さぴあ職場見聞録
国立国会図書館
調査及び立法考査局
文教科学技術課
調査員 和田 希さん
国立国会図書館では、東京本館、関西館、国際子ども図書館を合わせて約890人の職員が働いています。ここでは、東京本館に勤務し、調査員として国会議員の調べものを手伝っている和田希さんに、担当している仕事の内容や、やりがいなどについてお聞きしました。
国立国会図書館
調査及び立法考査局
文教科学技術課
調査員
和田 希さん
Qどんな仕事をしているの?
和田 わたしが所属している「調査及び立法考査局」は、国会議員の調べものを手伝う部署です。国会議員の仕事は、国会で話し合って法律を作ることや、行政をチェックすることですが、そのとき、一人では調べきれないほど多くの知識が必要になります。そのため、その調べものをわたしたちがサポートしているのです。
調査及び立法考査局は、経済産業課、農林環境課などというように、さまざまな課に分かれています。そのなかでわたしが所属する文教科学技術課では、教育や科学技術、スポーツ、文化といった分野を担当しています。国会議員からの調査の依頼は、まずその受け付けの窓口となる部署に来てから、担当する課の調査員が決められます。わたしの場合、学校教育のなかでも、高校までの教育に関する調べものを担当することが多いです。
和田さんの一日は、新聞を読むことからスタート。出勤すると10~20分かけて、全国紙と東京の地方紙、そして教育・文化の専門紙にひと通り目を通し、担当している分野に関係のある記事が出ていないかをチェックします。調査員は、世の中で問題となっていることを常に把握しておかなければならないからです。
必要な資料を探す手段はいろいろありますが、最もよく利用するのは、国立国会図書館の蔵書を、インターネットを通じて検索できる「国立国会図書館オンライン」です。これを使って、調べたい情報が書いてありそうなものを見つけたら、実際に書庫に行ってその本や雑誌を取り出し、内容を確認します。また、新聞記事のデータベースを検索したり、新聞記事のスクラップを活用したりもします。
膨大な資料から必要な情報をうまく探すには、たとえば、「このテーマなら、この有識者が第一人者だ」というような知識があると見つけやすいです。仕事をしながら勉強していくうちに、そのような知識はだんだんとついてきます。
以上のように調べてそろえた資料は、該当部分に印をつけたり、要点をまとめた報告書を作成したりして、依頼のあった議員に届けられます。そのとき、直接会って説明することも珍しくありません。依頼を受けてから報告するまでの期間は、急ぎの調査で2時間程度、長くても1~2週間です。国会が開かれている時期はこうした依頼調査の仕事で忙しいのですが、それ以外の時期には国政課題に関する調査研究も行います。この国政課題に関する調査研究は、これから国会で話し合われそうなことを予測して行う調査のこと。その結果はレポートにまとめ、刊行物として国会議員などに提供しています。
Qなぜ国立国会図書館の職員になろうと思ったの?
和田 子どものころから近所の図書館に行くことはよくありましたが、就職先として国立国会図書館を考えたのは、大学生になって就職活動を始めてからです。進学した一橋大学では、社会学部で教育社会学を専攻し、授業やゼミで社会調査をする機会がありました。そのときに、過去の研究文献を読んだり、アンケート調査を経験したりして、「調査っておもしろい」と思ったのです。ちょうど大学の先輩が調査員をしていたこともあり、この仕事を知って興味を持ちました。
Q仕事で大切にしていることは?
和田 国会議員からの依頼調査では、相手の考えをよく聞くようにしています。たとえばの話ですが、受験について調べる場合でも、相手が知りたいのは中学受験なのか大学受験なのか、それとも受験全体なのかで調べる内容は違ってきますよね。コミュニケーションをしっかり取って、相手の関心がどこにあるのかを探っていくと、より役立つ資料を届けられるようになるのです。また、職員同士のコミュニケーションも大切です。複数の分野にまたがる調査では、ほかの課と協力して調査を行うこともあるので、役割分担などをしっかり話し合ったうえで取り組むほうが、より効率良く仕事を進められます。
国会中継や国会の会議録を見ると、自分が調べた資料が国会で使われたとわかることがありますが、そのときはうれしいものです。国会議員の方から「ありがとう」と言われたときは、「がんばって良かった!」と思います。こうしたやりがいのある仕事ですが、難しい質問に答えるときは大変です。それを乗り切るためには、経験のある先輩に相談したり、書庫に行って資料を片っ端から見たりして、何とか役立てるように努力することが求められます。
Q日ごろからどんな勉強をしているの?
和田 定期的に届く専門的な雑誌を読むほか、どんな本が新たに発行されたかのチェックもしています。また、国立国会図書館では職員向けのいろいろな研修があります。データベースの使い方などの勉強会や、大学教授から講義を受ける機会があるほか、先進的な取り組みをしている自治体から話を聞くための出張もあります。さらに、調査で利用する資料は日本語や英語だけではなく、フランス語やドイツ語などで書かれたものもあるため、外国語の研修も用意されています。
国立国会図書館の職員の多くは学ぶことが好きですね。担当する調査のテーマによっては、一からの勉強が必要な場合もあります。この仕事に興味を持ってくれた小学生の皆さんは、いろいろなことに好奇心を持って学び続けてくださいね。
東京都台東区上野公園にある国際子ども図書館は、児童書専門の図書館。常設展示室「児童書ギャラリー」をはじめ、小学生以下向けの「子どものへや」「世界を知るへや」、中高生向けの「調べものの部屋」、児童書の展示会を開催する「本のミュージアム」などがあります。東京本館と関西館は原則18歳以上でないと入れませんが、国際子ども図書館は誰でも利用可能です。
国立国会図書館キッズページ ▶︎ https://www.kodomo.go.jp/kids/
- 第32回/国立国会図書館:
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