この人に聞く
独自に展開する「有尾類研究」を通して
“女性科学者を育成する拠点”へ
広野 外部の専門家による支援の下、「山脇有尾類研究所」を設置しているのも他校にはない試みですね。
西川 有尾類と呼ばれるイモリやサンショウウオは、最先端の再生医療で注目されている生き物です。その生態や再生能力に着目した教育や環境学習を中高に取り入れる目的で、有尾類研究の第一人者を迎え、2年前に研究所を発足させました。
有尾類は生徒の探究活動の題材としても生かされており、サイエンスコース1期生の「日本のイモリ属の繁殖生体はどのように獲得されたか?」という研究は、JSEC(高校生・高専生科学技術チャレンジ)に入賞。ISEF(国際学生科学技術フェア)の日本代表にも選ばれました。
広野 一般的に女子というと、それらの生き物に苦手意識を持っているイメージがあります。そうしたバイアスを払拭する意味でも画期的な取り組みですね。
西川 はい。生徒たちはイモリやサンショウウオを「かわいい」と、かいがいしく世話をしていますし、見学に来てくれた小学生も興味津々に見入っています。わたしたちはこの有尾類研究を“女性科学者を育成する拠点に”という、SSHの目標を実現する場にしたいと考えています。今後は、校内にビオトープを造成し、本校の生徒だけではなく他校、とりわけ女子校の生徒に、生命科学研究のフィールドとして活用してもらい、交流していきたいと思っています。
広野 さて、2025年度から「理数探究入試」を導入されました。この詳しい内容について教えてください。
髙村 本校は4年ほど前に「探究サイエンス入試」という実験レポート型の試験を実施していましたが、その内容をブラッシュアップし、ペーパーテスト形式にまとめたものが「理数探究入試」です。数理的な思考力を測る「算数」(40分・50点)と、生活のなかの科学について問う「理科」(40分・50点)の2科で構成しています。
広野 理数探究入試で入学された生徒に共通する特徴はありますか。
髙村 自分の知らないことや不思議な現象に対して、好奇心が強く行動力のある生徒が多いですね。東京都が主催する「中学生科学コンテスト」という大会があるのですが、「よかったら出てみない?」と声を掛けたところ、ほとんどの生徒が手を挙げて参加してくれました。物怖じせずに、新しいことにどんどんチャレンジする姿勢はすばらしいですね。
西川 理数探究入試の合格者には、入学前にポスター課題を課しています。そのポスター発表会では、「全国の子どもたちにプレゼントを届けるには、サンタクロースは何人必要か」など、ユニークな研究ばかりで驚かされました。発表する姿も堂々としていて、そんな生徒たちがどのように成長していくのか、今からとても楽しみです。
3月に実施される学術的文化祭「YSE(山脇サイエンスEXPO)」。写真は講堂での全体発表の様子です
校内の有尾類研究所では、イモリやサンショウウオなどの飼育・研究も行われています
多様性を求め多彩な入試を実施
個性豊かな生徒が培う学び合いの土壌
学内にサンショウウオが生息できるビオトープを造成するプロジェクトも進行中。事前調査や維持管理する過程も環境学習の一環となります
広野 さて、貴校は理数探究入試のみならず、英語入試、国語1科・算数1科入試と、さまざまな入試形態を取り入れています。その狙いについて教えてください。
西川 いろいろな「得意」を持った生徒たちが集まり、多様性を認め合う風土をつくることです。さまざまな個性が混じり合うことによって、「この分野は○○さんが得意だから、わからないところを質問してみよう」というような、生徒同士の学び合いが生まれることを期待しています。生徒が「好き」や「得意」を生かして自己実現と社会貢献を果たそうとする思いを、わたしたちは「志」と呼び、育んでいます。これからも、さまざまな角度から子どもたちの力を評価し、生徒一人ひとりの「志」の伸長に力を入れていきたいですね。
髙村 それぞれが強みを持って入学することで、ある教科では教える側に、ほかの教科では教えられる側にと、生徒それぞれに役割が与えられ、それが自己効力感の醸成につながると考えています。生徒によっては、わからないところを教員に聞きにいくのが恥ずかしいと言って、質問をためらうケースも少なくありません。そんなとき、「まず近くの友だちに聞いてみよう」という選択肢があるのは、全体の学力の底上げにつながると感じています。
左から副校長の髙村隆博先生、校長の西川史子先生、サピックス小学部の広野雅明先生
広野 学校のなかにさまざまな“ものさし”があると、子どもの居場所が増え、安心して学びに向かえますね。それでは最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
髙村 受験生の皆さんへのお願いは、自分の得意なものや苦手なものをそのまま持って入学してきてほしいということです。そこを出発点に、さまざまな可能性を探っていきますので、中高6年間の成長を楽しみに入学してほしいと思います。
西川 お子さんのなかには、さまざまな“サイエンスの種”が眠っています。どんな種であっても、本校にはそれらを伸ばし、開花させる豊かなフィールドがあります。わくわくするような体験、新しいチャレンジの機会をたくさん準備して、皆さんの入学をお待ちしています。

山脇学園中学校・高等学校
●所在地
〒107-8371 東京都港区赤坂4-10-36
東京メトロ銀座線・丸ノ内線「赤坂見附」駅から徒歩5分、都営大江戸線、東京メトロ銀座線・半蔵門線「青山一丁目」駅から徒歩7分、東京メトロ千代田線「赤坂」駅から徒歩7分、東京メトロ有楽町線・半蔵門線・南北線「永田町」駅から徒歩10分
●TEL 03-3585-3911
●H P www.yamawaki.ed.jp
《各種行事日程のお知らせ》
●入試対策説明会&自由見学(要予約)
※6年生対象
10月 4日(土) 9:15~、14:00~
11月 8日(土)13:30~
12月13日(土)13:30~
1月10日(土)13:30~
●学校説明会&自由見学(要予約)
※5年生以下対象
11月 8日(土)13:30~
12月13日(土)13:30~
1月10日(土)13:30~
●オープンキャンパス(要予約)
8月23日(土) 9:00~
◆変更・中止の可能性もあります。必ず学校ホームページでご確認ください。
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