さぴあ仕事カタログ
世の中にはさまざまな事業をしている会社がありますが、経営し続ける以上、どんな会社でも必ずしなければならないことがあります。その一つが「会計」です。会計に関連する資格のなかで、最高峰に位置付けられるのが「公認会計士」。どんな仕事をしていて、どうしたらなれるのでしょうか。日本公認会計士協会 東京会の渡邉りつ子さんと伊賀知子さんにお聞きしました。
公認会計士って
どんな仕事をしているの?
日本公認会計士協会 東京会
DE&I推進委員会
委員長 渡邉 りつ子 さん (左)
副委員長 伊賀 知子 さん (右)
会社は、株主をはじめとする投資家や、銀行、取引先などの関係者に、決算書を公開しなくてはなりません。決算書とは、1年間の経営成績(どれくらいもうけたか、あるいは損したか)を計算した書類や、財務状態(現金、商品、借金などがどれくらいあるか)などを記載した書類のこと。たとえるならば、会社の成績表のようなものです。
この決算書に間違いがないかどうかを調べることを「監査」といいます。監査の仕事は公認会計士だけができる独占業務となっています。
監査はなぜ必要なのでしょうか。会社には、作成した決算書の内容が正しいと説明する責任がありますが、みずから作った書類を正しいと証明するのは難しいものです。そこで、独立した第三者に、書類が正しいと証明してくれるよう依頼しなければなりません。この第三者が公認会計士です。書類の数字に間違いがあったり、うそがあったりすると、たくさんの人が損をすることもあります。そのため、監査には大きな責任が伴い、公認会計士には専門知識と正確さが求められます。
また、公認会計士は監査だけでなく、「会計」にかかわる幅広い仕事やアドバイスも行います。会計とは、会社や個人などが行う業務にかかわる収入と支出を決められた方法で算出して記録し、その結果として計算された収入と支出、借入金、資産などの金額をまとめた決算書を作成して、関係者に報告する仕事のことをいいます。
公認会計士になるには?
まず、国家資格である公認会計士試験に合格することが必要です。受験資格は特にないため、大学在学中に受験して合格する人も、社会人になってから専門的に学んで合格する人もいます。試験はかなり難しいので、公認会計士試験の予備校に通って勉強するのが一般的。合格までの勉強期間の目安は2~4年です。
公認会計士試験に合格した人は、次の三つの条件を満たすと、公認会計士の資格が与えられます。
(1) 業務補助等の期間が3年以上あること。 (2) 会計教育研修機構が実施する実務補習を受けること。 (3) 日本公認会計士協会による修了考査に合格すること。
公認会計士と名乗って業務を行うためには、公認会計士名簿に登録し、日本公認会計士協会に入会することが義務付けられています。また、公認会計士は、税理士登録をすると、税理士としても仕事ができますので、税金にまつわる手続き、税金に関するアドバイスも行えます。
公認会計士の活躍場所は?
公認会計士試験に合格した人は、最初に監査法人に就職するのが一般的です。前述したように、公認会計士の資格を取得するには、3年以上の業務補助の経験が必要だからです。「監査法人」とは、監査を行うために、公認会計士が集まった会社のこと。監査はチームを組んで行うことが必要なので、新人のうちは、そこで監査業務を補助する仕事などを経験します。その後には次のような道があります。
(1) そのまま監査法人に勤務/監査に加えて、顧客企業に対して会計やビジネスのアドバイスをすることもあります。 (2) 一般の会社に勤務/公認会計士の専門的な知識を生かし、経理部門で会計書類を作成したり、財務部門で予算の管理や資金調達、資金運用をしたりします。また、企業の取締役や監査役として活躍する人もいます。 (3) 独立開業/多様な業種・規模の中小企業などを得意先として、会計や監査の仕事を請け負ったり、経理や税金に関する相談に乗ってアドバイスをしたりします。
公認会計士に求められる資質は?
数字を扱う仕事ですが、さまざまな会社の代表の方などと会う機会が多いので、コミュニケーション能力や交渉力が必要です。また、監査はチームで行うため、良好な対人関係が築けることも大切です。仕事に取り組む姿勢としては、公正で、倫理観を持っていなければなりません。さらに、会計基準が改正されることもあるため、試験に合格した後も継続して勉強する姿勢が求められます。
グローバル化に伴って、近年では企業の海外進出や会計の国際化が進んでいます。それに対応するため、世界で通用する専門性と柔軟性を持ち合わせた公認会計士の活躍の場が広がっています。現在、会計士試験合格者に占める女性の割合は約22%ですが、男女の差がなく活躍できる仕事であり、国家資格のため、出産・子育ての後でも復帰しやすいという利点もあります。
公認会計士は難関の資格の一つで、試験は難しいのですが、中学受験を経験する皆さんなら、正しく努力すれば合格できると思います。将来、ぜひチャレンジしてもらいたいですね。
公認会計士の資格取得には、まず、公認会計士試験(短答式試験・論文式試験)に合格することが必要です。科目は、短答式(マークシート方式)が財務会計論・管理会計論・監査論・企業法の4科目、論文式が会計学・監査論・企業法・租税法および選択科目(経営学・経済学・民法・統計学のうち1科目を選択)の計5科目です。
短答式試験に合格してから受ける論文式試験が不合格の場合でも、その後2年間は短答式試験が免除されます。また、論文式試験で一部の科目のみ合格でも、その合格した科目については、2年間免除を受けられます。
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