さぴあ仕事カタログ

株式会社グーチョキパース
代表取締役
イラストレーター
石井 翔一朗さん
前のページでは、イラストレーターになる方法や、仕事の進め方などを紹介しました。ここでは、建築分野のイラストを専門に描いているイラストレーターの石井翔一朗さんに登場していただきます。会社勤めを経験してから、自身で会社を立ち上げて独立した石井さん。仕事の内容に加え、これまでの道のりについてもお聞きしました。
建物の完成予想図をイラストで作成
多彩なタッチを使い分ける
イラストレーターの石井翔一朗さんが会社を設立したのは、2023年のこと。それまでは、大手建築設計事務所の手描きパース部門に勤務していました。「パース」とは、建物の外観や内部がどのようになっているかがわかりやすくなるように立体的に描いた絵のことで、完成予想図として用いられます。遠近感をしっかり出すのが特徴で、実際にその空間を使っているイメージが伝わるように、人物に加えて家具をはじめとする物や風景なども描き込みます。
手描きのパースを制作する際、依頼主の要望によって、多彩なタッチ(画風)を使い分けられるのが石井さんの強み。水彩画、明るい印象でかわいらしく描いたもの、緻密に描き込んだものなど、さまざまなタッチの作品を手掛けています。手描きのほかに、コンピューター・グラフィック(CG)で写真のようにリアルに描くパースも制作するそうです。
石井さんは、タッチの出し手がいろいろあることをジャンケンの「グー・チョキ・パー」に見立て、それに「パース」ということばを掛けて、社名を「株式会社グーチョキパース」としました。「堅い印象の社名より、遊び心があるほうが、自分らしいと思ったのです」
仕事場は自宅の敷地の一角にあり、リラックスして仕事に取り組める雰囲気が感じられます。大きな画面のパソコンに向かってアルバイトのスタッフが作業をしているほか、リモートワーク(在宅ワーク)の人もいるとのこと。石井さんが建物を描き、ほかのスタッフは石井さんの指導の下で背景や車などを描き込む、といった分担制で仕事を進めています。


依頼主の要望をしっかり聞き
満足してもらうことを大切に
独立したきっかけについては、「新型コロナウイルスの感染が拡大したときに、考え方が変わりました」と話します。「リモートワークが当たり前になり、自分のビジネスを持つことが大切だと思うようになりました。そこで、妻と話し合って独立を決めたのです」。石井さんはSNSを活用して、仕事を依頼してくれる得意先を開拓しました。設計事務所や建設会社、不動産会社などで、以前勤務していた大手設計事務所も、今では得意先になっているそうです。
仕事をするうえで心がけているのは、「依頼主に満足してもらうことです」と石井さん。「打ち合わせの際にはしっかりメモを取り、どんなイラストを求めているのかを、話し方やしぐさからもくみ取ります」。やりがいを感じるのは、やはりイラストを納品して喜んでもらえたとき。「描いたイラストが世の中に出て、多くの人の目に触れ、高い評価を得られたときは特にうれしいですね」と、笑顔を見せます。




イラストを描くだけでなく
新しいビジネスにも挑戦
幼いころから絵を描くことや工作が好きで、小学生時代は漫画をまねして描くのが楽しかったという石井さん。絵を描く職業に就くことは、進学する高校を選ぶときに意識し始めました。そして、技術高校の工業デザイン科から美術大学のグラフィックデザイン学科に進み、その後、冒頭で紹介した大手建築設計事務所の手描きパース部門に就職したのです。
会社を設立してまだ1年半ほどですが、すでに新しい事業もスタートさせました。それは、手描きパース生成AIサービスの「エガクヨ」という事業です。石井さんのさまざまなタッチを学習した生成AIを活用したサービスで、依頼者が求めるパースのイメージをことばやラフで指示すると、生成AIが数分で好みのタッチの手描きパースや街のイラストを生成するというもの。「経営者としてビジネスを展開するのも楽しいので、今後もいろいろなことに挑戦していきたいです」と、石井さんは抱負を語ります。
小学生の皆さんには、こんなメッセージを送ってくれました。「好きなことをあきらめないで続けていくと、将来、楽しく仕事ができるようになると思います。イラストレーターになりたい人は、物事をよく観察して、『どうしてこうなるのだろう』と考え、本質をつかもうとする姿勢を大切にしてください」
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