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『尊敬する人はいません(今のところ)』
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- ◆中山聖子=作
- ◆合田里美=絵
- ◆文研出版=刊
- ◆定価=1,650円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
父さんは立派だ。正しい。 でも父さんを見ていると 息苦しくなることがある
5年生の最初の日、若羽のクラスでは自己紹介の代わりに、自分の尊敬する人を発表することになりました。有名人の名前を挙げる子が多いなか、待鳥慧は「尊敬する人は父です」とはっきり言いました。「何事にも努力するところが立派だと思う」と。若羽はうらやましく思いました。若羽の父親はとても尊敬できるような人物ではありません。実は若羽の家では父が経営していた会社がつぶれたためにマンションを売り払い、母と若羽はアパートに住み始めました。父は新しく始めた会社の近くに独りで住んでいますが、若羽は両親が一緒に暮らすのが嫌になったからだということを知っていました。一方、慧は父を立派だと思う半面、何でも父の言うとおりにする自分が嫌になっていました。
物語の中で大きな役割を果たすのが「マジカルソニック」という銀色の棒です。慧は塾をサボって行った公園で、見知らぬおじさんからこの奇妙な棒をもらいます。それを振れば宇宙に音波を送ってUFOを呼べるというのです。いかにも怪しげなこの棒をめぐっては、ひと騒動起きますが、最後は人と人とをつなぐすてきな棒に見えてくるから不思議です。
「好きか嫌いか」「いいか悪いか」。人の気持ちはあやふやで不確かなものです。だからこそ人は思い悩むのです。みんながうらやむ弁護士の父を持つ慧と、仕事を転々とするいい加減な父を持つ若羽。父親との関係を軸に、割り切れない感情に息苦しさを覚えながらも、前を向いて生きていこうとする二人の姿を描きます。
『白い牛をおいかけて』
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- ◆トレイス・シーモア=文
- ◆ウェンディ・アンダスン・ハルパリン=絵
- ◆三原泉=訳
- ◆ゴブリン書房=刊
- ◆定価=1,650円(税込)
- ■対象:幼児向け・小学校低学年向け
「あの牛は手ごわいな」 逃げた牛を探して大騒ぎ。 で、牛はつかまった?
女の子の家の牧場から白い牛が逃げました。お父さんと牧場を手伝っているマシューさんはトラックに乗って、牛をつかまえに行きました。でも帰ってきたのは真夜中。つかまえられなかったのです。3週間ほど過ぎたころ、雑貨屋のオリーさんから電話がきました。白い牛がたばこ畑にいるのを見たというのです。お父さんは助っ人を増やして、みんなでつかまえに行きました。ところが…。
抑えた色調で細かく描かれた絵が、牧場のにおいを運んできます。牛に振り回されっぱなしなのに、「あの牛は手ごわい」「頭がいい」とほめながら、のんびりしているおじさんたちが笑いを誘います。何度でも読み返したくなる絵本です。
『100年見つめてきました』
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- ◆吉野万里子=作
- ◆川上和生=絵
- ◆講談社=刊
- ◆定価=1,595円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け
遊園地の高いところから 飛行塔はずっと見てきた 平和なときも戦争のときも
1929年3月、奈良県生駒町に生駒山上遊園地がオープンしました。このお話の主役はそこにある飛行塔です。塔の周りにつり下げた飛行機が、ぐるぐる回りながら上がっていく遊具です。飛行塔は毎日、乗った子どもたちの喜ぶ顔を見ながら幸せに暮らしていました。ところが11回目の誕生日を過ぎたころから、お客さんが減り始めました。戦争の影がこの遊園地にも忍び寄ってきたのです。
現存する遊具では最古の飛行塔が、長い歴史のなかで見てきたものを語ります。降り注ぐ爆弾。焼け野原になった大阪平野など、恐ろしい光景を見下ろしてきた飛行塔。遊具の視点で語られる戦争が、子どもたちに考える材料を与えます。
『レッツSTEAMチャレンジ! 宇宙編』
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- ◆東京学芸大こども未来研究所=編
- ◆菊池優太=監修
- ◆くもん出版=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け
宇宙の過酷な環境では 食べ物も服も工夫が必要。 地球を考えるヒントにも
宇宙に行くには何が必要でしょう。まず水がないので、宇宙ステーションでは地球から持っていった水を大切に使っています。また、食料は長期保存できるもの、汁が出ないものを持っていきます。地球とはまったく違う環境で過ごすためには、着る服にも工夫が必要です。
STEAMとは科学・技術・工学・芸術・数学を表す英語の頭文字をつなげた分野横断的な学びの理念です。その手法を使って楽しく探究学習をしていきます。家でもできる実験なども掲載されており、実際に試しながら宇宙での生活における問題点を見つけ、解決策を考えるようになっています。それを地球の問題に応用するヒントも得られます。
『平安のステキな! 女性作家たち』
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- ◆川村裕子=著
- ◆早川圭子=絵
- ◆岩波書店=刊
- ◆定価=1,089円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
紫式部さんのその悩み、 現代のわたしたちにも わかります!
