受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあ職場見聞録

さぴあ職場見聞録 第36回/動物園

 たくさんの動物たちと出合える動物園は、小学生の皆さんにもおなじみの施設です。学校の遠足や家族でのお出掛けなどでも、訪れたことがある人は多いでしょう。今回は、広い放飼場に放し飼い形式で動物を展示している多摩動物公園を訪問。動物園で働く人たちがどのような仕事をしているのか、教育普及係の香坂美和さんにお聞きしました。

楽しみながら学べる施設として
世界中の動物たちの魅力を伝える

アフリカ園

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昆虫園

オーストラリア園

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アジア園

 多摩動物公園では、可能なかぎり動物の自由な姿を見てもらうため、柵の代わりに壕で仕切るようにし、広い放飼場に放し飼い形式で展示しています。敷地は世界でも屈指の広さで、東京ドーム11.2個分(50ha超)。「アジア園」「オーストラリア園」「アフリカ園」「昆虫園」という四つのエリアに分け、野生で群れをつくる動物は、なるべく群れで飼育するようにしています。ここで飼育している動物は、昆虫を含めて約300種。動物園内に「昆虫園」があるのは日本で多摩動物公園だけなので、「アリからゾウまで出会えるところ」というキャッチフレーズを使っています

日本で最初の「柵のない動物園」

多摩動物公園
教育普及課教育普及係 係長
香坂 美和 さん

 動物園は、「種の保存」「環境教育」「調査研究」「レクリエーション」という四つの役割を担っている施設です。多摩動物公園は、日本初の「柵がない」ことを観覧の基本とした動物園で、1958(昭和33)年に誕生。かつては東京都が運営していましたが、現在は公の施設を民間事業者などに管理してもらう指定管理者制度により、公益財団法人東京動物園協会が運営しています。

飼育係のほかにもいろいろな仕事が

 多摩動物公園では、現在約140人の正職員と嘱託職員が働いています。次のような部署があります。

●飼育展示係…以前は「飼育係」と呼んでいましたが、動物の世話だけにとどまらず、見せ方を考えるところまでが仕事なので、現在は「飼育展示係」という名称にしている動物園が増えています。

●動物病院係(獣医)…動物のけがや病気の治療・予防、他園から来た動物の感染症などを検査する検疫を担当。

●調整係…動物の個体の情報管理(戸籍のようなものを作って動物1頭1頭を管理)、飼料(肉・野菜・ペレット※1など)の調達、法律関係の手続きなどを担当。

●教育普及係…企画展などイベントの企画・実施、広報、校外学習などで来園する学校団体への対応、ホームページの情報更新などを担当。ガイドツアーを実施する動物解説員も含まれます。

●施設係…園内のさまざまな施設の管理を担当。たとえば、植え込まれた植物の管理や、施設の修理、水道や電気関係のメンテナンスなどです。

●案内係…窓口でのチケット販売、落とし物や迷子など来園者への対応。

●販売係…売店・レストランの運営。イベントに合わせたオリジナル商品の開発。

 以上のなかで、獣医以外は、動物園での仕事に就くのに必須の資格はありません。ただ、飼育展示係は、大学の農学部や理学部で生物について学んできた人、動物関係の専門学校を卒業した人が多いです。また、動物園も博物館の相当施設なので、教育普及係を中心に学芸員※2の有資格者もいます。

 動物が好きなことは大前提ですが、それだけでは務まらないのがこの仕事。なぜなら、動物園で飼育しているのは野生動物がほとんどで、ペットではないからです。特に飼育展示係は、動物と一定の距離を保ちながら、少しの変化にも気づくスキルが必要です。また、「生き物のことをみんなに知ってもらいたい」という気持ちや、周りの人の考えを理解し、協力する姿勢が重要になります。

※1 ペレット…動物に必要な栄養を粉末にしたものを粒状に固めた餌

※2 学芸員…博物館に勤務して、資料の収集・管理、調査研究などを行う職員。国家資格を取得する必要がある

飼育展示係の仕事

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 飼育展示係は、動物園で働く人と聞いてまっ先に思い浮かべる職種。餌やり、放飼場や寝室内の掃除といった動物の世話だけでなく、来園者向けに担当動物のトーク、解説パネルの考案、テレビや雑誌の取材対応など、多くの人たちに動物の魅力を楽しく伝えるための幅広い仕事を担当します。また、希少動物の繁殖にも取り組み、ゾウや類人猿といった動物の担当の場合は、トレーニングもします。さらに休園日には、キリンなどの大きな動物を他園に移動させる搬出作業など、来園者がいないときしかできない仕事もあります。

第36回/動物園:
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