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今、この瞬間にも、ウクライナや中東のパレスチナ自治区のガザ地区などには戦火にさらされて苦しんでいる人々がいます。これからの日本と世界を担う皆さんには、こうした問題には関心を持ってもらいたいです。どうするのが正解なのか、簡単には結論が出ませんが、それらの出来事は食料やエネルギーの供給に影響を与え、わたしたちの生活にも直結しています。たとえ小学生でも、自分の頭で考えてほしいことがたくさんあります。
中学入試の社会科や理科で時事的な問題が多く出されるのは、そうした姿勢を持っているかどうかを確認したいと、学校側が考えているためです。ここでは今年の入試に取り上げられそうな2023年の主なニュースをまとめました。6年生は時事問題の最終チェックに、5年生以下の皆さんはこの1年間の世の中の動きを知っておくために、ぜひご活用ください。
※西暦のない日付はすべて2023年です。
国際
1NEWS CHECK ウクライナ問題
2022年2月、ロシアがウクライナに侵攻
2022年2月24日、ウラジーミル・プーチン大統領はロシア軍に対し、ウクライナへの侵攻を命じました。ウクライナとロシアとのこの戦いは2024年に入っても続いており、停戦・休戦・終戦の気配はまったく感じられません。
ロシアとウクライナはともに、ソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)を構成していた15の共和国の一つでしたが、ソ連は1991年に解体され、ウクライナはロシアとは別の国になりました。それ以来、ウクライナではヨーロッパの一員になることを望む親欧米派と、ロシアの兄弟国のような地位にとどまることを望む親ロシア派との対立があり、国の方針も揺れ動いていました。
2014年には親ロシア派の政権が倒れて親欧米派の政権が成立しましたが、その際、ウクライナ東部の親ロシア派の住民が多い地域はウクライナから事実上独立し、ロシアの支援を受けてウクライナ政府軍との内戦状態になりました。また、ロシアの重要な海軍基地があるクリミア半島もウクライナからの独立を宣言しました。ロシアはその直後、住民投票の結果だと称して、クリミア半島を一方的に併合しましたが、日本を含め、多くの国はこれを認めていません。
それ以来、ウクライナとロシアとの関係は険悪になりました。親欧米派の政権がEUや北大西洋条約機構(NATO)への加盟を希望したこともその理由の一つです。NATOは軍事同盟で、加盟31か国のうちどれか1か国でも攻撃されれば、加盟国全体への攻撃と見なして共同で反撃することになっています。つまり、NATO加盟国を攻撃すれば、世界最強の軍事力を持つアメリカに反撃される可能性があるわけです。そのため、単独では軍事力の弱い国でも、加盟すれば安全が守られます。だからこそ、ウクライナも加盟を希望しているのです。
NATOはそもそも冷戦時代に社会主義国のリーダーだったソ連に対抗するためにつくられた、アメリカや西ヨーロッパ諸国による資本主義国の同盟でした。これに対し、ソ連も東ヨーロッパの社会主義国とワルシャワ条約機構という軍事同盟をつくりました。1989年に冷戦が終結すると、ワルシャワ条約機構は1991年に解散したのですが、NATOは存続したのです。
その後、ポーランドやルーマニアを含む東ヨーロッパの旧社会主義国は次々とNATOに加盟。これはロシアの勢力範囲が縮小したのに対し、アメリカの勢力範囲が拡大したことを意味します。プーチン大統領はウクライナまで加盟したら国の安全が脅かされると考え、ウクライナ侵攻に踏み切ったとみられます。
国連安全保障理事会は行動できず
これに対し、2月25日には国連安全保障理事会(安保理)がロシアに対して、武力行使を直ちにやめてウクライナから撤退することを求める決議を採択しようとしました。しかし、常任理事国であるロシアが拒否権を行使したため、否決されました。
