さぴあニュースバンク
世界的に見ると、2024年は選挙の年だったといえます。主なところでは、3月にロシアで大統領選挙、10月に日本で衆議院議員総選挙、11月にアメリカで大統領選挙が行われ、そのたびに結果が注目されました。また、ロシアとウクライナ、イスラエルと周辺の勢力との戦火により、大きな被害が出ています。一方で、7月から9月にかけてはフランスの首都パリで夏季オリンピック・パラリンピックが開催されました。
こうした重要な出来事はこれからの日本と世界を担う小学生なら知っておいてもらいたいものです。しかも、その本質は何なのか、自分の頭できちんと考えておくことが大切です。中学入試の社会科や理科で時事的な問題が多く出されるのはそうした姿勢を持っているかどうかを確認するためです。ここでは今年の入試に取り上げられそうな2024年の主なニュースをわかりやすくまとめました。6年生は時事問題の最終チェックに、5年生以下の皆さんはこの1年間のニュースを知っておくために、ぜひご活用ください。
※西暦のない日付はすべて2024年です。
科学
1NEWS CHECK 日本初の月面着陸
「ピンポイント着陸」に成功
1月20日午前0時20分(日本時間。以下同じ)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小型月着陸実証機「SLIM」が月の赤道の南にある「神酒の海」のSHIOLIクレーター近くの斜面に着陸しました。搭載していた超小型月面探査ローバー「LEV-1」と変形型月面ロボット「LEV-2(愛称SORA-Q)」は着陸直前に月面に放出されました。LEV-1は跳びはねて、SORA-Qは車輪で、それぞれ月面を移動して観測と写真撮影を行い、SORA-Qからは着陸したSLIMの写真も送られてきました。
SLIMは2023年9月7日に打ち上げられたのですが、日本の探査機が月面着陸に成功したのは初めて。これまでに成功したことがあるのは旧ソ連、アメリカ、中国、インドの4か国で、日本は5か国目です。
今回のミッションの最大の狙いは、めざす天体の降りたい場所に降りる「ピンポイント着陸」の技術を確立することでした。従来の探査機は着陸目標地点と実際の着陸地点とが数㎞〜数十㎞もずれるのが普通でした。SLIMは調べたい対象物がある場所に100m以内の誤差で着陸することをめざしたのです。これについてJAXAは1月25日、目標から東に約55mの地点に着陸できたことを明らかにしました。日本の宇宙開発は新たなステージに入ったといえるでしょう。
とはいえ、すべてが想定どおりにいったわけではありません。SLIM本体は側面に取り付けられた太陽電池パネルで発電して活動するように設計されていました。しかし、着陸当初はなぜか発電ができていなかったため、代わりのバッテリーで短時間だけ活動し、休眠しました。その後、太陽電池が発電できなかった原因は、パネルが太陽とは反対方向の西を向いた状態で着陸してしまったためだとわかりました。
月は地球に常に同じ面を向けていますが、太陽・月・地球の位置関係が変われば、月面にある探査機から見た太陽の方向は変わります。着陸した当時、太陽光は東から当たっていたため、西を向いていたパネルは発電できなかったのです。月では昼と夜が約2週間ずつ続きますが、それでも太陽の方向は少しずつ変わっていきます。1月28日にはパネルに太陽光が当たるようになり、太陽電池が復活したため、地球との通信が可能になり、SLIMの運用が再開されました。ただし、着陸地点が日没になった1月31日以降は再び休眠状態になりました。その後、2月・3月・4月の3回にわたって着陸地点の夜明けとともに地球との通信再開に成功しましたが、4月28日を最後に通信できなくなったため、運用は8月23日に終了しました。
アメリカと中国の動き
SLIMに続き、アメリカと中国も月面着陸を成功させました。
2月22日、アメリカの宇宙企業インテュイティブ・マシーンズの開発した無人着陸船「オデュッセウス」が、月の南極への着陸に成功しました。民間企業の月面着陸は世界初の快挙です。また、月の南極への着陸成功は、2023年8月のインドの「チャンドラヤーン3号」以来、2回目です。アメリカとしては1972年の「アポロ17号」以来、約半世紀ぶりの月面着陸でした。
また、5月3日に打ち上げられた中国の無人探査機「嫦娥6号」は、人類史上初めて月の裏側の砂を採取して6月25日に地球に帰還しました。先述したように、月は常に同じ面を地球に向けているため、地球からは見えない裏側を探査するのは難度が高いミッションです。今回の成功により、月の歴史の解明が進むことなどが期待されています。
「H3」の打ち上げに連続して成功
2024年は、従来の日本の基幹ロケット「H2A」の後継機として開発されてきた「H3」の打ち上げに成功するという明るいニュースもありました。
H3の初号機は2023年3月7日に鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられましたが、第2段エンジンへの点火が確認されなかったため、機体は地上からの遠隔操作で破壊されました。次の2号機の打ち上げは2月17日に無事に成功し、搭載していた2機の小型衛星と、アルミ製の模擬衛星を予定どおりに分離しました。
近年、商業衛星の打ち上げを受注する国際競争は激しさを増す一方です。内閣府によると、2022年に打ち上げられた人工衛星などの数は世界で2368機。この10年ほどで約11倍に増えました。こうした状況が訪れているだけに、日本はH3の打ち上げ成功の実績を着実に積み重ね、信頼性を高めることが必要です。
その後、H3は順調に打ち上げを成功させています。7月1日には地球をレーダーで観測する「だいち4号」を、11月4日にはXバンド防衛通信衛星「きらめき3号」を、それぞれ打ち上げました。
補足しておくと
2024年は宇宙飛行士についても明るいニュースがありました。JAXAは10月21日、米田あゆさんと諏訪理さんを宇宙飛行士として正式に認定したのです。米田さんと諏訪さんは2023年2月、4127人もの応募者から宇宙飛行士候補に選ばれた、いわば期待の星で、これまで基礎訓練を受けてきました。アメリカでは近い将来、月に再び男女の宇宙飛行士を送る「アルテミス計画」を推進していますが、日本もそれに協力し、月を回る宇宙ステーションの建設にかかわることになっています。この2人が月面に立つ可能性は十分にあります。
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