Booksコーナー
※お好きな本のタイトルをクリックして下さい。その本に関する内容が、表示されます。
掲載月一覧 | 2022年8月|2022年7月|2022年6月|2022年5月|2022年4月|2022年3月| 2022年2月|2022年1月|2021年12月|2021年11月|2021年10月|2021年9月 |
Books目次へ△ |
---|
『シャンシャン、夏だより』
-
- ◆浅野竜=作
- ◆中村隆=絵
- ◆講談社=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
みんな必死で生きているし、 気軽に心配されたら腹が立つ だからお前も負けるなよ
宅地開発が進み農地が減りつつある千葉県の北西部。ノブトはこの地で、誇りを持って農業を営む両親と中学生の姉との4人で暮らしています。夏休みが始まる前日のこと。ノブトのクラスは、教室で飼っているトカゲの世話を夏休みの間、誰がするか話し合っていました。トカゲは昨年の6年生から受け継いで飼い始めただけ。世話をしたい人はいなく、押し付け合うばかりです。そのとき突然、転校生の川村ちとせが飼育箱のふたを開けてトカゲをつかみ、窓から放り投げました。「いいじゃない。あたしと同じでどうせ嫌われてるんだから」。言い捨てるとちとせは教室から出て行きました。
「シャンシャン」はクマゼミの鳴き声のこと。この辺りでは珍しいクマゼミの声を聞いたことをきっかけに、ノブトはいつも独りでいるちとせと話をするようになります。実はちとせはこれまでも転校が多かったせいか勉強が遅れていて、授業中も何も答えません。誰とも一緒に行動したがらず、何か言えば敵意むき出しの顔でにらみつけてきます。そんなちとせでしたが、一緒にラジオ体操の係をするようになって、ノブトの印象は変わります。
セミの鳴き声が響きわたる8月の日々のなかで進行していく、ひと夏の物語です。ちとせを苦しめる理不尽な現実に対して、何もできない自分にいら立つノブト。それでもちとせの気持ちに寄り添おうとする姿が胸を打ちます。この時期の稲の世話、セミが脱皮する過程、雑木林の生き物の痕跡。物語を彩る農家の営みや自然の営みの一つひとつを含め、ていねいに読んでほしい一冊です。
『ほんとのママはゴールドマリー』
-
- ◆板橋雅弘=作
- ◆平田景=絵
- ◆岩崎書店=刊
- ◆定価=1,100円(税込)
- ■対象:小学校低学年向け
大きすぎるママと よわっちいわたしが 始めた“トックン”とは?
あるときアイが冷蔵庫を開けると、ドアに貼ってあるメモの下から一枚の写真が落ちてきました。写っているのは、体を鍛えたかっこいい女の人。きらきらした服を着て、ぴかぴかのベルトをしています。顔は自分によく似ています。見れば見るほどそっくりです。アイは思いました。この人がわたしの本当のママだ。
アイのママは100kg近い体重で、声が大きくいつも元気なのに、アイはやせっぽちで引っ込み思案で、ママとは正反対。「よわっちい自分がくやしい」と悩むアイが、生まれ変わることをめざして、ママと一緒にトックンを始める楽しい物語です。絵もユーモラスで、トックンを始めたアイのきりっとした表情に注目です。
『学校はうたう』
-
- ◆杉本深由起=詩
- ◆松田奈那子=絵
- ◆あかね書房=刊
- ◆定価=1,430円(税込)
- ■対象:小学校低学年向け・小学校中学年向け
廊下、靴箱、机… 学校にある物たちの おしゃべりを聞いてみよう
「そりゃあわたしだってイヤよ みんながたのしそうにあそんでいるとき やすみじかんはもうおわり さっさとすわってべんきょうしなさい というのはね」
これは学校にある何かが言っている独り言です。さて、何がしゃべっているのでしょう。正解は「チャイム」です。
「学校にある物たちがしゃべれるとしたら、何をしゃべるだろう」。そんなことを想像して書かれた詩が収められています。学校ではいろいろなことがあります。楽しいこともつらいことも。でも、チャイムも机も靴箱も、みんな子どもたちを応援しています。「ピグマシリーズ」のテキストでおなじみの詩人、杉本深由起さんの楽しくて心温まる詩集です。
『一撃をねらえ!』
-
- ◆あさだりん=作
- ◆酒井以=絵
- ◆金の星社=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け
ヒントに気づけば ゴールが見えてくる ボルダリングって楽しい!
