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『カトリと眠れる石の街』
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- ◆東曜太郎=作
- ◆まくらくらま=絵
- ◆講談社=刊
- ◆定価=1,595円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
19世紀の城壁の街で 人々が次々と眠り病に!? 奇妙な病の謎とは?
スコットランドの首都、エディンバラは、古い建物がひしめき合う狭苦しい旧市街と、お金持ちが住む新市街に分かれています。その旧市街に住むカトリは、金物屋を営む養父母の下で家業を手伝いながら、学校に通う女の子です。ある日、カトリは家に帰る途中、馬車にぶつかりそうになったことから、新市街に住む女の子、リズと知り合います。
リズは全寮制の名門校に通う裕福な家の娘です。父は裁判所で働く法律家ですが、その父の様子が最近おかしく、ひと月ほど仕事を休んでいて寝室でずっと寝ている、とのこと。起きているときは魂をなくしたかのようにぼうっとしていて、医者に聞いても原因がわからないというのです。実は旧市街では、同じような症状の人が増えていました。
時は1885年。隙間なく建つ石造りの建物。宿屋や仕立屋、パブなどが並ぶ石畳の路地。響き渡る馬車のひづめの音。そんなエディンバラの街を舞台に、2人の少女が原因不明の病気の謎に迫ります。気が強くてさっぱりした性格のカトリ。聡明で何でもはっきり言うリズ。境遇は違っても似たところのある2人が、心の強さを武器に謎に分け入っていく姿が、読者をぐいぐい引っ張ってくれます。
科学的な根拠や人の話から、客観的に推論していく過程がおもしろく、謎解きの魅力もたっぷり。近世が舞台なのに読みやすく、主人公たちと一緒に不思議な雰囲気が漂うエディンバラの街を探検できるミステリーファンタジーです。
『地球をまもるって どんなこと? 小学生のわたしたちにできること』
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- ◆ジョージ Y ハリソン=作
- ◆たかしまてつを=絵
- ◆日本科学未来館=監修
- ◆KADOKAWA=刊
- ◆定価=1,650円(税込)
- ■対象:小学校低学年向け
10歳の少年が語る 持続可能な世界のために 「ぼくはこうしている」
わたしたちが毎日の暮らしのなかでしたことが、地球に影響を与えています。どうしたら地球を守ることができるのでしょうか。「自転車や歩きで出掛ける」こともそうです。「自分が食べられる分だけにする」こともそうです。そんな世界をより良くするためにできることを、10歳の著者が、12項目を挙げて説明しています。
著者は6歳のとき、ローマにある国連食糧農業機関(FAO)本部を訪問して環境問題に関心を持ち、環境保全活動に取り組むようになりました。彼は日本の小学生にも訴えます。「このままだと、わたしたちが大人になったとき、地球に住めなくなるかもしれない。一緒に考え行動してくれる仲間がほしい」と。
『いのちが かえっていくところ』
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- ◆最上一平=作
- ◆伊藤秀男=絵
- ◆童心社=刊
- ◆定価=1,430円(税込)
- ■対象:小学校低学年向け
初めて釣ったイワナは ほおずりしたくなるほど いとおしかった
夜明け前、たもんはお父さんと川に釣りにやってきました。目当てはイワナ。さっそく餌になる虫を捕まえて、それを付けたさおを川に振り込みます。でもなかなか釣れません。あきらめかけたそのとき、さおの先がぐいっと曲がって、さおが丸くしなりました。魚の動く勢いがさおを通してぐぐん、ぐぐんと伝わってきます。たもんは、頭がかーっと熱くなりました。
イワナを手にしたときの驚くほどの冷たさ。針を外したとき、激しくくねらせた全身の美しさ。焼いて食べたときに出てきた涙。迫力ある画面から命の輝きが伝わってきます。命の重さ、命の尊さ。経験を通して知ることの大切さを、感じさせてくれる絵本です。
『はっけよい、子ガッパ!』
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- ◆中山聖子=作
- ◆下平けーすけ=絵
- ◆文研出版=刊
- ◆定価=1,430円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け
相撲は男がやるもの そういう決まりだからって そんなの絶対おかしい!
