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進学校 ▶ 慶應義塾普通部
平常心是道
Y.Yさん ●お子さんの名前 Iさん
1月24日。密かな期待を胸にスマホを覗き込んだ私は愕然とした。「不合格」?渋幕…偏差値65。息子の偏差値は64・7、合格圏である。自己採点も手応え有り。目を疑う結果に再度ログインを試みたが、無情にも変わらぬ文字列がそこに在った。泣き崩れる息子の横で、私は過去を振り返り戦慄した。「…調子に乗り過ぎた!」
遡ること約2週間、始まりは1月9日。初戦、西大和学園の合格を知り、息子が調子に乗り始めたのである。クラスの半数が受験勉強で欠席する中、息子は毎日登校し、友達と存分に遊び、帰宅後は昼寝、起きてテニスへ…という生活を満喫し始めた。完全に天狗である。そして迎えた市川入試。直前にサピックスの先生方にかけられた発破が効いたか、結果は合格…しかし、それが次なる問題の引き金となった。今度は母親の私が、2連勝を目前に調子に乗り始めたのだ。
平常心を失った私は、前泊ホテルをアップグレード。「某ホテルスタンダード14㎡」は、いつの間にか「某高級ホテルオーシャンビュー40㎡、和洋中贅沢ビュッフェと豪華シャトルバス送迎付き」に変容した。もはや、旅行である。さぁ、そうなると、日々の受験サポートで疲労困憊な私、魅力的な小旅行の誘惑に勝てるはずもない。「ねぇ、パパじゃなくて、ママが付いていってあげようか?」呆然とする家族をよそに、ウキウキと荷造りを始め、半ば強引にその役を奪い取った。当惑する息子を車に押し込み、高速道路を低速で走り、なんとか幕張に到着した時には、なんと真夜中の12時であった。グッタリした息子は、部屋に入るなりすぐに眠ってしまった。
1月22日、朝。カーテンを開けるとキラキラ輝くブルーオーシャン。朝食会場にて、ホテルの方から優しく声を掛けられる。口数少ない息子を横目に、上機嫌な私はこう言った。「合格してからまた来ますね!」息子を見遣ると、顔面蒼白であった。その後、息子は朝食にも殆ど手をつけず、シャトルバスの中でも無言で、バスを降りるや否や吸い込まれる様に校舎へ入って行った。お弁当も持たずに…。
その結果が、冒頭である。察するに、精神的ストレスにより、予期せぬエラーが生じたようだ。2月入試1週間前、リカバリーには相当の苦労を要した。しかし、サピックスの先生方の激励を受け、息子も徐々に落ち着きを取り戻した。私も、息子に精神的苦痛を与えたことを猛省し、以降は粛々と息子のサポートに徹した。
そして迎えた2月。一日で1年ずつ寿命が縮むような緊張感の中、なんとか最後まで駆け抜けた。不安で、何度涙を流したか分からない。だが蓋を開けてみれば、慶應、聖光、広尾(医進・サイエンス)を筆頭に、勿体無い程の結果であった。勝因は恐らく、息子の努力と諦めない心、家族の協力と信頼、そして何よりサピックス。素晴らしい教育システムを享受させていただいたこと、心から感謝申し上げる。最後に、今後受験に臨む方々へこの言葉を捧げ、結ばせていただく。「平常心是道」
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