受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

子育てインタビュー

<楽しみながら勉強できる力>を培う子育て法

「好きなこと」がある子どもは
どんな環境の下でも伸びていく

 「子どもの個性を伸ばしながら、学ぶ力を身につけさせるにはどうすればいいの?」。そんな保護者の疑問に答えるために、メディアアーティスト、研究者、起業家として活躍する落合陽一さんと、母親である落合ひろみさんが『「好き」を一生の「強み」に変える育て方』(サンマーク出版)を上梓しました。今回は、落合ひろみさんに登場していただき、子どもを伸び伸びと育て、勉強好きにするポイントについて伺いました。

デジタルと生物が融合する
新しい世界観を提唱

広野 陽一さんは、今開催中の「2025年日本国際博覧会」(大阪・関西万博)でシグネチャーパビリオン「null²(ヌルヌル)」を手掛け、独創的な外観やプログラムの内容が話題となっています。あのアイデアはどこから生まれたのでしょうか。

落合 null²は、鏡のような外観が震えたり、動いたり、音を発したりして、おもしろいですよね。あれは、「音や振動を、どうやったら目に見えるようにできるだろうか」という学生時代からの取り組みを一つの形にしたものだと聞いています。般若心経における「空(無)」という概念を目に見えるようにし、体験させることが発想の原点のようです。館内に入ると天井と床が上下に無限に広がり、空間に浮いている感覚になります。「浮遊感」で、「空(無)」を表現したのだと思います。

 まずは自分の好きなものを表現したいという強い思いがあり、それをいかに実現しようかと考えたときに、目の前にAIがあったのでしょうね。

広野 AIを使うことを目的化するのではなく、めざすものをしっかりと思い描いたうえで、AIを使いこなそうとする姿勢は、まさにこれからの社会で必要とされるものです。生成AIは人間のやっている既存の作業の代替ができる優れた技術ですが、今までにないものを思い描くことはできませんからね。

落合 これまで取り組んできたことを踏まえ、今後の目標の一つとして自分のメディア作品をニューヨーク近代美術館(MOMA)に展示したいという思いがあるようです。もちろん、それは簡単なことではないのですが、万博のような大きな場でパビリオンをまるごと手掛ける機会をいただいたことは、一つのステップになるのではないかと期待しています。

「好き」を極めたことが
今の活躍につながっている

広野 陽一さんはサピックスに通っていらっしゃいましたね。進学についてはどのような方針で臨まれましたか。

落合 小さいうちは、夫はわが子をアメリカの大学に、わたしは東京大学理科三類に進学させたい気持ちがありましたが、そのビジョンどおりにはいきませんでした。中学受験ではサピックス小学部にお世話になったのですが、入室が遅すぎて、希望する中学の合格はかなわず、公立中学に進学しました。非常に傷ついたようでしたし、中学に入ってすぐにかわいがってくれていた祖父が亡くなったこともあり、しばらくは沈んだ様子でした。反抗期でもあったので、母親としてどう接していいのか、悩むことが多かったですね。

 ただ、本人はサピックス小学部での学びを楽しんでいたこと、サピックスの先生の励ましで奮起できたことから、中学部でも引き続きお世話になりました。また、公立中学の先生との相性が良かったことも幸いしたのでしょうか、高校受験に少しずつ前向きに取り組むことができるようになりました。開成高校を受験したのですが、前日に母子で体調を崩すというハプニングがあったものの、合格することができました。

広野 難しい年ごろではありながらも、たくさんのチャンネルがあったことで、そのうちのいくつかがうまく合った感じですね。

落合 母親だけで抱え込まず、話の合いそうな別の大人に託したのがよかったのでしょう。開成高校も、おおらかな先生方の下、生徒たちが伸び伸びと学校生活を送っていて、個性の強い陽一にぴったりの環境でした。また、先生方の面倒見がとても良く、やりたい研究や進学先のことなど、何でも相談できたのも幸いしました。

 大学入試では東京大学をめざしていましたが、一浪して筑波大学に進学することになりました。新設されたばかりの情報学群情報メディア創成学類に入りましたが、これも陽一にとっては大正解でした。広大なキャンパスのなか、伝統やしきたりに縛られず、自由に研究や自分の考えを発信する活動に打ち込めましたから…。在学中に国際的なコンベンションで大きな賞を受賞するという実績などが評価されて東大の大学院に進み、博士号を取得しました。今は筑波大に戻り、図書館情報メディア系の准教授として研究や学生の指導に当たっています。

広野 中学受験や大学受験でうまくいかなくても、進学先で自分の好きなこと、やりたいことを極めていった体験が、今の活躍につながっているのですね。

 最後に、受験生の保護者の方々に向けてメッセージをお願いします。

落合 「勉強しなさい」と言う前に、お子さんの好きなものや、やりたいことを理解し、認めてあげてください。そうすれば、お子さんはそれを心の支えにして、みずから受験と向き合っていきます。また、保護者の方にはいつも笑顔でいてほしいですね。大人の笑顔を見ているだけで、子どもは安心してがんばることができるものです。

広野 子どもの失敗も成功も前向きに笑顔でとらえ、がんばった過程をしっかりとほめてあげたいですね。本日はありがとうございました。

「null²」について多くの情報を発信
 大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「null²(ヌルヌル)」が話題になっています。落合陽一さんが「いのちを磨く」をテーマにプロデュースしたパビリオンの外観は、伸縮性のある膜状の鏡張りで、ロボットアーム操作で変形したり、音で振動したりします。また建物の中では、来場者が3D映像化した自分と対話するプログラムが展開されています。
 メディアアーティストとして活躍する落合陽一さんの個人的なプログには、この「null²」に関する多くの情報が発信されています。「null²」の見どころや、その根底にある「デジタルネイチャー」という概念について詳しく知りたい人は、アクセスしてみるといいでしょう。
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25年9月号 子育てインタビュー:
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