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『ぼくたちのいばしょ 亀島小 多国籍探偵クラブ』
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- ◆蒔田浩平=作
- ◆酒井以=絵
- ◆文研出版=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
「受け入れるか」 「受け入れないか」じゃない 目の前にいるのだから
春馬と秀則は6年1組の新聞委員。月に1回、2人で新聞を作って廊下に張り出しています。秀則は推理が好きで、ちょっとした出来事でも「スクープになる!」と大張り切り。春馬を探偵助手のように扱うのが春馬には気に入りませんが、作文が上手な秀則と絵が得意な春馬はよいコンビです。そんなある日、転校生でネパール人の女の子、サラダが新しく新聞委員になることになりました。日本語があまりできず、クラスでいつも独りぼっちのサラダ。先生の勧めとはいえ、春馬も秀則もサラダと一緒に新聞委員をやるのは気が進みません。3人になった委員会活動の初日、サラダは記事作りに励む2人をぼんやり見ているだけ。ところが、春馬がある人気まんがのイラストを描いた瞬間、彼女の目がきらりと光りました。
そのころ、秋に行われる運動会で、3人は借り物競争に出ることになりました。しかし、サラダは日本語で書かれた指示を読めません。そこで春馬たちは、サラダと日本語の「修行」を始めますが、それを通して海外にルーツのある子どもたちのことを知っていきます。どの小学校でも、クラスに外国籍の友だちがいることは珍しくありません。サラダのように、日本語ができないまま転入してくる場合もあります。最初はみんなもの珍しさで仲良くしようとしても、忘れ物が多かったり、そうじ当番をしなかったり、自分たちと違うところが目につき始めます。ことばや生活習慣、文化の違いの壁は大きく、ちょっとした誤解が人間関係をこじらせてしまうことがあるのです。では、どうしたら仲良くなれるのでしょうか。この物語のなかにそのヒントが詰まっています。
『あしたへのまわり道』
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- ◆梅田俊作 梅田佳子=作
- ◆ポプラ社=刊
- ◆定価=1,980円(税込)
- ■対象:小学校低学年向け・小学校中学年向け
学校を休み続ける2人に 沼で過ごす毎日が教えてくれたこととは?
いじめられているわけではないけれど、イクハルはときどき学校を休みます。ある日、イクハルは沼で黄色いボートを見かけます。乗っていたのは被災地から転校してきた女の子、シュリ。シュリも、いじめっ子のヤラガセにひどいことを言われ、学校には行っていません。沼にはシュリの祖母の農園がある浮島があります。イクハルはシュリに会って以来、沼と浮島で過ごす時間が多くなりました。
学校に居場所を見つけられないイクハル、父を亡くしたシュリ、心の闇を抱えているヤラガセ。喪失感を抱いて生きている人々が、厳しくもあり温かくもある自然のなかで、生きる力を取り戻していく姿を、独特の筆致で描き出します。
『時間をやくパン屋さん』
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- ◆キム・ジュヒョン=作
- ◆吉原育子=訳
- ◆スケラッコ=絵
- ◆金の星社=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け
忘れたくない時間を パンに焼き付ければ 思い出味のパンになる!
学校で取っ組み合いのけんかをして先生に怒られたピーター。最悪の気分でとぼとぼ歩いていると、甘いにおいに誘われて、いつの間にか小さなパン屋さんの前に立っていました。そのパン屋さんは、お客さんの注文に応じて、過去の思い出をパンに焼き付けることができる、不思議なパン屋さんでした。
ひと口食べれば、サッカーで初ゴールを決めた感激も、死んでしまったペットと過ごしたときの幸せも、味やにおい、触感となって再び味わうことができる。そんなパンがあったら、どんな過去の時間を味わいたいですか。パンに焼き付けたい思い出の時間は人それぞれ。焼きたてのパンのようなふっくら温かい物語です。
『タイムカプセル★ミラクル』
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- ◆横田明子=作
- ◆ao=絵
- ◆岩崎書店=刊
- ◆定価=1,430円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け
「10年後の自分へ」 手紙に書き送った 素直な今の思いとは?
