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『生き物たちが先生だ しくみをまねて未来をひらくバイオミメティクス』
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- ◆針山孝彦=著
- ◆くもん出版=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け
省エネの未来を開く 生き物たちの ものすごいしくみ
花や虫などの細かい部分まで観察するには電子顕微鏡が欠かせません。とはいえ少し前まで、電子顕微鏡では生き物を生きたまま見ることができませんでした。顕微鏡の中は真空なので、生き物を入れると体内から水分が奪われ死んでしまうのです。ところが、そうならない生き物がいます。ショウジョウバエの幼虫は、からだの表面にあるねばねばの物質が宇宙服のような役目をするので、電子顕微鏡に入れても干からびないのです。これをヒントに開発されたのが「ナノスーツ溶液」です。この溶液を塗ることで、ほとんどの生き物が生きたまま電子顕微鏡で観察できるようになりました。
生き物のからだのしくみを、ものづくりに生かすことを「バイオミメティクス」といいます。これはわたしたちの日常生活でもよく使われています。たとえば、靴や服などに使われる面ファスナーは、センダングサという植物の実のトゲトゲをヒントに開発されました。壁にくっつくヤモリの指先の構造は、接着テープの開発に応用されています。赤道直下の地域に生息するシロアリは巣の中を冷やすしくみを持っていますが、アフリカのジンバブエにはこのしくみを応用して建てられたエアコン不要のショッピングセンターがあります。
生き物が持つ優れたしくみは、彼らが長い進化の過程で、いかにエネルギーを使わずに生きて子孫を残すかを追求してきた結果です。ナノスーツ法の開発者が子どもたちに向けて、バイオミメティクスのすばらしさ、研究の楽しさ、そして地球環境の未来に向けて研究することの意義を教えてくれます。
『ひらがなちょうとカタカナマチ』
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- ◆たかはしゆい=作
- ◆たかはしのぞみ=絵
- ◆文研出版=刊
- ◆定価=1,430円(税込)
- ■対象:幼児向け・小学校低学年向け
わが町こそナンバーワン! ライバル同士の二つの町 勝つのはどっち?
ひらがなちょうの町長さんと、カタカナマチの町長さんはどちらも大の負けず嫌いです。2人とも自分の町のすばらしさを訴えて譲りません。ひらがなちょうは、看板も張り紙もすべてひらがな。カタカナマチも町中カタカナだらけ。ひらがなちょうの町長さんと、カタカナマチの町長さんはお互いの町を訪ねて、どちらがすばらしいか決着をつけようとしますが…。
ひらがなちょうの人はひらがなっぽい顔。カタカナマチの人はカタカナっぽい顔。顔を見れば、どちらの町の住人かすぐわかるのがおもしろいところです。さて、二つの町はどんな決着のつけ方をしたのでしょうか。ひらがなとカタカナに親しみがわいてくる楽しい絵本です。
『世界の女の子の昔話』
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- ◆中脇初枝=再話
- ◆偕成社=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け
「王子様と幸せになる」 だけが女の子の昔話では ないのだ!
昔、あるところにお母さんと、食いしん坊でなまけ者の娘が暮らしていました。ある日、お母さんは「わたしが帰るまでに掃除をして、お昼ごはんの鍋がこげないよう見ていておくれ」と言って出掛けました。でも娘はお昼ごはんを全部たいらげ、掃除もせずに寝てしまいました。
世界の昔話のなかから、女の子が主人公のお話18話を集めています。3人姉妹の末っ子が良い行いをするお話。不幸な女の子が王子様と結婚するお話。そんなどこかで聞いたようなお話もありますが、予想外の展開になるものもあります。冒頭で紹介したスペインの昔話もそう。食いしん坊のなまけ者が幸せになることだってあるのです。何でもありの自由な昔話の世界を楽しんでください。
『猿の手』
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- ◆富安陽子=文
- ◆ウィリアム・ワイマーク・ジェイコブズ他=原作
- ◆ポプラ社=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け
ホラーの名作が醸し出す 不穏で不吉なムード そう、幸運と不運は裏返し
雨が降る寒い夜、ホワイト一家が住む家に、知り合いのモリス氏が訪ねてきました。世界のあちこちで不思議な出来事を見聞きしてきたモリス氏。彼が「魔法のようなもの」と言って、ポケットから出してきたのは干からびたサルの手でした。「これがあれば願いが三つかなう」とモリス氏は言うのですが。
