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『やくやもしおの百人一首』
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- ◆久保田香里=作
- ◆坂口友佳子=絵
- ◆くもん出版=刊
- ◆定価=1,650円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
「百人一首」の文字札が 片割れの絵札を探しに タイムスリップ!?
「こぬ人を まつほの浦の 夕なぎに
やくやもしおの 身もこがれつつ」 「小倉百人一首」に収められている藤原定家のこの歌は「待っても来てくれない人を思って、松帆の浦の夕なぎのときに焼いて作る藻塩のように、わたしの身は恋い焦がれています」という意味です。物語は村の資料館にある古い貴重な「百人一首」の箱から、この定家の札がなくなったことから始まります。かるたは上の句の文字と歌人の絵が出ている札と、下の句の文字だけが出ている札の2枚で1セット。その絵札のほうだけがなくなったのです。
困った下の句の札は、片割れの札を探しに、定家の時代にタイムスリップします。もちろん札のままでは何もできません。札は「もしお」と呼ばれる女の子の姿になって鎌倉時代の京都にワープし、「小倉百人一首」の選者でもある藤原定家と孫の為氏に出会います。歌にヒントがあると思った「もしお」は、歌にある淡路島の「松帆の浦」まで探しに行こうとします。でも意外にも作者の定家は「そこには行ったことがない」と言うのでした。
登場人物や時代背景などの史実をもとに描く奇想天外なお話です。貴族の生活の様子や、はやり病や戦などの不安な世相も織り交ぜつつ、天真らんまんな「もしお」が、貴族の世から武士の時世に変わりつつある京の都でさまざまな体験をしていく姿が魅力的に描かれています。歌を詠んだり絵を描いたりすることへの当時の人々の情熱にも驚きますが、札探しに協力してくれる為氏との淡い恋の行方も気になるところです。読めば「百人一首」のかるた遊びが何倍も楽しくなります。
『どうして こわいの?』
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- ◆フラン・ピンタデーラ=文
- ◆アナ・センデル=絵
- ◆星野由美=訳
- ◆偕成社=刊
- ◆定価=1,980円(税込)
- ■対象:幼児向け・小学校低学年向け
こわいのは嫌だけど こわいお話は好き 「こわい」って何?
「おとうさん、こわいと思ったことある?」。停電で家の中が真っ暗になった日、マックスは聞きました。「だれでもこわいって思うことはあるよ」。影がこわくなったり、激しいことばがこわくなったり、自由をこわいと思うこともあります。お父さんはいろいろな「こわい」について話し始めました。
「こわい」は人類が最初から持っている基本的な感情の一つです。「動物に襲われたらどうしよう」「大好きな人がいなくなったらどうしよう」などと思うのに、人はこわい映画やお話も大好きです。そんな「こわい」の不思議さをテーマにした絵本です。巻末には「こわい」の撃退法や役立て方が出ています。「こわい」には実は役立つことがいろいろあるのです。
『角川の集める図鑑GET! 絶滅動物』
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- ◆高桒祐司=監修
- ◆KADOKAWA=刊
- ◆定価=2,420円(税込)
- ■対象:小学校低学年向け・小学校中学年向け・小学校高学年向け
進化と絶滅をたどれば 今いる動物に似ている 生き物がいっぱい!
