舎責任者農作物を食い荒らすアフリカのサバクトビバッタの大群。その被害を食い止めるため、モーリタニアに野外調査に出掛けたバッタ研究者が、現地での経験を中心に型破りな研究者としての生き方を語っています。
モーリタニアの日常は日本では見たことのない光景ばかり。樹皮の先を削って歯を磨く習慣。待ち合わせには数時間遅れるのが常識という時間感覚。そしてバッタがお金になると聞くやいなや、争奪戦までして必死にバッタを集める子どもたち。そのたくましさには、日本の子どもたちにはない生命力の強さを感じます。日本という国の価値観にしばられ、そこから離れることが難しいなか、ここで紹介される異文化はとても新鮮です。
著者は国の海外特別研究員として生活費と研究費の支援を得て、モーリタニアで2年間を過ごします。しかし、思うようにバッタの大群に出合えず、就職につながる研究成果を出せずに、2年が過ぎて無収入に。でもアフリカ人のバッタ研究所長に「わたしは必ずお前が成功すると確信している」と励まされて奮起。バッタ研究の重要性をアピールするため、みずから広告塔になることを決意します。それからはビジネス雑誌の編集者と出会って連載執筆の仕事を得たり、ユニークな研究者たちと共にイベントを行ったり。そしてついに京都大学の「白眉プロジェクト」に合格して、収入を確保しながら研究者として生きる地盤を確保します。さまざまな人との出会いのなかで、困難を乗り越えてまっしぐらに進んでいく。そんな作者の生き方にあこがれます。好きなことを貫いて生きるには多くの困難がつきまといます。それでも好きな研究を続けるために挑んでいく姿には心を打たれます。
一般向けの新書版をもとに、児童書として新たに作り直した本です。フリガナもふってあるので読みやすいと思います。文章にはユーモアがあり、楽しい写真も多く掲載されている、魅力あふれる一冊です。
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