世界のホラー小説の名作を児童文学者が読みやすくリライトしています。願いごとがかなうというお話はよくありますが、ここには喜びも幸せ感もなく、何か不吉なことが起きそうな不穏なムードだけが漂います。本書には、この「猿の手」ほか、「不思議な下宿人」「魔法の店」と趣の異なる3編を収録。どきどきが止まらない読書をしたい人にお薦めです。
『カムイの大地 北海道と松浦武四郎』
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- ◆泉田もと=作
- ◆岩崎書店=刊
- ◆定価=1,650円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
北の大地を歩き続けた 松浦武四郎、そこには アイヌへの熱い思いがあった
北海道の名付け親として知られる松浦武四郎。彼が初めて北海道に足を踏み入れたのは、江戸時代末期の1845年でした。それ以後、計6回にわたってこの北の大地を訪れ、自然、生活、文化、ことばなどを記録に残しました。アイヌの人々の助けなしには成しえないことでした。
当時、北海道は「蝦夷地」と呼ばれていました。「蝦夷」には異民族という意味が含まれます。アイヌの人々は異民族として差別され、漁場などで強制労働をさせられていました。武四郎はそのことががまんできませんでした。江戸末期から明治にかけて、北海道で何があったのか。武四郎とアイヌの人々との交流を軸に、教科書では十分には触れられない、北の大地に生きた人々の歴史を描き出します。
『だれもみえない教室で』
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- ◆工藤純子=作
- ◆講談社=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
あのとき「やめろよ」と 言えばよかった でも、できなかった
それは雨が降り続く放課後のことでした。数人しか残っていない教室で、清也がトイレに行っている間に、颯斗が清也のランドセルの中に金魚の餌を袋からぶちまけたのです。颯斗に命じられるままに近くにいた渉、幸太郎、連も手を貸しました。清也と親友だった連は、颯斗を止められなかったことを悔やみました。
いじめた人、いじめられた人、そばで見ていた人。そして当事者から見ると、何もしてくれないように見える担任の先生。それぞれが自分のしたことを振り返りながら、嫌な自分と向き合う苦しさを描き出していきます。逃れられないいじめの現実。目を背けるわけにはいかない難しい問題を正面から取り上げた意欲作です。
『エルマーのぼうけん』
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- ◆ルース・スタイルス・ガネット=作
- ◆ルース・クリスマン・ガネット=絵
- ◆わたなべしげお=訳
- ◆福音館書店=刊
- ◆定価=1,320円(税込)
人の話をよく聞いておくと いざというとき役に立つ エルマー少年のように
国立校 校舎責任者とても有名な児童書なので、読んだことのある人は多いと思います。エルマー少年は雨の日に出会った野良猫をふびんに思って家に連れ帰りますが、お母さんに叱られて家を追い出されてしまいます。そのネコからかわいそうな竜の話を聞いたエルマーは、動物島に竜を助けに行きます。そんな冒険物語です。
わたしは小学生のころに読みました。現実世界ではありえないことだと感じながらも、場面ごとに何が起こるかひやひやしながら読んだのを覚えています。エルマーは動物たちが出す難題をクリアして、竜を助けます。そこには動物たちに見つからないよう隠れて移動したり、遭遇した動物に食べられそうになったりする状況が立て続けに出てきます。そのたびに「自分がもし同じ状況になったらどうしよう」「どうやって島にたどり着こう」「どうやってこの難題をクリアしよう」などと想像しながら読みました。
エルマーが動物たちの難題をクリアすることができたのは、ネコの話をよく聞いていたからです。エルマーはほかの動物たちの話もよく聞いています。どんなときでも、人から聞いた話を頭にとどめておくと何かしらのときに役立つものです。人は生活するなかで「どうする?」と決断を迫られることがありますが、そういうときに他者の話が生きることは多々あります。また、他者と接するときは、相手が何を考えているのかをくみ取る必要がありますが、エルマーが動物たちとの会話から彼らの悩みを解決し、要求を実現させていくところなどは、人間関係に置き換えても役に立つことかもしれません。
ライオン、ゴリラ、ワニなど、いろいろな動物が出てきます。動物園に行ってその行動を見ながら、エルマーが聞いた動物たちの悩みごとの話を思い出してみてください。動物たちが何を考えているか想像できて楽しいですよ。親子でそんなやりとりをしながら読むと、身の回りの生活に還元される充実した読書体験になると思います。
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