安保理はアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国の五つの常任理事国と10の非常任理事国、合わせて15か国から成っています。決議はこのうち9か国以上の賛成で成立しますが、五つの常任理事国には「拒否権」があり、1か国でも反対すると決議は成立しません。ということは、常任理事国のいずれかが当事者になる紛争では、安保理は動きがとれないことになります。
それでも加盟193か国すべてが参加する国連総会では3月2日、同様の決議が141か国の賛成で採択されました。ただ、総会の決議は安保理の決議とは異なり、法的拘束力がないため、国連は事実上、行動できない状態です。
フィンランドがNATOに加盟
だからこそ、NATOの力でヨーロッパの安全を守らなければならなくなっているともいえます。NATOへの加盟については2022年5月に新たな動きがありました。ロシアを刺激しないよう中立政策をとっていた北ヨーロッパのフィンランドとスウェーデンが加盟を申請したのです。ロシアのウクライナ侵攻を目の当たりにし、ロシアの脅威をより強く感じるようになったため、決断したとみられます。
しかし、すでに加盟しているすべての国の賛成が得られなければ、NATOに新たに加盟することはできません。そこで問題になったのが、すでに加盟しているトルコの存在です。トルコ国内にはクルド人という少数民族がいるのですが、その独立や自治をめざす組織を政府はテロリストと見なして弾圧しています。国外に逃れたクルド人も多いのですが、こうした人々を、フィンランドとスウェーデンは難民として受け入れ、保護しています。この問題を理由に、トルコは当初、両国の加盟に難色を示しました。しかし、2023年3月、フィンランドの加盟は認めたため、同国は4月にNATOの31番目の加盟国になりました。
さらにトルコは7月に開かれたNATO加盟国の首脳会議で、スウェーデンの加盟も認める姿勢に転じました。この結果、スウェーデンの加盟も近く実現する見込みです。ただ、ウクライナの加盟はまだ見通せません。
補足しておくと
ウクライナとはどんな国なのかを知っておくことも重要です。ウクライナは旧ソ連を構成していた15の共和国の一つ。面積は約60万㎢と日本の約1.6倍で、人口は約4000万人です。面積は15の共和国のうち3番目に広く、人口は2番目に多くなっています。それだけ重要な共和国だったことがわかります。公用語のウクライナ語はロシア語と同様、インド・ヨーロッパ語族のスラブ語派に属し、文法や単語がよく似ています。両国とも国民の多くはキリスト教のうち、カトリックともプロテスタントとも異なる東方正教会の信徒です。
かつてはソ連を構成する重要な共和国で、ロシアとは言語や宗教に共通点があるということです。それだけに、ウクライナが1991年に独立して以降、「自分たちはウクライナ人」という民族意識が着実に育っていることは、プーチン大統領にとって受け入れがたいものでした。今回の侵攻の背景にはこうした感情も見え隠れしているといえるでしょう。
2NEWS CHECK イスラエルとパレスチナ
イスラム組織「ハマス」の攻撃にイスラエルが反撃
※ヨルダン川西岸地区では一部の地域のみでパレスチナ人による自治が行われている。
10月7日、中東のパレスチナ自治区にあるガザ地区を実効支配するイスラム組織「ハマス」がイスラエルを攻撃し、民間人にも多数の死者が出ました。このとき、ハマスはイスラエル在住の民間人を約240人、ガザ地区に人質として連れ去りました。このなかにはタイ人など出稼ぎに来ていた外国人も含まれていました。イスラエルは反撃しましたが、ハマスはイスラエルが攻撃しにくい、病院や学校などの地下に掘ったトンネルを拠点に抵抗しました。これにより、食料や燃料などがガザ地区に入らなくなったため、病院では新生児や高齢者などを中心に死者が増えるなど、大規模な人道上の危機が発生しました。
こうしたなか、安保理は11月15日、緊急会合を開き、人道支援を目的とした戦闘の「休止」を求める決議を賛成多数で採択しました。この問題で安保理が決議を採択できたのはこれが初めてでした。
