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『ぼくはうそをついた』
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- ◆西村すぐり=作
- ◆中島花野=絵
- ◆ポプラ社=刊
- ◆定価=1,650円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
寄り添える家族でありたい だから知っておきたい かつて何が起こったかを
ある日、5年生のリョウタが河川敷で遊んでいたときのこと。見知らぬおばあさんがいきなり近づいて腕をつかんできました。実はそのおばあさんは男の子を見ると顔をのぞき込んだり肩をつかんだりするので、子どもたちから変人扱いされていました。そのことを知らなかったリョウタは手をつかまれた瞬間、驚いて強く振り払いました。そこにやってきたのは1年上のあこがれの先輩、レイです。レイはリョウタと目があった瞬間、嫌なものを見たかのように目をそらし、嫌がるおばあさんの腕をとって帰っていきました。おばあさんはレイのひいおばあさんだったのです。
広島市郊外での終戦から60年が過ぎたころのお話です。リョウタの亡くなったひいおじいさんは原爆で中学生の息子を亡くしています。レイのひいおばあさんもまた原爆で中学生の息子を亡くしています。どちらも遺骨はなく、リョウタのひいおじいさんは唯一残された息子の遺品を宝物のようにしていました。一方、レイのひいおばあさんは今も息子の死を受け入れられず、夏になると息子を探して歩き回ります。
最初は原爆のことを遠い昔の出来事のように感じていたリョウタ。でも祖父の話を聞くうちに、原爆で亡くなった祖父の兄の足跡をたどろうと思います。一方、レイはひいおばあさんの不思議な行動の意味を知って、何かをしてあげられる家族でありたいと願います。タイトルにある「うそ」にはそんな二人の思いが込められています。作者が母の戦争体験をもとに平和への願いを込めて書いた力作です。
『おかえり、フク』
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- ◆北川チハル=作
- ◆鈴木びんこ=絵
- ◆佼成出版社=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
- ■対象:幼児向け・小学校低学年向け
別れても忘れない ニホンカモシカと 夫婦の13年間の物語
カネオさんとレイコさんは山あいの集落に暮らす夫婦です。ある日、二人は崖の下で、ニホンカモシカの赤ちゃんを見つけました。けがをしているので家に連れ帰って手当てをし、フクと名付けて面倒を見ることにしました。日に日に元気になり、かわいくなっていくフク。まるでわが子のようです。でもニホンカモシカは国の特別天然記念物なので、家で飼うことはできません。1年後、フクを山に帰す日がやってきました。
岐阜県で実際にあったお話をもとに作られた絵本です。家族のように暮らした夫婦とフクの、切なくも温かい交流を描きます。野生動物と人間はどうかかわっていったらよいのかを、問いかける物語です。
『ほたるとワタルの物語』
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- ◆小手鞠るい=作
- ◆泉雅史=絵
- ◆金の星社=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け
「百日後に会いに来て」 「ぜったい行く!」 約束した二人だが…。
アメリカ人の母と日本人の父を持つ少女、ほたるはアメリカ育ち。小学校4年生のとき日本に来ましたが、日本語がよくわからず、学校ではいつも独りぼっちでした。そんなほたるに「一緒に帰ろうよ」と声を掛けてくれたのは、同じマンションの1階にある花屋の息子、ワタルでした。それ以来、ほたるは学校に行くのが楽しみになりました。でも楽しい日々は長くは続きませんでした。
コスモス・ヒマワリ・サルスベリなど、ワタルはほたるに花の話をたくさんしてくれました。サルスベリは漢字で「百日紅」。この花には悲しい恋の伝説が伝えられています。「百日紅」の物語と重ね合わせた、少年と少女の美しい命の物語です。
『給食が教えてくれたこと 「最高の献立」を作る、ぼくは学校栄養士』
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- ◆松丸奨=著
- ◆くもん出版=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け
給食は子どもたちの 人生を支えている だから本気でやる!
