受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあ仕事カタログ

「公認会計士」 ってどんな仕事をするんですか?

◎回答者
センクサスグループ パートナー
公認会計士・税理士
坂本 亮さん

 前のページでは、「会計」や「監査」の仕事、公認会計士になるまでの道のり、さまざまな活躍場所などを説明しました。ここでは、大手監査法人で6年間の経験を積んだ後に、仲間と一緒に独立して、センクサスグループを創設した坂本亮さんに登場していただきます。仕事の内容ややりがいなどついてお聞きしました。

大手監査法人で経験を積み
公認会計士仲間と独立

会議室で顧客企業の担当者とミーティングをする坂本さん。グラフなどを提示して、わかりやすく説明します

 大学在学中に公認会計士試験に合格し、すぐに大手監査法人に入所した坂本亮さん。短答式試験の合格発表から論文式試験を受けるまでの間に、その監査法人の説明会に参加しており、すでに入所の意志を固めていたそうです。

 最初に配属されたのは大手企業の監査を担当するチーム。その4年後には、不動産ファンドにかかわる会社を担当するチームに異動しました。不動産ファンドとは、多くの投資家から資金を集めて不動産に投資し、その収益を出資額に応じて配分する仕組みのこと。坂本さんはそうした事業を手掛ける会社の監査や、ファンドの組み立てに関するアドバイスなどを担当したそうです。

 その監査法人に6年ほど勤務した後、坂本さんは考え方が近い公認会計士仲間と3人で独立。公認会計士事務所のセンクサスグループを立ち上げました。大手監査法人にずっと勤務し続ける公認会計士はあまり多くはないものの、6年で独立するのは早いほうだとのこと。その理由を次のように話します。

 「大手監査法人なら大きな仕事に携われますが、それは自分の力ではなく、大手監査法人だから受注できる仕事です。そうした仕事を組織の一員として続けていれば、お給料は上がりますが、自分の市場価値も上がるとは限らないと思ったのです」

会計や監査の仕事を通じて
「会社」を見る目も養われる

 センクサスグループが行う主な業務は、顧客企業の依頼に応じて決算書と税務申告書を作成し、関連各所へ提出すること。前半ページで説明したように、すべての会社は年に一度、決算書を作らなくてはならず、利益が出ていれば税金を支払う義務があるためです。また、会社の規模や業種によっては、公認会計士による決算書の監査が義務付けられているので、センクサスグループでも監査の仕事を請け負っています。ただし、監査は独立した第三者の立場から行うため、同じ会社から決算書の作成と監査の両方を引き受けることはできません。

 そのほかの仕事について、坂本さんは次のように説明します。「公認会計士は、決算書を作ったり、それをチェックしたりという仕事を通して、『会社』というものを見る目が養われます。したがって、M&A(会社がほかの会社を買ったり、合併したりすること)の際などに、その会社の中身を詳しく確認したいというニーズに応えるために公認会計士が選任され、決算書のチェックを中心とした会社調査を行う仕事もあるのです。さらに、自治体が発注先を選定する場合などに、その会社の内容を把握する必要が生じると、公認会計士が選ばれて、調査するという仕事もしています」

 独立当初は、顧客開拓の苦労もあったそうですが、会社と公認会計士事務所は「顧問契約」を結び、仕事を一度引き受けたら、長いお付き合いになるのが一般的です。新しい顧客は既存の顧客から紹介されることが多く、そのようなときに、坂本さんはやりがいを感じるそうです。「それは、お客さまから頼りにされていることが実感できる瞬間であり、今までの仕事が評価されているという証しでもあるからです」

(上)事務所の調書室(書庫)には、これまでに担当した会社の資料を手に取りやすいように並べて保管しています
(右)(下)パソコンでレポートを作成する坂本さん。監査の仕事で作成するレポートには監査報告書などがあり、顧客企業からの相談を受ける場合には、求めに応じて買収する企業の価値を調査したレポートなども作成するそうです

働く場所を自分で決められる職業
独立すれば定年もなく仕事を続けられる

 坂本さんは小学生のころ、お父さんの仕事の関係でインドネシアに3年間滞在。その間、勉強はあまりしていなかったのですが、5年生で帰国し、お母さんの勧めで中学受験のための塾に通い始めると、「競争心が目覚め、がんばれば順位が上がっていくのがうれしくなった」と言います。帰国当初、円の面積の計算式や分数の解き方もよくわからなかった算数は、その後、特に大きく伸びて、中学・高校時代には数学が一番の得意科目になりました。

 そんな坂本さんが公認会計士に興味を持ったきっかけは、高3で進路を決めるとき、さまざまな職業が紹介された冊子を読んだことでした。「わたしは、資格を取得して、自分の働く場所を自分で決められる職業に就こうと考えていました。公認会計士にとって、学んでおくと役立つ学問の一つに経済学があります。経済学部なら得意な数学でも受験できるので、めざしてみようと思いました」。実はそれまで理系の科目を選択していましたが、経済学部に入るために文系での受験に変更したのです。

 「公認会計士は、独立開業すれば定年もないので、わたしの年齢だと、この記事を読んでいる小学生の皆さんと一緒に仕事をする日が来る可能性もあります。それを思うと、とても楽しみです」と坂本さん。最後に、中学受験の先輩として、次のようなメッセージを送ってくれました。「公認会計士の仕事の対象は、『世の中にあるすべての会社』ですので、知っていて無駄になることは一つもありません。今、皆さんが向き合っている中学受験のための勉強も、絶対に役に立つはずです。これからも毎日、昨日の自分を少しでも超えられるようにがんばってください」

「第70回 公認会計士」:
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