受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

そこが知りたい!

私立校・国立校とはどう違う? 適性検査の対策は?

 公立中高一貫校は、学校教育法の改正によって、1999年に制度化されました。それ以来、次々に開設され、現在では全国で100校以上設置されています(連携型を除く)。首都圏でも公立高校が一貫校に改組され、その数が増加してきました。難関大学への合格実績でも一定の成果を残している学校もあり、中学受験の選択肢の一つとして定着しています。ここでは、公立中高一貫校の特徴、入学者の選抜方法とその対策について紹介します。

難関大学への確かな合格実績
学費の安さが魅力の一つ

 公立中高一貫校の入学者選抜には、毎年多くの受検生が挑戦しています。現在、首都圏(1都3県)には全部で23の公立中高一貫校があります。

 安定した進学実績も魅力ですが、公立中高一貫校の魅力の一つは、学費の安さです。公立中高一貫校の場合、中学校に当たる最初の3年間は義務教育のため、授業料は無料です。経済的負担が軽く、私立と同じような中高一貫教育を受けることができるという点は、大きなメリットといえるでしょう。

 私立校を第一志望にしている受験生が、公立校を併願するケースも珍しくありません。また、私立校は受けず、公立中高一貫校を第一志望にして、もし不合格なら地元の公立中学に進学させるという方針のご家庭もあります。

 東京都には、中等教育学校と、高校募集のある併設型の学校がありました。しかし、併設型の5校では、2021年から2023年にかけて高校募集を停止し、附属中学校の募集定員が拡大されました。2021年度からは都立武蔵高等学校附属中と都立富士高等学校附属中、2022年度からは都立両国高等学校附属中と都立大泉高等学校附属中、2023年度からは都立白鷗高等学校附属中が移行しています。

 私立と同様、公立中高一貫校の人気に影響を及ぼすのは、難関大学への合格実績です。今春の東大への合格者数(浪人を含む)を見てみると、都立小石川中等教育学校が16名、都立南多摩中等教育学校が11名の合格者をそれぞれ輩出しています。このように、多くの公立中高一貫校が一定の合格実績を残しているため、今後も人気は続いていくと思われます。

首都圏1都3県の公立中高一貫校
(2024年度現在)

開校年 学校名
2003年 埼玉県立伊奈学園中学校(伊奈町)
2005年 都立白鷗高等学校附属中学校(台東区)
2006年 千代田区立九段中等教育学校(千代田区)
都立桜修館中等教育学校(目黒区)
都立小石川中等教育学校(文京区)
都立両国高等学校附属中学校(墨田区)
2007年 さいたま市立浦和中学校(さいたま市浦和区)
千葉市立稲毛高等学校附属中学校(千葉市美浜区)
※2022年度より千葉市立稲毛国際中等教育学校に移行
2008年 千葉県立千葉中学校(千葉市中央区)
都立立川国際中等教育学校(立川市)
都立武蔵高等学校附属中学校(武蔵野市)
2009年 神奈川県立相模原中等教育学校(相模原市南区)
神奈川県立平塚中等教育学校(平塚市)
2010年 都立大泉高等学校附属中学校(練馬区)
都立富士高等学校附属中学校(中野区)
都立三鷹中等教育学校(三鷹市)
都立南多摩中等教育学校(八王子市)
2012年 横浜市立南高等学校附属中学校(横浜市港南区)
2014年 川崎市立川崎高等学校附属中学校(川崎市川崎区)
2016年 千葉県立東葛飾中学校(柏市)
2017年 横浜市立横浜サイエンスフロンティア
高等学校附属中学校(横浜市鶴見区)
2019年 さいたま市立大宮国際中等教育学校
(さいたま市大宮区)
2021年 川口市立高等学校附属中学校(川口市)

首都圏1都3県の公立中高一貫校
 サピックスからの合格実績

学校名 開校年 22年 23年 24年
都立桜修館中等教育学校 2006年 15名 10名 17名
都立大泉高等学校附属中学校 2010年 2名 1名 1名
都立小石川中等教育学校 2006年 36名 51名 41名
都立立川国際中等教育学校 2008年 1名 0名 1名
都立白鷗高等学校附属中学校 2005年 0名 3名 4名
都立富士高等学校附属中学校 2010年 2名 5名 3名
都立三鷹中等教育学校 2010年 9名 4名 2名
都立南多摩中等教育学校 2010年 0名 1名 0名
都立武蔵高等学校附属中学校 2008年 15名 9名 6名
都立両国高等学校附属中学校 2006年 7名 3名 7名
千代田区立九段中等教育学校 2006年 16名 13名 8名
神奈川県立相模原中等教育学校 2009年 13名 5名 4名
神奈川県立平塚中等教育学校 2009年 0名 0名 0名
川崎市立川崎高等学校附属中学校 2014年 0名 0名 2名
横浜市立南高等学校附属中学校 2012年 9名 13名 4名
横浜市立横浜サイエンス
フロンティア高等学校附属中学校
2017年 9名 7名 5名
千葉県立千葉中学校 2008年 28名 26名 19名
千葉県立東葛飾中学校 2016年 11名 9名 13名
千葉市立稲毛国際中等教育学校 2007年 14名 16名 21名
埼玉県立伊奈学園中学校 2003年 0名 0名 1名
川口市立高等学校附属中学校 2021年 4名 1名 2名
さいたま市立浦和中学校 2007年 5名 6名 9名
さいたま市立大宮国際中等教育学校 2019年 3名 0名 2名
23校計 199名 183名 172名

学校ごとに打ち出された
特色のある取り組みに注目

 では、公立の中高一貫校は、実際にどのような教育を行っているのでしょうか。主な学校の教育方針や特色のある取り組みを見てみましょう。

 都立小石川中等教育学校や都立両国高等学校・同附属中などは、充実した国際理解教育が魅力といえます。海外での研修のほかに、留学生とのディスカッションなど国内での国際交流プログラムもあり、高い語学力とグローバルな視点が養われます。

 都立立川国際中等教育学校では、一般の生徒と帰国生・在京外国人生徒とが同じクラスで共に学んでいます。日常的に異文化理解を深め、カリキュラムでは英語を重点教科としています。2022年4月には附属小学校が開校。今後、附属小学校からも中等教育学校へ進学します。

 また、都立武蔵高等学校・同附属中や千代田区立九段中等教育学校は、6年間を通して、生徒のキャリアデザインを支援する態勢を整えているのが特徴です。「職場訪問・体験」「進路講演会」を行うなどして、中学生のうちから将来への意識や関心を高め、主体的に進路を選択するよう促しています。

 都立南多摩中等教育学校では、1年生(中1)は「地域調査」、2年生(中2)は「モノ語り」、3年生(中3)は「科学的検証」、4・5年生(高1・2)は「ライフワークプロジェクト」として、学年ごとにテーマを持ち、系統的なフィールドワーク(探究活動)を実践しています。

 日本の伝統文化を積極的に取り入れた教育を特徴とするのは、都立白鷗高等学校・同附属中です。中学の授業では地域を巡り、高校では地元の伝統的な行事に参加するなど、地域との連携により、伝統や文化に触れる貴重な機会を設けています。

 また、県立千葉中では、総合的な学習の時間に、実社会への共感力と社会貢献の志を育て、社会のなかで自己実現を遂げる意欲を高めるプロジェクトを実施しています。

 このように、公立校でも、中高一貫校は学校ごとに特色を打ち出しています。志望校を選ぶ際には、教育方針やカリキュラムなどをしっかり確認してください。

24年10月号「そこが知りたい!」シリーズ Vol.4:
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