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『僕らが学校に行く理由』
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- ◆渋谷敦志=写真・文
- ◆ポプラ社=刊
- ◆定価=2,420円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
学ぶ機会を奪われた たくさんの子どもたち その逆境の先に見た光とは?
アフリカ東部に位置するウガンダは、内戦とエイズの流行によって、世界で最も貧しい国の一つになっています。2010年にこの国を訪れた著者はある村で、エイズで親を失った数多くの子どもたちの存在を知ります。その一人、親戚と暮らす11歳のシャロンは、授業料を払えなくなって学校をやめました。自分が畑を耕したり水くみをしたりしなければ、足の悪い伯母や幼い兄弟は生きていけないからです。シャロンはよく言います。「わたしには選択肢がない」と。
一方、インドの東に位置するバングラデシュの港町には、薄暗い町工場で油まみれで働く10歳の見習い溶接工がいました。名前はカイルール。故郷の村を離れて住み込みで働いています。町には同じような子どもたちが数多くいます。みんな学校に行ったことがありません。「ここで技術を学んで家族を助けたい」と言うカイルール。学ぶことを知らない彼もまた選択肢がない子どもの一人です。
紛争、貧困、災害…。世界にはさまざまな理由で、学ぶ機会を奪われた子どもたちがたくさんいます。そんな子どもたちの写真を撮り続ける著者が、彼ら彼女らの現実を、その置かれた社会背景とともに伝えます。本来なら無限の可能性があるはずの子どもたち。レンズを見つめるまなざしの光が、その過酷な現実を強く思い起こさせます。「貧しいから教育を受けられない」「教育を受けられないから貧困から抜け出せない」というこの悪循環をどう断ち切ればよいのでしょうか。「日本の子どもたちにも自分事として考えてもらいたい」と著者は訴えます。
『さかさ しりとり』
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- ◆林木林=作
- ◆大竹悦子=絵
- ◆文研出版=刊
- ◆定価=1,650円(税込)
- ■対象:小学校低学年向け
読むたびに 新しい発見がある 楽しいことば遊び絵本
「たね まけば おばけ まねた」「ネクタイ ぜいたくね」「いるかの もちものかるい」。文はどれも回文、右から読んでも左から読んでも同じになっています。でも普通の回文とは違います。よく見ると、最初の単語の最後の文字が、次の文の最初の文字につながっていて、しりとりにもなっているのがわかります。
しりとりと回文が、ゆるキャラ風のユニークなイラストで楽しめる、ことば遊びの絵本です。文字を見ただけではわかりにくい謎の回文も、不思議キャラが行動で示してくれるので納得です。隠れているストーリーが発見できればさらに納得でき、二重に笑えます。チャレンジしてみる価値ありです。
『サバンナで野生動物を守る』
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- ◆沢田俊子=文
- ◆講談社=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け
サバンナの案内から 動物の保護まで サファリガイドの仕事を紹介
「皆さん、見えますか。ゾウの群れです。水浴びをしに行くのでしょう。先回りして水場に行きましょう」。ゆかさんは、南アフリカ共和国で働く、日本人女性としては唯一の政府公認サファリガイド。彼女が活動するエリアには、絶滅危惧種を含む野生動物140種類以上が生息しています。その野生動物の実態を訪れた人に伝え、理解してもらうのが彼女の仕事です。
サイを密猟から守るため、狙われる角をあらかじめ切ってしまうこともあるそうです。ヘリコプターから麻酔銃を撃って、おとなしくさせてから角を切るのです。このような密猟から野生動物を守る活動についても、生き生きと伝えてくれます。
『ニャンの日にまいります!』
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- ◆木内南緒=作
- ◆酒井以=絵
- ◆岩崎書店=刊
- ◆定価=1,320円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け
サビネコは言った 「だいじょうぶ、 晴也ならうまくやれる!」
両親が離婚したため、母と2人で暮らす晴也。名字が変わったのをきっかけに、クラスでからかわれるようになります。ある日、晴也は川でおぼれかけたネコを助けます。黒と茶のまだら模様のサビネコです。しっぽの形から「カギ助」と名付け、家で飼うことにしたら、それ以来、晴也は、カギ助が出てくる不思議な夢を見るようになりました。
