受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

この人に聞く


多種多様なキャリア教育を通して
生徒の「非認知能力」を伸ばす

広野 キャリア教育にも力を入れていらっしゃいますね。

松尾 代表的なのが、広尾学園と合同で行う「広学スーパーアカデミア」です。これは、社会の最前線で活躍する科学者やジャーナリストを全国から30名以上お招きし、生徒は自分の興味に合わせて講義を受講します。テーマは「循環小数で知る数学のおもしろさ」「超伝導と低温の世界」など多岐にわたり、分野によっては非常に難解ですが、生徒たちは毎回目を輝かせながら聞き入っています。中学生の段階ではすべて理解できなくても、「かっこいい」「自分もやってみたい」とあこがれを持つことに意義があると考えています。

 また、本校独自で行っている「特別講演会」でも、さまざまな職業の方に、自身のキャリアについて講演していただきます。たとえば、ある心臓外科医の先生は、死との向き合い方について語ってくださいました。医学部をめざす生徒が年々増えていることもあり、会場のあちこちで、深くうなずきながら話を聞く生徒の姿が見られました。また、この講演会では、成功体験だけでなく、挫折した経験もお話しいただくようお願いしています。たとえ今、何か困難に直面していたとしても、未来には希望があると感じ取ってほしいからです。

広野 そういったさまざまな職業の方のお話を通して、生徒たちのキャリア観が磨かれていくのですね。

松尾 はい。わたしたちがこれらのキャリア教育を通して期待しているのは、「非認知能力」の向上です。計算力や暗記力など、認知能力の高さがちやほやされるのは、せいぜい大学受験まで。そこから、大学入学、就職や研究へとキャリアを進めるにつれて必要なのは、粘り強さや自制心といった非認知能力ではないでしょうか。生徒たちには、それらの重要性を、第一線にいる方のお話から学んでほしいと思っています。

広野 海外大学受験のサポートについても教えてください。

松尾 長期休みを利用したキャンパスツアーがあります。昨年度は、広尾学園と本校から希望者を募り、春休みの6日間で、アメリカの10大学を見学しました。現地では広尾学園の卒業生が案内してくれて、有意義な時間となりました。

 海外大学に進学した広尾学園の卒業生との交流としては、校内で行う「海外大学説明会」もあります。実際の大学生活や奨学金についてなど、実体験に基づく有益なアドバイスに、生徒たちは興味深そうに耳を傾けています。

広野 日本国内にいると、海外大学の情報を得る機会はまだまだ少ないので、先輩の体験談が聞けるのは大きいですね。また、広尾学園の実績やノウハウを享受できるのも、兄弟校ならではの強みといえます。

近隣校や東洋文庫との交流など
地の利を生かした取り組みも多数

広野 文京区というアカデミックな場所に校地を構えていらっしゃいますが、近隣の学校とは交流があるのですか。

松尾 東京大学の本郷キャンパスが近いので、現役の東大生が、放課後自習のチューターとして常駐してくれています。生徒たちは、勉強面はもちろんのこと、大学生活についてもよく質問をしているようです。東大を身近に感じられる環境にあることは、生徒にプラスに作用するのではないかと考えています。また、近くの都立小石川中等教育学校や京華学園とは、部活動の交流試合を行っています。

広野 地の利を生かした取り組みも多いと聞きました。

松尾 たとえば、日本最古にして最大の東洋学専門図書館・研究機関である東洋文庫と連携協定を結び、狂言のワークショップなどを行っています。学生証を提示すれば、生徒はいつでも東洋文庫の展示を見ることができます。

 また、近所の小石川植物園では、生徒が外国人観光客向けのガイドボランティアを行う機会もあります。得意の英語を生かした案内は、観光客にたいへん喜ばれるようです。海外大学の受験には、ボランティアの実績も合否を左右する大きな材料となりますので、今後もいろいろな機会を提供したいと考えています。

広野 現在、新校舎を建設されていますね。

松尾 地下1階、地上4階建ての建物が、今年12月に完成する予定です。地下には、学年全員が収容できるホールが入るほか、自習室を備えたラーニングコモンズも出来上がります。

 また本校は、広尾学園と同様、SAT(アメリカの大学進学希望者を対象とした統一学力テスト)の試験会場に認定されています。新校舎が完成した暁には、そのスペースを地域の受験施設として利用してもらえたらと思っています。

広野 新たなグローバル拠点としての活用が期待されますね。最後に、受験生とその保護者の方に向けてメッセージをお願いします。

松尾 保護者の方に申し上げたいのは、「中学受験にチャレンジする」と決めたお子さんのことを、どうか温かく、前向きに見守っていただきたいということです。思うような成果が得られず、苦しい時期もあるでしょう。しかし、そこで大事なのは、その経験を次にどうつなげるかです。わたしは、長い教員生活のなかで、うまくいかないこと、失敗したことを真摯に受け止め、不屈の精神で次のステップにつなげる生徒の姿をたくさん見てきました。あきらめず、最後までがんばった人が、真の“勝者”です。どうかそのことを忘れずに、努力を積み重ねてほしいと思います。

イメージ05 広尾学園と合同で毎年春休みに行う海外キャンパスツアー。今年はアメリカ西海岸の大学を巡りました

イメージ06 2024年12月に完成予定の新校舎には、アカデミーコモンや講堂、カフェテリアなどが入り、ますます教育活動が充実します

外観写真1
広尾学園小石川中学校・高等学校

所在地
〒113-8665 東京都文京区本駒込2-29-1
都営地下鉄三田線「千石」駅徒歩2分、JR山手線・都営地下鉄三田線「巣鴨」駅徒歩13分、JR山手線・東京メトロ南北線「駒込」駅徒歩13分

TEL 03-5940-4187

H P hiroo-koishikawa.ed.jp 別ウィンドウが開きます。

《各種行事日程のお知らせ》

中学授業体験会(説明会同時開催)
07月13日(土)09:30~、14:00~
09月14日(土)09:30~、14:00~
10月19日(土)09:30~、14:00~

入試傾向説明会
11月16日(土)09:30~、14:00~
12月15日(日)09:30~

いちょう祭(文化祭)
09月21日(土)・22日(日・祝)

‌すべて申込制です。変更・中止の可能性もあります。必ず学校ホームページでご確認ください。

24年6月号 この人に聞く
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