この決議には国際人道法に沿って民間人、特に子どもを保護する文言が多く盛り込まれました。ガザ地区全体に人道支援が行き渡るよう、「十分な日数」の戦闘休止などを求める内容が中心でした。これを受け、11月22日にはハマスが人質50人を解放することと引き換えに、戦闘を4日間休止することにイスラエルとハマスが合意したと、交渉の仲介役を務めた中東のカタール政府が発表しました。戦闘の一時休止は24日午前7時(日本時間同日午後2時)から始まり、人質は24日から30日までの連日、段階的に解放されました。この期間に食料や燃料などのガザ地区への搬入も行われました。
戦闘の休止は2度にわたり計3日間延長されましたが、それが切れた12月1日朝、イスラエル軍はガザ地区全体でハマスとの戦闘を再開しました。2024年1月7日の時点で、ガザ地区での死者は2万2000人を超えたとみられます。
パレスチナとは
地中海とレバノン、シリア、ヨルダン、エジプトに囲まれた地域はパレスチナと呼ばれ、かつてはユダヤ教を信じるユダヤ人が住んでいました。しかし、2000年ほど前にローマ帝国により追放され、ユダヤ人は世界中に散らばって各地で迫害を受けるようになりました。19世紀以降にはパレスチナに移住するユダヤ人も多くなりましたが、パレスチナはすでに、主にイスラム教を信じるアラブ人(パレスチナ人)の住む土地になっていました。
そんななか、第一次世界大戦中のイギリスは戦争を有利に進めるため、敵国だったオスマン帝国(オスマントルコ)の支配下にあったアラブ人に対しては戦後にパレスチナを含む地域を独立させると約束しながら、一方ではユダヤ人に対してもパレスチナに民族的郷土を樹立させることを約束したのです(バルフォア宣言)。この矛盾する約束を果たすことは当然ながら不可能で、アラブ人に対する約束は一方的に破られ、今日に続くパレスチナ問題が生じる大きな原因となりました。
第二次世界大戦後の1947年には、国連がパレスチナをユダヤ地区、アラブ地区、エルサレム(国際管理地区)の三つに分割する決議を行いました。これに基づき、1948年にはユダヤ人の祖国イスラエルが建国されたのですが、その直後、このことに反発する周辺のアラブ諸国がイスラエルを攻撃しました。これが第一次中東戦争です。中東戦争は計4回起こり、1967年の第三次中東戦争ではイスラエルがヨルダン川西岸地区やガザ地区などを占領し、現在の枠組みができました。
しかし、そのままでは何も解決しないため、1993年にはヨルダン川西岸地区の一部とガザ地区で、パレスチナ人による自治を行うことが合意されました。1996年にはパレスチナ自治政府が発足したのですが、イスラエル側とパレスチナ側の両方に、相手に絶対に妥協したくないと考える人がいるため、武力衝突がたびたび起こってきました。パレスチナ側には、比較的穏健な「ファタハ」というグループと、イスラエルに妥協したくない強硬派の「ハマス」との対立がありました。2005年にイスラエル軍がガザ地区から撤退すると、2007年にはハマスがファタハをガザ地区から追放し、単独でガザ地区を支配するようになりました。それ以来、ハマスがイスラエルを攻撃すると、イスラエルが反撃し、ハマスの戦闘員ではない一般のパレスチナ人にも犠牲者が出るということが繰り返されてきたのです。ガザ地区の住民のすべてがハマスを支持しているわけではないにもかかわらずです。
一方、ヨルダン川西岸地区はファタハが主導するパレスチナ自治政府が統治しています。
補足しておくと
日本を含め多くの国は、パレスチナの地にユダヤ人の国とアラブ人の国が並存することが最も望ましい解決策だと考えています。しかし、イスラエルが首都だと主張するエルサレムの帰属は、対処が極めて難しい問題です。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教という三つの宗教の聖地とされているため、このうちのどれかがエルサレムを独占しようとすると紛争になってしまうのです。ところが、イスラエルはエルサレム全体を自分たちのものだと主張しているのに対し、パレスチナはエルサレムの一部を首都として正式な国家を建国することをめざしています。さらに、ハマスのようにイスラエルという国自体を認めたくない過激派もいるため、問題は一向に解決されず、流血が繰り返されているのです。
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