受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

この人に聞く


半導体に触れる機会を増やして
日本の産業活性化につなげたい

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株式会社Hundred Semiconductors
本社・事務所:〒277-0825
千葉県柏市布施810-11 ヤマゲンビル1F
東京営業所:〒130-0003
東京都墨田区横川1-16-3 センターオブガレージ内
つくばラボ:〒300-1252
茨城県つくば市高見原5-1-26 高見原インキュベーション1F
URL:i-hundred.com 別ウィンドウが開きます。

髙宮 子どもたちに「半導体とは何か」と尋ねられたら、どのように答えるのが適切なのでしょうか。

居村 わたしなら「電気の流れを制御する最小単位の部品」だと答えます。そして、「それがないと、今の文明が完全に途絶えてしまうもの」とも付け加えます。

髙宮 近年の半導体不足によって、給湯器や交通系ICカードの生産が追いつかず、不便を味わったご家庭もあるかもしれません。弊社でも、昨年は新校舎を設置しようにも、半導体がなく、電話が引けないと言われてとても苦労しました。

 日本もかつては「半導体王国」と呼ばれましたが、いつのまにか衰退し、現在は他国の後塵を拝している状況です。貴社の開発が、それを打開するきっかけになればいいですね。

居村 世界的に見ると、半導体は外交問題や国家安全保障問題に発展してきています。半導体開発を始めようと思うなら、一個人、一企業ではなく、国家ぐるみでやらなければとても太刀打ちできない時代になってきているのです。

髙宮 国家安全保障戦略を深く見ていくと、半導体の問題を大きくはらんでいます。

居村 おっしゃるとおりです。今、半導体の世界シェアの約60%を占めているのが台湾です。半導体サプライチェーンの観点からも、全世界が台湾に大きく依存しています。そのリスクヘッジとして、TSMCは日本のみならず、アメリカやドイツにも次々と工場を新設しています。半導体をひもといていけば、先端の科学技術だけでなく、その背景にある各国の社会や歴史などに突き当たります。半導体を知るとは、それらの複合的な課題を知ることでもあるのです。

髙宮 半導体に必要とされる貴重なレアメタルを、どこから調達するかという課題もありますね。

居村 日本では、パソコンやスマートフォンなどの中古のデジタルデバイスをリサイクルし、そこからレアメタルの回収を試みています。いわゆる「都市鉱山」と呼ばれる考え方です。横軸としてのサプライチェーン、縦軸としてのエンジニアリングチェーンを意識したものづくりという意味では、半導体は良い教材になると感じています。

髙宮 半導体という切り口から、地政学やリサイクル問題など、さまざまな方向に学びが広がっていきそうですね。それでは最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

居村 わたしたちがめざしているのは、半導体をもっと身近に感じられる世界です。半導体産業に対して、「最先端技術で、高給がもらえる」など、表層的なイメージを持っている方も少なくないのですが、それは本質ではありません。さまざまなテクノロジーを集結させた総合技術であり、それと同時に、多種多様な産業を支える基盤であることを理解していただきたいのです。弊社が取り組んでいる超小型半導体システム、ミニマルファブは、年に1回、幕張メッセで行われるエレクトロニクス業界最大の展示会「CEATEC」で公開しているほか、さまざまな展示会を通じて、実機に触れる機会を積極的につくっていく予定です。一人でも多くの子どもたちが興味を持ってくれたらうれしいですし、そこから半導体の可能性を感じてもらうことが、日本の産業活性化において大きな意義があると思っています。

24年12月号 この人に聞く
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