さぴあ仕事カタログ
小学生の皆さんのなかには、絵を描くのが好きで、将来はそれを仕事にできたらいいなと思っている人もいるでしょう。絵を描くことを仕事にする職業には「イラストレーター」があります。実際にはどのようなことをしているのでしょうか。イラストレーターとして経験を積み、日本イラストレーター協会(JIA)の会長を務める蟹江隆広さんにお聞きしました。
イラストレーターは
どんな仕事をしているの?
日本イラストレーター協会(JIA)
会長 蟹江 隆広 さん
職業として「イラスト」を描く人のことを「イラストレーター」といいます。「イラスト」とは、「イラストレーション(illustration)」を省略したことばで、物事を説明する文章を補足したり、イメージを伝えたりするための絵や図、見た目を華やかにするための絵などのことです。
絵を描く職業には「画家」もあります。画家は自分の描きたい絵を自主的に描き、収入を得たいときは個展などで作品を販売します。それに対し、イラストレーターは、依頼主から発注を請けてから、要望に応じた絵を描くケースがほとんどです。そのため、発注者の意向をくみ取って、それをイラストで表現する能力が求められます。
イラストレーターが描くイラストは、ポスター・商品パッケージ・パンフレット・書籍・雑誌などといった印刷物(紙媒体)やウェブサイト(デジタル媒体)に掲載されたり、ゲームに使われたりします。それぞれ得意な画風があり、水彩画風が得意な人、漫画風が得意な人、精密に描き込んだものが得意な人、特徴を誇張した描き方をする人、かわいらしい絵を描く人など、さまざまなイラストレーターがいます。こうした画風を「タッチ」といいます。
イラストレーターにイラストを依頼するのは、主に出版物の編集者や広告などの紙面をデザインするグラフィックデザイナーなどです。まず、どんな媒体に使用するイラストか、どんなタッチのイラストをどんなサイズで使用するか、などを考えてイラストレーターを選びます。次に、描いてほしいイラストのシチュエーション(状況)を、たとえば「医者が患者に聴診器を当てているところを描いてください」というように指示します。一方、仕事を請けたイラストレーターは、だいたいの構図を決めるために「ラフ」という大まかに描いたイラストを作成します。ラフは鉛筆で描くことが多いのですが、初めからデジタルで制作する人もいます。ラフを依頼主に見せて、構図が決まったら、さらに詳しく描いた下描きを提出。それが許可を得られたら、着色したイラストを仕上げます。こうした手順が一般的ですが、構図が決まるまでに何度か修正したり、着色してから納品するまでに修正を依頼されたりすることもめずらしくありません。
近年では、イラストレーターが自主的に描いたオリジナルの作品を、イラスト販売のウェブサイトを通じて販売するケースも増えています。ただし、有名なイラストレーターでないと、なかなか思うようには売れないものです。
イラストレーターになるには?
イラストレーターになるために必要な資格はありません。仕事を得るには、作品を掲載するウェブサイトを作って宣伝したり、アーティスト紹介のウェブサイトに登録したりする方法が主流です。
しかし、いきなりイラストレーターだと名乗っても、仕事が得られるわけではありません。そこで、初めはイラスト制作会社やデザイン会社、ゲームの制作会社などにイラストレーターとして就職し、デザインや広告、印刷などの知識を身につけ、人脈をつくってからフリーランスとして独立するケースがよく見られます。ゲーム会社では、絵の実力があれば就職できるところもありますが、デザイン会社などは、デザイン専門学校や美術大学で学んだ人でないと就職できないことが多いようです。
イラストレーターに求められる資質は?
絵が上手なだけでなく、依頼主の要望を聞き取って、形にしていく能力が求められます。デザイナーや編集者とチームで仕事をすることが多いので、コミュニケーション能力や協調性も必要です。
また、デジタルでも、手描きでも、指定された形式のデータに加工してイラストを納品しなければなりません。それには、「Photoshop」や「Illustrator」などのソフトを使いこなす必要があります。
わたしは、小さいころは絵を描いてばかりいる子どもではなかったのですが、コンクールなどに出品して入賞すると、うれしかったことを覚えています。大学では機械工学を学んだため、メカニックなイラストが得意分野です。また、医学にも関心があり、その関連のイラストも多く手掛けてきました。
このように、絵を描くこと以外の興味・関心が個性になることは多いもの。ですから、イラストレーターになりたいと思う皆さんは、いろいろ勉強して、知識を広げるとよいでしょう。自分の絵を人に認めてもらえるように、たくさん描いてみてください。
▲中国の上海で開催された「JIA Illustration Award 2023」の受賞作品展
蟹江さんが1999年に設立したのが「日本イラストレーター協会」です。仕事を発注した会社の経営状態が苦しくなると、イラストレーターへの支払いが滞ることがあります。また、発注者のミスで完成したイラストが使用されなくなった場合でも、イラスト代が支払われないケースもあるそうです。そうしたトラブルに見舞われた際に、個人で仕事をしているイラストレーターが相談できる機関として設立したのです。
現在、日本イラストレーター協会では、イラストレーターに仕事を紹介しているほか、次のような世界的な公募展も主催しています。
◀▲協会のメンバーが集まり、作品を展示したギャラリーの前で記念撮影
- ●JIA イラストレーション・アワード
(JIA Illustration Award) - 世界中からオリジナルのイラストを公募し、まだ知られていないイラストレーターを世の中に送り出すために実施しているコンテスト。
- ●イラストレーター・オブ・ザ・イヤー
- その年に実際に仕事として納品したイラストを公募し、賞を与えるコンテスト。
- 「第71回 イラストレーター」:
- 1|2
◎学校関連リンク◎
◎人気コンテンツ◎