算数のテストで60点をとってしまい、大ショックの奈央。下校途中、その答案用紙を見ながらとぼとぼ歩いていると、それが風に飛ばされて城跡の石垣の上に。でも通りかかったクラスの楽くんが、素早い動きで石垣を登ってテストをとってきてくれました。聞けば、楽くんはボルダリングを習っているとのこと。奈央は楽くんと一緒に、ジムを見学しに行くことにしました。
ボルダリングに出合った奈央が、悩みながらも挑戦していく姿をさわやかに描きます。「ボルダリングは体を使って解くパズル」と楽くん。行き詰まってもヒントに気づけば、一気にゴールが見えてくる。そんなボルダリングの楽しさが伝わってきます。
『海ヤカラ』
-
- ◆照屋年之=作
- ◆とろっち=絵
- ◆ポプラ社=刊
- ◆定価=1,540円(税込)
- ■対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け
ヤカラは教えてくれた 自分が変われば 周りの人も変わると
国吉ヤカラは、沖縄の糸満で暮らす小学生。漁師の父親を手伝って朝早く漁に出るため、学校では1時間目から居眠りです。廊下に立たされたヤカラがふと見ると、隣の教室にも立たされている子がいました。青い目の転校生マギイです。マギイはヤカラと目が合うと、にらみつけてきました。
米軍にひどい目にあわされた沖縄の人のなかには、マギイのような米兵の血をひいた子どもさえ、憎く思う人もいました。アメリカ統治下の沖縄で出会った、ヤカラとマギイの交流を描く物語です。作者はお笑い芸人ガレッジセールのゴリさん。今年は沖縄復帰50周年ですが、これを機に、沖縄の問題について知ってほしい、という思いが伝わります。
『六四五年への過去わたり 平城の氷と飛鳥の炎』
-
- ◆牧野礼=作
- ◆七原しえ=絵
- ◆くもん出版=刊
- ◆定価=1,650円(税込)
- ■対象:小学校高学年向け
失われた史書を求め、 タイムトンネルをくぐって 大化の改新直前の飛鳥へ
平城京にやってきた姉妹、沙々と真桑。ところが真桑は貴族にさらわれ、妹の沙々は姉を救おうと、貴族の館に忍び込みます。一方、星図をつかさどる陰陽寮で働く青年、言祝は、主の舎人親王から、「過去わたり」で大化の改新前に戻り、蘇我氏の屋敷から史書を持ち帰るよう命じられます。その史書とは、後に舎人親王が『日本書紀』を完成させるのに欠かせない書物でした。
平城京から、大化の改新が始まる直前の飛鳥の地へ。偶然出会った2人がタイムスリップの大冒険をします。氷の剣が解ける前に戻らないと、永遠に戻れなくなるのが「過去わたり」。2人は無事に戻って来られるのでしょうか。はらはらどきどきの歴史ファンタジーです。
『風が強く吹いている』
-
- ◆三浦しをん=作
- ◆新潮社=刊
- ◆定価=1,045円(税込)
目標に向かって走る姿が 読む人それぞれの夢を かき立ててくれる
上本町校 校舎責任者箱根駅伝をめざす大学生たちの物語です。陸上競技未経験者が大半の寄せ集め集団が箱根駅伝に出るまでのお話ですので、結果については現実的とは感じられないかもしれません。しかし競技については、緻密な取材を重ねて細かい部分まで描き、競技をする人の気持ちもしっかりとらえているので、物語自体にはリアリティーがあります。それだけに夢物語ではなく、読む人が「自分もこんなふうになれるかもしれない」と思える作品です。
長距離を走るレースということで考えれば、めざすのは「速さ」です。でも主人公は速さだけではなく「強さ」を求め続けます。走りながら「強さとは何なのか」を考え続けます。「テクニカルな部分だけでなくメンタルな部分が大切だ」というメッセージは、実は中学入試に出題される物語文に通じるものです。また著者は、『舟を編む』という、辞書の編纂をしている人を主人公にした小説も書いています。それだけにことばに対する意識が高く、この作品からもことばに対する鋭い感性がうかがえます。そういう味わいのあることばに接することができるのも、この本の魅力だと思います。
ボリュームがあり、最初は少し抵抗があるかもしれません。でも、読み進めれば印象が変わり、どんどん先を読みたくなると思います。箱根駅伝を走る10人が個性豊かに描き分けられ、読む人それぞれが、そのなかの誰かに自己投影できるでしょう。また、10人がそれぞれ事情を抱えるなかで走ることを選んでいるので、その背景に注意しながら読むと、人に対する見方も深まると思います。
目標に向かって共にがんばり続ける大学生たちの姿は、将来自分が行くであろう大学というもののイメージを変えるかもしれません。「大学生になったらこんなことができるんだ」「こんなに目標を持って充実した生活ができるんだ」「だとしたら自分もこういうことができるかもしれない」。そんなあこがれ、夢、希望のようなものを、漠然とした形でもいいので抱いてくれればうれしいです。
◎学校関連リンク◎
◎人気コンテンツ◎