この人に聞く
2025年度から「理数探究入試」を導入
探究活動と高大連携教育を拡充し
生徒の“サイエンスの種”を育てる
山脇学園中学校・高等学校は、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校として、「科学・技術者へキャリア選択する女子生徒の育成拠点」をめざすさまざまな取り組みを行っています。希望進路に直結する本格的な探究活動や高大連携プログラム、新設の「理数探究入試」など、独自に展開するサイエンス教育の内容について、校長の西川史子先生と副校長の髙村隆博先生に伺いました。
山脇学園中学校・高等学校
左:校長 西川 史子先生
右:副校長 髙村 隆博先生
SSH指定校として2年目を迎え、
生徒たちのマインドにも変化が
サピックス教育事業本部
本部長
広野 雅明
広野 スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受けて、今年で2年目を迎えました。ますます充実する貴校のサイエンス教育について教えてください。
西川 本校は、2024年度からSSH指定校として、「地球市民として行動し、科学・技術者へキャリア選択する女子生徒の育成拠点形成」をめざしています。すべての生徒に向けて、サイエンスマインドを培う機会を多く設けるとともに、各種実験室がそろったサイエンスアイランドや、高1から選択できるサイエンスコースの充実によって、環境整備と教育内容の発展を図っています。
広野 生徒の様子に何か変化はありますか。
西川 主体的に探究活動に取り組んだり、外部のコンテストやコンクールへの参加意欲が高まったりと、学びに対して積極的な姿勢が見られるようになりました。先輩や友人がチャレンジする姿を見て、「自分もできるはず」と自信を持って挑戦する風土ができてきたのでしょう。あこがれが行動の原動力になることを感じます。
髙村 わたしが実感しているのは“当たり前”のレベルが上がったことです。最近は、「学会発表のために今から北海道に行ってきます」「わたしは新潟に行きます」と、生徒の行動範囲が全国へと広がっています。そうした光景が“当たり前”になっているところに、学校全体にサイエンスマインドが浸透してきているのを感じます。
広野 近年、さまざまな学校が理科関連の施設を拡充していますが、貴校のサイエンスアイランドはその先駆けともいえます。現在の活用状況はいかがですか。
西川 サイエンスアイランドが完成して、今年で15年目を迎えます。開設当初は実験室としての利用がメインでしたが、最近は教員が常駐し、生徒たちの探究活動の拠点として、またサイエンスコースの生徒が放課後に集うオープンラボとして、幅広く活用されています。
今春サイエンスコース1期生が卒業
研究成果を武器に希望進路を実現
広野 生徒のサイエンスマインドを育てるために、どのような工夫をされているのでしょうか。
西川 本校では、中学に「総合知」というプログラムを設け、自然科学・人文科学・社会科学の各分野の視点を融合した領域横断型の授業を実践しています。たとえば、中1・2が週1時間履修する「サイエンティスト」は、その「総合知」の一つで、理科の授業とは別に実験操作やデータ処理など研究に必要なスキルを学びます。
中3になると、「リベラルアーツチャレンジ」か「自然科学チャレンジ」かに分かれ、自分の興味のある学問分野から、各自が設定したテーマについて研究を行います。
広野 それらの探究活動のゴールは、どこに設定されているのですか。
西川 3月に行われる「YSE(山脇サイエンスEXPO)」で研究発表を行います。以前は、理系志望の中3~高2を対象とした発表会でしたが、今年からその範囲を広げ、中2の有志と中3の生徒全員が参加できるようにしました。大学や研究所の先生、保護者の方をお招きし、2日間にわたって大きな規模で開催できたことは、生徒にとっても価値ある体験になったと思います。
このように、中学3年間で生徒全員がサイエンスの素養を身につけたあとは、さらに専門性を高めるため、高校から「リベラルアーツコース」「国際教養コース」「サイエンスコース」へと分岐していきます。
広野 今年3月にサイエンスコースの1期生が高校を卒業されました。どのような進路を実現されたのですか。
西川 高校3年間で取り組んできた研究成果も活かしながら、1期生15名中13名が推薦入試を利用し、筑波大学や慶應義塾大学などに進学しました。また、サイエンスコース以外の生徒も、演劇への関心を教育につなげた論文で東京学芸大学に合格したり、「サステナブル建築」に興味を持ち、空き家のリノベーションについての研究で芝浦工業大学に合格したりしています。日々の探究活動を希望進路の実現につなげた先輩たちの姿は、後輩にとって大きな励みになっています。
広野 高大連携についてはいかがですか。
西川 現在、東京農業大学、芝浦工業大学、北里大学など8大学と協定を結び、インターンシップやフィールドワークで交流をしています。SSH認定後は、協定大学以外からも出張講座や体験プログラムなどのお話をいただくことが増えました。
髙村 先日は、工学系に興味のある高1・2の希望者を対象に、東北大学見学ツアーに出掛けました。日本ではエンジニアリングの道に進む女性はまだ少ないものの、世界では性別を問わず非常に高い関心が寄せられています。東北大学は日本で最初に女性に門戸を開いた国立大学であり、特に男性が多い工学部では女性が過ごしやすい環境づくりに力を入れているというお話に、生徒たちは真剣に聞き入っていました。ツアーに同行された保護者の方も、初めは地方の大学に進学させることにためらいがあるようでしたが、実際の研究環境を見て「ここなら行かせたい」と考えが変わっていたのは印象的でした。
広野 特に理系学部に進む場合は、入学前に「この学部で何ができるのか」をしっかり理解しておくことが重要です。実際の大学の様子を見る機会が多くあることは、進路選択のうえでも非常に心強いですね。
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