著者の松丸さんは東京の小学校で働く栄養士さん。給食の献立作りや、子どもたちに食育の授業を行うのが仕事です。とはいえ仕事は学校の中だけでは終わりません。早朝から農家の畑仕事を手伝ったり、スープ作りのためにラーメンの食べ歩きをしたり、家で新しいメニューを試作したり。すべては子どもたちに、栄養のバラスがとれたおいしい給食を食べてもらうためです。
小学生時代は好き嫌いが激しく、給食の時間が苦手だったという松丸さん。その一方で給食室は、いじめにあっていた松丸さんの救いの場でもありました。給食作りの過程や苦労がわかるだけでなく、給食をライフワークとする男性の熱い物語としてもお薦めです。
『そして、あの日 エンリコのスケッチブック』
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- ◆リンデルト・クロムハウト=作
- ◆アンネマリー・ファン・ハーリンゲン=絵
- ◆野坂悦子=訳
- ◆岩崎書店=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
その夏、ぼくは その日見たものを 毎日描き続けた
イタリアの小さな村に住むエンリコは、絵を描くのが大好き。夏休みに羊飼いのルイジじいちゃんの仕事を手伝いに行くときも、いつもスケッチブックを持っていきます。エンリコは村も人々も大好きなので、何もかも絵に描きとめておきたかったのです。あの大地震が起きた後でさえも。
1997年にイタリアのアッシジを襲った地震に着想を得て、オランダ人作家が描いた物語です。地震前の前半も地震後の後半も、描かれるのは村の人々と共に生きるエンリコの毎日。淡々とした抑制された表現が心の傷の深さを感じさせます。突然日常が破壊されても、人々を絶望から救うものがあることをエンリコが教えてくれます。
『カブトムシの謎をとく』
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- ◆小島渉=著
- ◆筑摩書房=刊
- ◆定価=968円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
もしかしたら大発見!? 不思議を感じたら 観察して調べてみよう
カブトムシの研究者である著者のもとにある日、柴田亮さんという小学生からメールが届きました。自宅の庭のシマトネリコの木に、夜行性のはずのカブトムシが朝昼晩とも来るというのです。柴田さんは時間ごとの数を記録していたので、著者は今後の調査方法をアドバイスしました。やりとりは続いて2年後、なんと柴田さんはカブトムシの新たな生態を論文として発表。海外からも称賛されました。
生き物の生態研究は観察することが基本であるだけに、小学生でも大発見のチャンスがあります。何をどのように調査したら、どんなことが解明されるのでしょうか。謎が多いカブトムシの研究を例に、著者がわかりやすく教えてくれます。
『タガヤセ! 日本 「農水省の白石さん」が農業の魅力教えます』
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- ◆白石優生=著
- ◆河出書房新社=刊
- ◆定価=1,562円(税込)
授業で習った その先を知りたくなる 「食」と「農」の身近な話
吉祥寺校 校舎責任者農林水産省職員の著者が農業のおもしろさと課題について、若い読者に語りかけるようにわかりやすく教えてくれます。話の中心は日本の農業と農家がいかにがんばっているか。サピックスの社会科の授業でも、地理の単元で扱うことがたくさん出てくるので、興味を持って読むことができると思います。たとえば、日本の食料自給率が低いことは、授業で習った皆さんは知っているでしょう。その理由も習ったと思います。でもなぜ自給率が低いのは良くないことなのでしょうか。そこまで考えると自分にもかかわる問題だということを、この本は教えてくれます。
授業をしていると、子どもたちが持つ農業のイメージは実態とはかけ離れているように感じます。今の農家は大規模化、機械化が進み、自動運転の田植え機や草刈り機も登場しています。少子高齢化が進み、農業だけでなく産業界全体で人手不足が進んでいます。ではどうしたら産業を維持していくことができるのか。こうしたICT(情報通信技術)の活用がそのヒントになるのではないか、そんなことにも気づいてほしいと思います。
豆知識も出てきます。たとえば、毎日食べている野菜はどこの部分を食べているかわかりますか。土の上に実がなる野菜はどんなに重くても水に浮きます。逆に土の下に実がなる野菜は水に沈みます。でもタマネギは土を掘ると出てくるのに水に浮きます。わたしたちが食べているのはタマネギの実ではなく葉だからです。こんな話題をお家の方にクイズで出してみてもおもしろいと思います。家族で読んで「じゃあ食べてみようか」「この産地に出掛けてみようか」などと話し、知識を広げるきっかけにしてくれたらうれしいです。
著者は農林水産省の公式YouTube「BUZZ MAFF(ばずまふ)」も運営しているので、見ればおもしろい話が聞けると思います。専門家が身近な食材について教える『農林水産省職員直伝「食材」のトリセツ』(マガジンハウス刊)もお薦めです。
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