さぴあ職場見聞録
公益財団法人
日本道路交通情報センター
東京事務所 九段センター
末永 さくらさん
前半ページでは、日本で唯一の道路交通情報機関である日本道路交通情報センター(JARTIC)の主な業務や、社会に対して担っている役割などについて紹介しました。後半ページでは、ラジオやテレビを通じてアナウンスを行っている道路交通情報キャスターの末永さくらさんにご登場いただき、仕事の内容や、やりがいなどをお聞きしました。
公益財団法人
日本道路交通情報センター
東京事務所 九段センター
末永 さくらさん
Qどんな仕事をしているの?
九段センターには、ラジオ放送のブースが九つあります。ラジオで流れる交通情報は、これらのブースと各局を専用回線でつないで放送されるのです。ブース内のデスクには、マイク、ラジオ局と打ち合わせをするための電話、時計などが設置されています
末永 わたしが所属している九段センターは、首都圏・関東甲信越地区の民間放送局、および47都道府県に向けたNHKの放送を通じて道路交通情報の提供を担当する拠点です。31人中22人の職員が、わたしと同様に、道路交通情報のアナウンスに関連した仕事を担当しています。
九段センターは24時間体制を取っているので、早番だけでも複数のパターンがあるローテーションにより勤務しています。ラジオでの放送は、放送局ごとに担当者が決まっているわけではなく、日によっていろいろな放送局、いろいろな時間帯の放送を1日に10本程度担当します。そのため、出勤するとすぐに、どの放送を誰が担当するかをまとめた一覧表で、その日に自分が担当する放送を確認します。
ラジオ放送に臨む際は、パソコンで情報を確認したり、NEXCO(ネクスコ)各社などに問い合わせたりして、時間の許すかぎり最新の情報を収集します。放送局ごとに、情報を提供する道路のエリアなどの取り決めがあるので、伝える情報はそれに合わせて選ぶことになります。そして、アナウンスする原稿を書き上げたら、その情報に間違いがないかなどを、一緒に勤務している人にも確認してもらいます。
放送ブースに入ってスタンバイするのは、放送時間の10分ほど前。直前に放送局と電話で打ち合わせをして、そのときに「何十秒でお願いします」「何時何分ごろから開始してください」といった指示をもらいます。しかし、開始時刻が決まっておらず、終える時刻だけが伝えられていて、直前の電話で「あと1分後に始まります」などと指示される場合もあるので、臨機応変に対応することが求められます。
わたしたちの仕事の繁忙期は、年末年始、ゴールデンウィーク、お盆休みなどの大型連休になります。この期間は、車で移動する人が増えるので事故情報も増加しますし、道路交通情報の放送本数もテレビの取材も多くなるので、九段センターでは勤務するメンバーの数を増やして対応しています。また、降雪や台風の接近が予想されている場合は、早めに出勤して準備を始めます。
九段センターには、ラジオ放送のブースが九つあります。ラジオで流れる交通情報は、これらのブースと各局を専用回線でつないで放送されるのです。ブース内のデスクには、マイク、ラジオ局と打ち合わせをするための電話、時計などが設置されています
Q仕事のやりがいは?
末永 道路交通情報のアナウンスは、一本一本の放送が緊張の連続で気が抜けません。放送が終わって録音したものを聞き返したときに、「うまく話せていたな」と思えると、達成感があります。
ラジオでの道路交通情報は21時58分に最後の放送が終わるので、夜勤の日は、それ以降の時間帯に一般の方々からの電話での問い合わせに応対しています。電話では、日本全国の道路状況についてのお問い合わせが入ります。ラジオやホームページで確認した通行止めにどう対処したらよいか、渋滞の有無、目的地までの最速ルートや所要時間などのお問い合わせに、デスクのパソコンの画面で状況を確認しながら答えます。困っているドライバーさんと直接やりとりをして、「ありがとう。そのルートのほうが早く着けるんだね」「知らなかった。助かったよ」などといった声をいただけたときは、とてもうれしくなります。
アナウンスする原稿を書くために、デスクのパソコンに向かって最新の情報を収集。ラジオの放送ブースに入ったら、声を出して何度も原稿の下読みをします。
また、NHKのテレビ番組『おはよう日本』のなかで6時55分から放送される交通情報のコーナーにも出演し、パネルを使って道路交通情報を伝えています。九段センターにはその放送専用の部屋があり、設置されたカメラでNHKから自動で撮影しています。
Qどうして道路交通情報キャスターになったの?
放送中は、分単位で時間を管理するためのデジタル時計と、秒単位で時間を管理するためのアナログ時計を併用。アナログ時計はわざと1秒進めています。伝える情報を箇条書きにした原稿を用意し、放送ではそれを構文に当てはめて読むそうです。『放送の手引』は、道路交通情報のわかりやすい伝え方などが書かれたJARTIC独自の教科書です
末永 小さいころから物怖じせずに人前で話せるタイプで、国語の音読やグループでの発表の際は、自分から率先して話していました。また、わが家では、朝はラジオを聴きながら身支度するのが習慣だったので、ラジオから流れる道路交通情報に親しみがあり、それをアナウンスする女性の声にはあこがれもありました。
大学時代は弓道部で活動し、学生コーチとして選手や後輩たちをサポートするなど、弓道部全体を支える役割も経験しました。わたしはそのようにみんなを支えていくことにやりがいを感じていたので、就職活動のときに、人と競争するより、多くの人を支えるような仕事がしたいと思ったのです。そこで、さまざまな職業のなかから思いついたのが、子どものころからラジオで聴いていた道路交通情報を伝える仕事でした。それは、道路という多くの人が使うインフラを情報の面から支える役割だからです。
この仕事をめざすようになってから、ラジオの道路交通情報を録音し、その文章を書き起こして自分で言ってみる練習をしました。また、地理に詳しくなかったので、勉強のために交通情報によく出てくる場所に実際に行ってみました。当時はまだ運転免許を持っていなかったので、両親に頼んで車の助手席に乗せてもらい、首都高速道路や中央自動車道を実際に走りながらカーナビで現在地を確認して、自分の肌で感じ取って覚えました。
わたしが心がけているのは、ドライバーさんの知りたい最新情報を、わかりやすく簡潔に伝えることです。運転中はいろいろなところに注意しなければならないので、いかに耳に入りやすく伝えられるかを大切にしています。今後の目標は、道路交通情報をもっと上手にアナウンスできるようになることと、もっと道路の知識をつけることです。新しく開通する道路もありますし、高速道路のインターチェンジの名称が変わることもあるので、電話でのお問い合わせにもお待たせせずに答えられるよう、日々、勉強していきたいです。
放送中は、分単位で時間を管理するためのデジタル時計と、秒単位で時間を管理するためのアナログ時計を併用。アナログ時計はわざと1秒進めています。伝える情報を箇条書きにした原稿を用意し、放送ではそれを構文に当てはめて読むそうです。『放送の手引』は、道路交通情報のわかりやすい伝え方などが書かれたJARTIC独自の教科書です
- 第38回/道路交通情報機関:
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