リコはさばさばした性格のパワフルな女の子。一方、リモは運動が苦手な優しい男の子。2人は双子なのにタイプは正反対です。ある日、リモは神社で開かれる「子どもずもう」に誘われます。出たがらないリモに代わって、優勝賞品ほしさに「自分が出る」と言い出すリコ。でも出られるのは男子だけです。「そんなの絶対におかしい」と、リコは思うのでした。
「子どもずもう」は村の神事。出場は男子だけというルールに反発する一方、古くから伝わる慣習を自分が壊したことで、良くないことが起こったらと、悩みつつも周りを気にかけるリコ。かっぱの像のある村に引っ越してきた姉弟の、楽しく、ちょっと不思議な物語です。
『にわか魔女のタマユラさん』
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- ◆伊藤充子=作
- ◆ながしまひろみ=絵
- ◆偕成社=刊
- ◆定価=1,320円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け
預かった魔女の道具 これさえあれば 魔女になれる!?
町で人気の「たまゆら」は、タマユラさんがきりもりする喫茶店。ある日、店にお客のヨルさんが来て、「旅行に行くので荷物を預かってほしい」と言ってどこかに行ってしまいます。預かったのは黒いカバン。タマユラさんが開けてみると、大きな鍋と長いほうき、鉢植え、そして1匹の黒ネコが飛び出してきました。
魔女の持ち物を預かったタマユラさんが、にわか魔女になって大活躍します。魔女の道具を持ったからといって、誰でも魔女になれる訳ではありません。なぜタマユラさんは魔女になれたのでしょうか。タマユラさんの得意料理、ミネストローネのおいしそうな匂いが漂ってきそうな、ほっこりするお話です。
『津田梅子 女子教育を拓く』
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- ◆髙橋裕子=著
- ◆岩波書店=刊
- ◆定価=968円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け・保護者向け
「女性にも高等教育を」 留学経験をきっかけに 始まった社会規範との戦い
日本の女子教育のパイオニアとして知られる津田梅子。彼女は6歳で親元を離れ、女子国費留学生の一人としてアメリカに渡りました。明治政府が幼い女子を派遣したのは、長い期間をかけてアメリカの家庭生活を学ばせ、「賢い母」にするためです。産業関連に役立つ知識を得るためだった男子の留学とは、そもそも目的が違っていたのです。留学経験を生かして働きたいと思っても、帰国した梅子たちを日本政府が起用することはありませんでした。
「女子にも高等教育への道を」と志し、幅広い教養に基づく人格形成をめざすリベラルアーツ教育の拡充に尽力した津田梅子。その足跡を、津田塾大学学長の著者が最新の研究成果と豊富な資料をもとに、わかりやすく解説します。
『数学の贈り物』
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- ◆森田真生=著
- ◆ミシマ社=刊
- ◆定価=1,760円(税込)
生きるって何? 時には立ち止まって 視点を変えて考えてみよう
千里中央校 校舎責任者タイトルだけ見ると、数学のおもしろさや奥深さについて書かれた本だと思うかもしれません。わたしもそう思って読み始めましたが、違いました。著者は数学の研究者なので、数学の話は随所に出てきますが、人生のこと、仕事のこと、学び続けること、自分を律することなど、どちらかというと哲学書に近い内容です。読み進めると、仕事に追われる毎日のなかで、立ち止まって人生を俯瞰して見ることができ、感銘するところが多くありました。
散歩中に見た風景、幼いわが子とのやり取りなど、日常のなかから生まれた19編のエッセイで構成されています。わたしが特に好きなのは「白紙」と題した章です。ヒントも答えもない白紙と向き合って、自分でゼロから何かを生み出していくことの大切さについて述べた文章で、中学入試でも取り上げられたことがあります。また、「いまいる場所で」と題した章では、わが子の話と関連するところで『機関車トーマス』の話が出てきます。トーマスの原作者はイギリスの牧師さんで、彼は病気で動けないわが子のために、手足を動かすことも、食べることもできない機関車を主人公にした物語を作りました。その話を通して著者は、「価値あるものとは何か」という話をしています。
哲学的過ぎて意味がわからない部分は、とばしても構いません。読んだなかで一つでも二つでも、共感できる文や好きなフレーズを見つけてもらえたらうれしいです。また今だけでなく、この先、何かにふと思い悩んだときに、あらためて読んでみると、違う発見ができ、ぴんと背筋が伸びるような気持ちになると思います。
保護者の方にもお薦めします。一個人としての人生観や仕事との向き合い方、子どもとの接し方など、共感できる部分があると思います。地に足のついた生き方について考えさせてくれる本です。肩の力を抜いてふんわり読んで、お気に入りのことばを見つけてください。
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