恐竜が絶滅した後の新生代にも、さまざまな生き物が現れては絶滅していきました。そんな生き物たちを取り上げ、どの時代にどんな場所でどう暮らしていたかを説明してくれます。
登場するのは、ほ乳類を中心に魚類・鳥類・は虫類・両生類・昆虫など約340種の生き物たち。見たことがないものばかりですが、ラクダのようなからだだけどバクのような鼻を持っていたり、ウマに似た顔だけどゴリラのように歩いたりと、今いる動物に似ているけれどどこか違うものがたくさん登場します。ある島にだけいた鳥が、1匹のネコが持ち込まれたことによって絶滅してしまったなど、そのエピソードも多数紹介されていて、興味をかき立てられます。
『ヨゾラ物語ファイル オンボロボットは泣かない』
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- ◆藤真知子=作
- ◆ポプラ社=刊
- ◆定価=1,100円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
楽しくてちょっと悲しい 人型AIロボットと 暮らす未来の生活
体が弱いショータは一日中、両親がくれたAIロボット執事のジョーと一緒に過ごしています。ショータはジョーが大好きです。ある日、いとこのケンが人間そっくりでイケメンのジョーを見て「ショータの百倍カッコいい。人間ならおじさんたちの自慢の息子だな」と言います。それ以来ショータのジョーに対する気持ちが変わってきました。
この「ぼくとAIロボット執事」を含め、ヨゾラ紀と呼ばれる未来の物語を描いた7編を収録しています。捨てられたロボット、スパイのロボット、シェフのロボットなど、いろいろなAIロボットが登場します。心を持たないはずの彼らが、寂しい人間の心のすき間にすっと入ってきてくれます。
『和算の道をひらけ! 江戸の数学ブームをおこした吉田光由』
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- ◆鳴海風=作
- ◆おとないちあき=絵
- ◆あかね書房=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
川に船を通したい 工事を成功させた その土台は算術の知識だった
「将来は川に船を通す工事をしたい」。吉田七兵衛(吉田光由)が思ったのは9歳のとき。角倉了以・素庵親子が船を通す水路を築いたのを見てあこがれたからです。それには「算法を学ぶことが必要だ」と、素庵に言われた七兵衛。算術を究める人生の第一歩が始まりました。
江戸時代の算術書『塵劫記』を著した吉田光由は河川工事の専門家。今も残る菖蒲谷隧道も光由が造りました。土台となったのは中国の算法書で学んだ知識です。土木事業に不可欠な算法を多くの人が学べるようにしたい。そこで作ったのがわかりやすい日本語の算術書でした。キリシタン弾圧など時代の荒波にもまれながら、高い志で生き抜いた光由の生涯を描きます。
『伝説の校長講話 ─渋幕・渋渋は何を大切にしているのか』
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- ◆田村哲夫、古沢由紀子(聞き手)=著
- ◆中央公論新社=刊
- ◆定価=1,760円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け・保護者向け
古今東西の叡智を教材に 未来に向けて贈る 学園長渾身のメッセージ
渋谷教育学園の校長講話とは、学園長の田村哲夫先生が中1から高3までの生徒を対象に、学年ごとに行う「中高生のリベラルアーツ」の授業です。田村先生はこれを幕張校、渋谷校両校で長年続けています。
題材は国内外の歴史から哲学・科学・文学など、人類の叡智から幅広く取り、最近の話題から未来へ向けて話をふくらませることもあります。どれも人間社会の本質を問いながら「自分で考え自分で決める」ことの大切さを伝えています。大人が聞いても新たな発見に満ち、身につけるべき教養とはどんなものかを教えてくれる講話集です。中高6年間で計30回の講話を聴くことができる学園の生徒がうらやましくなります。
『生き物の死にざま』
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- ◆稲垣栄洋=著
- ◆草思社=刊
- ◆定価=825円(税込)
死にざまがあるからこそ 全力で生きる 生き物たちの姿に感動する
王子校 校舎責任者子孫を残すために、生き物はさまざまな工夫をしています。たとえばハサミムシは、子が母親のからだを食べてしまう、というような人間では考えられない工夫があります。残酷に思えるかもしれませんが、子孫を残すことが最も大事なことなので、ハサミムシの母親にとっては幸せなことなのかもしれません。卵を産むとすぐに死んでしまうようにプログラムされている虫も珍しくありません。子育てはしませんが、死ぬまでは全力で生きています。死にざまがあるから、逆に全力で生きている姿に感動するのだと思います。このように、本書はさまざまな生き物たちが全力で生きる姿を教えてくれます。
では人間はどうでしょう。多くの虫と違い、人間は子育てができます。生んだ後も親子で楽しく一緒に過ごすことができます。子が親に愛情を返したり、感謝の気持ちを伝えたりすることもできます。生き物の死にざまを知ることは、逆に人間のそうした特徴を再確認することにつながります。わたし自身、この本を読んでから、それまでは両親になかなか言えなかった感謝の気持ちをことばにして伝えました。そのように生き物の特徴に存分に応えていくことが、人間の生き方ではないかと思います。その意味では保護者の方にもお薦めできる本です。
題材としてはそのまま入試問題になりそうな話題もたくさん出てきます。理科が苦手な子はよく「覚えられない」と言いますが、そういうときは関連付けて覚えてみてください。たとえば「ミツバチは社会性昆虫だ」と覚えるより、ミツバチの社会はどんなものなのかを知って覚えるほうが頭に残ります。そんな理科の知識の関連付けになることもたくさん紹介されています。見た目の姿が嫌で、虫嫌いになる人は少なくないと思います。でも著者が描く虫の姿はユーモラスで親しみが持てます。何より生き物たちの生態には驚かされることばかり。生き物に興味を持つきっかけになる一冊です。ぜひ読んでみてください。
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