さぴあ職場見聞録
株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ
第1レーベルグループ
ソニー・ミュージックレコーズ第五制作部
A&R
岸田 夏実さん
前半ページでは、音楽を届ける仕事の内容や、レコード会社の役割を紹介しました。ここでは、ソニー・ミュージックレーベルズの「ソニー・ミュージックレコーズ」というレーベルに所属し、そのA&Rを担当している岸田夏実さんにご登場いただきます。どんな仕事をしていて、どういうときにやりがいを感じているのでしょうか。
株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ
第1レーベルグループ
ソニー・ミュージックレコーズ第五制作部
A&R
岸田 夏実さん
Qどんな仕事をしているの?
2018年に高校の軽音楽部で結成された3ピースロックバンド。2021年に1stシングルの『ロングスカートは靡いて』をリリース。2023年4月にリリースした『ファジーネーブル』がSNSで話題となり、音楽チャートでも人気を集めました
岸田 入社時はソニー・ミュージックレーベルズではなく、別のグループ会社で、CDショップなどに対する営業を2年間経験しました。その後、ソニー・ミュージックレーベルズに異動し、プロモーター(宣伝)という職種を3年間担当。現在は、A&R(アーティスト・アンド・レパートリー)という職種になって5年目です。
プロモーターは、テレビ・ラジオ・新聞などのメディアに対し、アーティストとその楽曲を宣伝する役割を担っています。各プロモーターは、担当するメディア(テレビ局やラジオ局、出版社など)が決まっており、そのメディアを通してアーティストや楽曲の魅力を世の中に広めていくため、日々プロモーションに励みます。
一方、A&Rは、その発掘から楽曲制作、宣伝まで、アーティストに関する幅広い仕事をコーディネート。アーティストが生み出す楽曲のヒットに向けて、多角的なプランニングを行います。先ほど説明したプロモーターの仕事は、A&Rが立てたプランに寄り添い、メディアに対して直接はたらきかけることです。
A&Rが受け持つアーティストの数は人によってさまざまですが、わたしは現在、2組のアーティストを担当。A&Rの役割は大きく二つに分けると、“制作(つくる)”と“宣伝(広める)”があり、私は主に宣伝を担っています。そのため、わたしが担当するアーティストは、楽曲の制作を担うA&Rと二人体制です。
A&Rは、アーティストの最も近くにいるレコード会社のスタッフで、本人とマネージャーと三人四脚で仕事をしているイメージです。アーティスト自身の長期目標を立てて、その目標に近づけるよう、社内の関係部署に協力してもらいます。CDリリースや音源配信の準備、ミュージックビデオの制作など、軸となる業務もありつつ、宣伝業務では、SNSを使ったプロモーションや、メディアへの露出などをプランニングし、関係部署と相談しながら進めていきます。
たとえば、アーティストがテレビの音楽番組に出演する際には、下準備や当日の細かなタイムスケジュールの管理などをプロモーターと一緒に行います。ライブやフェスの場合は、パフォーマンスする楽曲(セットリスト)を一緒に決めたり、会場の準備に携わったりもします。
2018年に高校の軽音楽部で結成された3ピースロックバンド。2021年に1stシングルの『ロングスカートは靡いて』をリリース。2023年4月にリリースした『ファジーネーブル』がSNSで話題となり、音楽チャートでも人気を集めました
Q仕事のやりがいは?
岸田 アーティストとそのチームで立てた目標に近づいたときに、最もやりがいを感じます。目標というのは、たとえば「日本武道館でライブをする」「NHK紅白歌合戦に出場する」など、アーティストによってさまざまですが、そうしたすばらしい景色を一緒に見せてもらえたときは、本当に感動します。ライブの最中に、アーティストの思いがお客さんに届いているなと感じられて、自然に涙が出てしまうこともあるくらいです。
アーティストがテレビの音楽番組に出演したり、ライブやレコーディングをしたりする日は、岸田さんがアーティストの現場へ帯同。アーティストの稼働がない日の仕事は、デスクワークが中心です。メールのチェックや、打ち合わせの資料作り、社内外との打ち合わせなどを行います。
Qどうしてレコード会社に入ったの?
岸田 わたしはピアノなどの楽器を習ったことはなく、自分でバンドを組んだこともありません。小学生時代はアイドル、中学生以降はバンドが好きになり、高校・大学時代はライブハウスにも足を運ぶようになりました。
担当アーティストのライブ映像を撮影し、それをSNSにアップして、接点を広げるのも岸田さんの大切な仕事。「スタビライザー」という手振れを補正する道具をスマートフォンに取り付けて撮影します
そんなふうに、音楽に関してはファンとして楽しんできただけですから、就職活動でもレコード会社という選択肢はまったく思いつかず、ほかの業種を中心に受けていたのです。そんなある日、母がこんなことを教えてくれました。わたしが小学生のころ、ソニーミュージックの名物社員たちが紹介されたテレビのバラエティー番組を見て、「将来、この会社で働きたい」と言っていたのだそうです。そのことを思い出したわたしは、音楽が好きだったということもあり、レコード会社のなかでソニーミュージックだけを記念受験しました。だからこそ、面接でも肩の力を抜いてありのままの自分を出すことができたようで、それが功を奏して採用されました。
わたしは子どものころ、「勉強することは人生の色鉛筆を増やしていくことだよ」と母によく言われていました。「将来の選択肢を増やすために、いろいろなことを学んで準備しておきなさい」というような意味です。今の仕事には、学校の勉強だけでなく、人とのかかわり方など、子どものころから学んできた多くのことが役立っていると思います。
担当アーティストのライブ映像を撮影し、それをSNSにアップして、接点を広げるのも岸田さんの大切な仕事。「スタビライザー」という手振れを補正する道具をスマートフォンに取り付けて撮影します
- 第39回/レコード会社:
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