受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあ仕事カタログ

「管理栄養士」 ってどんな 仕事をするんですか?

◎回答者
フジ産業株式会社
埼玉西武ライオンズ
若獅子寮事業所所属
管理栄養士
根本 風花さん

 前のページでは、栄養士・管理栄養士の仕事内容などについて紹介しました。ここでは、勤務している給食会社から埼玉西武ライオンズの若獅子寮に配属され、選手たちへの食事提供や食事指導などに携わる、管理栄養士の根本風花さんに登場していただきましょう。毎日の仕事の内容や、やりがいなどについてお聞きしました。

プロ野球選手に食事を提供し
その活躍を栄養面からサポート

 スポーツ選手が輝かしい活躍をするには、体づくりのための厳しいトレーニングと、それに見合った食事が必要です。世の中にはそうした分野の専門知識を生かして、選手をサポートする管理栄養士がいます。

 給食会社のフジ産業に所属する根本風花さんも、そんな管理栄養士の一人です。学校や社員食堂、福祉施設など、さまざまな分野の給食を手掛ける同社から、埼玉西武ライオンズの若獅子寮に配属されました。根本さんはフジ産業の社員として食事の提供をする傍ら、さらに球団の管理栄養士として、選手に対して栄養指導を行うなどの業務も担う“二刀流”なのです。

 若獅子寮で生活をしているのは、入団1〜4年目の若手選手たち。根本さんは選手に提供する食事の献立のチェックや、栄養バランスの調整、選手への栄養指導を行うほか、1軍選手が試合前後にとる食事のケータリングなどにも携わっています。実際に調理をする調理師やパートの方々を取りまとめるのも、大切な役割です。

 「食事を選ぶのは選手自身です。ここでの管理栄養士の使命は、選手が最大限の力を出せるように、食事の選択肢をいかに充実させるかを考えることだと思っています。また、食事は栄養をとるだけでなく、おいしくて楽しく食べられることも大切です。プロスポーツは緊張感に満ちた世界なので、体だけでなく心も満足させられるような食事時間を提供したいと思っています」

選手の近くで仕事をして
チームみんなで喜びを分かち合える

 根本さんの勤務パターンは3種類。食事の提供に合わせて動く早番・遅番の日と、球団の管理栄養士として選手と一緒に行動する日とがあります。早番の日は6時30分に出勤して朝食を提供し、納品される食品の受け取りなどをします。昼食の提供を終えた後は、夕方近くまで事務作業をして終了です。遅番の日の出勤時刻は12時。隣接するドーム球場で埼玉西武ライオンズのホームゲームがある日は、1時間くらいかけて試合前の食事のケータリングのために料理と道具を準備します。午後2時ごろには食事会場へ向けて出発。試合後にも希望した選手にお弁当を提供するので、その準備もしなければなりません。勤務は夜9時までとなっていますが、試合の状況次第で遅くなる日もあるそうです。

 一方、球団の管理栄養士としての仕事をする日は、試合時間に合わせて出勤し、選手と一緒にグラウンドに出て、選手の表情やトレーニング内容などを見ます。その後、食事会場でポップを書いたり、食事をしにきた選手に対して栄養指導を行ったりします。そして試合中には、ベンチ裏での事務作業も欠かせません。また、チームが地方に遠征するときは同行することも。さらに、球団が行っている血液検査の結果を見ながら選手にアドバイスするなど、健康管理にもかかわります。

 「選手の近くでお仕事ができること、そして選手やスタッフと喜びを分かち合えることは、いちばんのやりがいです。ベンチ裏で仕事をする日は、選手の誰かがホームランを打つとみんなで盛り上がりますし、チームが勝ったときはハイタッチして一日を終えられます。選手からあふれ出るパワーとエネルギーは、わたし自身のがんばりの源でもあるのです。『おいしい』『いつもありがとう』などと、感謝のことばをもらったときは、とてもうれしい気持ちになりますね」

※ポップ…メニューの内容をわかりやすく説明した掲示物

さっぴー
寮の食堂では、麺類、丼もののほか、おかず3種類、サラダ、フルーツなどを毎食提供しています。選手に食べてほしいおすすめメニューにはポップも用意。外国人選手のための英語版のポップもあります
さっぴー 選手の食事量や経費などを管理したり、キャンプ先のホテルの献立案に改善点を書き込んだりもします。 根本さんが考案した、スタッフたちからの応援メッセージカード。「選手たちががんばれるように、試合前の食事のトレーに貼って提供しました」 調理や配膳作業も行います

無理な減量で食事の大切さを痛感
選手から信頼されるパートナーに

 子どものころから運動が好きで、小学生のときは水泳やフットベース、中学ではソフトボールと、いろいろなスポーツに挑戦してきた根本さん。高校の陸上部では、7種競技の選手として活躍しました。しかし、速く走るために減量しようと無理な食事制限をした結果、貧血を起こしてしまい、ふだんは負けない選手に負けてしまったという苦い経験もあるそうです。そのときに食事の大切さを痛感し、管理栄養士をめざす大きなきっかけになりました。

 高校卒業後は女子栄養大学に進学し、スポーツ栄養に特化した研究室で、駅伝などで活躍する陸上選手の食事について学びました。「当時お世話になった先生からいただいた『選手はスポーツをするために、人生をかけてここにいる』ということばは、今でもポリシーとして胸に刻んでいます」と振り返る根本さん。「予定が激変し、たくさんの情報が混在することも多い仕事ですが、どんな状況でもまずはそれを受け入れて、そのうえで何が最適かを冷静に判断することを常に意識しています。管理栄養士として良いコーチであると同時に、選手に心から寄り添って、お互いに信頼し合えるパートナーでもありたいですね」と、笑顔で話してくれました。

「第65回 管理栄養士」:
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