キホのクラスでは10歳になった記念に、10年後の自分に手紙を書いてタイムカプセルに入れることになりました。といっても、キホには特別に書きたいことはありません。将来の夢もまだ決まっていません。ところが、パパとママがタイムカプセルをきっかけに結婚したことを知って、10年後の自分に向けて書きたいことが見えてきました。実はキホには、クラスに好きな男の子がいたのです。
将来の夢がかなうかどうかは、大人になってもわかりません。大人になっても、まだ夢に向かっている途中かもしれないからです。未来への手紙が引き起こす不思議な出来事が、そんなことを考えさせてくれるファンタジーです。
『林にかくれるキリンを追う もっと知りたい野生の姿』
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- ◆齋藤美保=著
- ◆くもん出版=刊
- ◆定価=1,650円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け
タンザニアで見た 野生キリンの姿は 驚きと発見の連続
本書に掲載された1枚の林の写真。一見すると木が生い茂るだけで、生き物の姿は見当たりません。ところが実はキリンの親子が写っているのです。目を凝らしてやっとわかるくらい、風景のなかにとけ込んでいます。動物園ではあんなに目立つキリンのからだの模様が、アフリカの林では姿を隠すのに役立っているのがわかります。
日本でただ一人の野生キリンの研究者が、タンザニアで過ごした日々をつづりながら、キリンの生息場所や子育て、集団生活などについて説明します。同じキリンでも、動物園と野生とではこんなに違うのかと驚かされることも。野生動物の研究方法とそのおもしろさについても、わかりやすく教えてくれます。
『「考える力」を育てるために SAPIXが大切にしていること』
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- ◆髙宮敏郎=著
- ◆総合法令出版=刊
- ◆定価=1,650円(税込)
- ■対象:保護者向け
教育界の重鎮と語り合う、 未来を生き抜くための 「考える力」はこう伸ばす!
教育には、同じ条件下ならある程度同じ結果が得られるという、サイエンスの部分があります。しかし画一的な方法では、多様な個性を持つ子どもたちをカバーできません。その意味で教育はアートでもあります。「教育はその姿を様々に変容させることで、子どもたちの可能性をいかようにも引き出してくれる装置だ」と著者は言います。そのときに共通項として浮き上がるのが「考える力」の重要性です。
「考える力」をテーマに、SAPIX YOZEMI GROUP共同代表の著者が、東大元総長の濱田純一氏、元駐米大使の藤崎一郎氏など、長年教育に従事してきた4氏と対談しました。一時の流行に左右されないSAPIXの教育理念の在り方がよくわかります。
『俳句ガール』
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- ◆堀直子=作
- ◆高橋由季=絵
- ◆小峰書店=刊
- ◆定価=1,430円(税込)
感じとってほしい 主人公の心の動きと、 成長する瞬間の輝きを
所沢校 校舎責任者主人公は小学4年生の女の子、つむぎです。つむぎは、祖母の世話で忙しい母親に代わって家事を手伝うしっかり者です。でも周囲からそう見られていることに内心不満を持っています。そんなとき祖母が通うケアハウスで俳句と出合い、つむぎの気持ちは大きく変わっていきます。
4年生といっても、あどけない子もいれば大人びた子もいます。この本ではそんな子どもたちの微妙な心の動きが上手に描かれています。特に印象に残ったのはつむぎが初めて俳句を作る場面です。ある日の放課後、つむぎは誰もいない教室の黒板に初めて俳句を書いてみます。見よう見まねで自分の気持ちをぶつけて作った俳句です。翌朝、驚いたことに自分の俳句の横に、同じ上の句から始まる俳句が書かれていました。見事な返しの句です。「誰が書いたのだろうか」「もう一度書いたら次はどんな句が返ってくるだろうか」と、つむぎはわくわくした気持ちで俳句を作っては黒板に書き、返しを待つようになります。このあたりの展開はおもしろく、読む人もわくわくすると思います。
得意なものがなく、ぱっとしたところのなかったつむぎは、俳句と出合い、俳句がほめられたことで変わっていきます。誰しもほめられると前向きな気持ちになるものです。つむぎが、ふと黒板に俳句を書いてみたように、変わるきっかけは小さなことかもしれません。最初は正しいかどうかもわからないでしょう。でもわからなくても踏み出していく姿勢は大切です。またつむぎは、自分の句の返しを、答えを求めるように楽しみに待ちました。これは学ぶ姿勢の基本でもあり、教室で学ぶ皆さんにも感じとってほしいところです。
2学期の数か月間の物語ですが、この短い間につむぎは、心の持ち方も友だちや家族に対する接し方も変わり、驚くほど成長します。子どもたち自身も保護者の方も、成長する子どもの姿を知るうえではとても良い作品です。1年生から5年生ぐらいまでの間にぜひ読んでください。
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