「源氏物語」の作者である紫式部は、一条天皇の皇后である彰子の家庭教師でした。「才女」のイメージが強く、最初は宮仕えの同僚たちに敬遠されていたようです。そこで彼女は何でも「知らない」振りをする、ぼけキャラを演じて、仲間に入れるようになったとか。職場の人間関係に苦労するのはいつの世も変わりません。
紫式部や清少納言など、平安時代の女性作家5人を取り上げています。制約が多かった時代に貴族の妻として家を支えた人もいれば、皇族女性に仕えて仕事中心の人生を送った人もいます。つらいことも多いなか、書くことで自分を表現しながら生き生きと生活していたその世界を、楽しいおしゃべりで教えてくれます。
『ブラックバードの歌』
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- ◆カチャ・ベーレン=作
- ◆千葉茂樹=訳
- ◆あすなろ書房=刊
- ◆定価=1,650円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
わたしは自分のために そして、この鳥のために 今、フルートを吹く
フルートが生きがいのアニーは、音楽学校への入学をめざして練習していましたが、母が運転する車の事故で手に大けがをしてしまいます。つらい毎日を送るなか、アニーは引っ越し先の近くの空き地で不思議な少年ノアと、ブラックバードのつがいに出会います。ノアと一緒に鳥たちを見ているときは、手の傷のことを忘れていられるアニーでした。
夢を奪われ、いつも母に腹を立てていたアニーが、ノアやブラックバードと触れ合うことによって、再び夢を取り戻すまでを描きます。フルートの音色、そしてブラックバードのさえずり。シンプルで短いストーリーですが、音を想像しながらじっくり読んでほしい作品です。
『少年詩篇』
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- ◆佐伯一麦=作
- ◆新潮社=刊
- ◆定価=1,760円(税込)
小さなことばかりでも 振り返ればいろいろある 人生はそれだけ豊かなもの
たまプラーザ校 校舎責任者著者の佐伯一麦さんは、私小説作家として知られている人です。私小説とは、作者自身の生活体験を素材にした小説で、体験したことがほぼそのまま書かれています。この『少年詩篇』もそうです。少年時代の体験を描いた47の小品が収められています。
母親に「うちの子ではない」と叱られたこと、父親とサーカスを見に行くつもりが汽車に乗っただけで過ごした日のこと、体温計をかんでしまい死ぬかとおびえたときのこと等々。どれも小さい出来事ですが、そうしたちょっとした記憶は誰もが持っていると思います。
これを読んで、わたしは幼いころのことを思い出しました。たとえば、仕事で忙しい父が珍しく遊園地に連れていってくれたことがあります。でも、わたしが遊具に乗っている間に父は疲れて眠ってしまいました。そのときの父の隣に座っていた幼い自分の姿が思い浮かんできました。この作品は、そんなさまざまなことをしみじみ思い返すきっかけになります。
佐伯さん自身は高校卒業後、電気工になって、一度結婚して子どもが生まれますが、離婚して後に別の人と再婚します。そうした生き方のいろいろなところを切り取って、彼の作品全体が成り立っています。その一つの原点にあるのが『少年詩篇』です。彼は新聞配達をしてためたお金で、高校卒業後すぐに家を出ています。この作品集がかわいらしい話ばかりなのに、親子のすき間を感じさせられることが多いのは、そういうところにつながります。
佐伯さんの作品でわたしがいちばん好きなのは『鉄塔家族』です。こちらもお薦めですが、これまでの作品を読んでいないと理解できない部分が多いと思うので、まずは本書を読んで、作者の人生や思いに触れてください。読んでみて、「これまでを振り返ると大きなことはなかったかもしれない、でもいろいろなことがあった、人生はそれだけ豊かなものなのだ」。そんなふうに思ってもらえれば幸いです。
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