夢の中では、クラスのいじめっ子も晴也の家来。みんなに「晴也さま」と呼ばれ、「ずっと夢の国にいたい」と思うのですが、大切なものと引き換えに、夢の国を封印します。夢のおかげで、一歩踏み出す勇気を持てるようになった晴也の日常が、少しずつ変わっていきます。
『5番レーン』
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- ◆ウン・ソホル=作
- ◆ノ・インギョン=絵
- ◆すんみ=訳
- ◆鈴木出版=刊
- ◆定価=1,760円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
勝つかどうかより どう負けたかが 意味を持つ試合もある
カン・ナルは漢江小学校に通う水泳部のエースです。どんな大会でも常に勝ってきましたが、大事な全国大会で他校のライバル、キム・チョヒに負けてしまいます。勝てなくなったことで、競泳を続ける意味がわからなくなったナルに、「誰でも負けるときがある。もしかしたらどう負けるかが、どう勝つかより大切かもしれない」と言うコーチ。その意味がわからないナルでした。
競泳から飛び込みに転向した姉への思い、水泳部の仲間との交流、転校生との恋。ある日、過ちを犯してしまったナルは、周囲の温かさに気づくなかで、弱い自分と向き合えるようになります。水の匂いを感じながら読み進むうちに、勇気がもらえる韓国の物語です。
『ちいさな宇宙の扉のまえで 続・糸子の体重計』
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- ◆いとうみく=作
- ◆佐藤真紀子=絵
- ◆童心社=刊
- ◆定価=1,650円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
うじうじ悩んで、 転んだり逃げたり。でも わたしたちは案外強い
盲腸の手術で学校を休んでいた糸子。10日ぶりに教室に行くと、初めて会う転校生の恵が、親しげに話しかけてきました。荷物を持ってあげるなどと言って、あれこれ世話を焼こうとする恵に困惑させられますが、そんな糸子をいつもクールな良子は、いらいらしながら見ていました。
飾らない性格の糸子。転校するたびに自分の仮面をリセットしてきた恵。将来の夢と友だちとの間で自分探しに悩む良子。ほか2人のクラスメートを加えた5人の視点で、各章が語られていきます。学校という小さな宇宙のなかで傷ついたり、傷つけられたり。お互いに気持ちがわかるからこそ、悩み迷います。そんな6年生たちの、春から卒業までを描く物語です。
『数学ガールの秘密ノート 整数で遊ぼう』
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- ◆結城浩=著
- ◆SBクリエイティブ=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
どうしてこうなるの? 整数の素朴な疑問を 会話形式で易しく説明
千葉校 校舎責任者大学生のときに数学を専攻していたこともあって、数学に関する本をよく読んでいます。なかでも好きなのが『数学ガール』というシリーズです。数学の専門書ですが、物語形式で読みやすいので愛読書になっています。その『数学ガール』の内容をかみ砕いて、会話中心の物語形式でわかりやすく説明しているのが、この『数学ガールの秘密ノート』シリーズです。
高校生の「僕」と、後輩の「テトラちゃん」やいとこで中学生の「ユーリ」の会話を中心に、テーマごとに数学の問題を解き明かしていきます。「僕」が「テトラちゃん」や「ユーリ」にわかるように説明するわけですが、実はその説明の仕方は、サピックスの授業でわたし自身が説明する話し方とよく似ています。「3の倍数の見分け方」にしても「素数の判定法」にしても、わたしもほとんど本書と同じ説明をしています。授業で黒板に書いている表と同じようなものも出てきます。そんなことから、皆さんならふだんサピックスで勉強しているような気分で読めるので、おもしろいのではないかと思って選びました。
15巻のシリーズのなかで今回取り上げたのは、小学校で習う内容が多く出ている「整数で遊ぼう」です。倍数の見分け方、素数の求め方、素数が持つ不思議な性質などについて、数当てクイズのような親しみやすい題材を使って、ていねいに説明しています。登場人物が素直な疑問を口にするところから始まるので、読む人もストーリーのなかに入り込んで、一緒に考えるうちに疑問を解決できるのではないでしょうか。
一部、難しい内容もあるかもしれませんが、そうしたところは読みとばしても大丈夫です。シリーズのなかには、中学・高校で習う内容が中心の巻もあり、その意味では、学年を重ねるごとに読み継いでいくことができる本です。大人も楽しめる内容ですから、親子で一緒に読んでもいいと思います。この本を通じて数学に親しみ、長く読み続けられる愛読書にしてくれたらうれしいです。
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