受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

子育てインタビュー

豊かな心と考える力を育む

人間形成の土台を築くために
子どもたちに「ほんもの体験」を

鈴木 愛さんSuzuki Ai

(すずき あい)株式会社MPandC、Sports School and Educationマネージャー。青山学院大学文学部教育学科卒。小学校教諭一種免許状保持。教育事業「モーリーキッズ ほんもの体験」のイベント企画や運営などを担当。アスリートのスポンサー提案や講演会提案など、マネージメント業務も行っている。

 「本物や自然との出合い体験が子どもの感性や考える力を大きく伸ばし、将来をたくましく生き抜く力を育む」。そうした考えに基づき、さまざまな体験イベントを提供している企業があります。今回は、株式会社MPandC(エムピーアンドシー)で「モーリーキッズ ほんもの体験」の企画や運営を担当している鈴木愛さんにインタビュー。体験イベントの内容や教育的な効果、親子での楽しみ方などについてお話を伺いました。

多くの人々に感動を与えるスポーツ
生きる力を培うきっかけに


MPandCのホームーページには過去のイベント情報が掲載されています
www.mpandc.co.jp 別ウィンドウが開きます。

広野 鈴木さんはセガサミーグループの株式会社MPandCで、子どもたちを対象にさまざまな「ほんもの体験」を手がけていらっしゃるそうですね。まずは、どのような会社なのか、教えていただけますか。

鈴木 スポーツは、結末が予測できないドラマであり、勝っても負けても人々に感動を与える究極のエンターテインメントです。当社は、そのスポーツで人々を笑顔にすることをめざす、スポーツビジネスの総合マネジメント企業です。スポーツに携わる方と多くの方々とをつなぎ、スポーツの楽しさを伝え、アスリートの価値を向上させることが社のミッションです。具体的には、スポーツ全般に関して、MPandCの頭文字であるMarketing(マーケティング)、Planning(プランニング)、Coordinating(コーディネーティング)を中心に据えながら、スポーツ関係者やチームのマネジメント、スポーツイベントやスクールの企画・運営、スポーツブランドのコンサルティングやマーケティングなどを行っています。

広野 鈴木さんご自身は、どのような業務に携わっていらっしゃるのですか。

鈴木 主にスポーツエデュケーションという教育事業で、体操教室、幼児教室、そして「モーリーキッズ ほんもの体験」イベントなどを企画しています。

 厳しい練習と挫折を繰り返してきたアスリートは、社会で必要な粘り強さ、やり切る力、コミュニケーション能力、論理的思考などを兼ね備えています。わたしたちは、子どもたちにもこうした人間形成の土台となる力を培い、みずから未来を生き抜く力を身につけてもらいたいと考え、スポーツを含む「ほんもの体験」を通して子どもたちを笑顔にしていく取り組みを行っています。

 2025年4月末、渋谷区の岸体育館の跡地に新施設がオープンします。「ほんもの体験」をコンセプトに運動能力の向上だけでなく人間力も育む「モーリーキッズスポーツスクール」を開校予定で、現在その準備を進めています。

本物の体験を通して学んだことは
みずから生き抜く力となる


サピックス教育事業本部
本部長
広野 雅明

広野 なぜ、子どもたちに「ほんもの体験」を提供されるのでしょうか。その意図をお聞かせください。

鈴木 今の子どもたちは、SNSやゲームといったインターネット上の関係、バーチャルな世界にのめり込みがちです。また、親子共に忙しく、無駄なことを嫌い、効率を重視する傾向にあります。その結果、知らない誰かと顔が見えないバーチャル体験はできても、鬼ごっこやかくれんぼなどのように友だちと一緒に道具なしで遊ぶことができない、ルールのない状態から遊びを作れないといった子どもが増えています。また、失敗を恐れてマニュアルどおりにしか動けない、発想力や創造力が欠如しがちで、自分の気持ちを表すことができないといった傾向も見られます。

 でも、コミュニケーション能力や発想力、想像力が身につかないまま知識だけを頭に詰め込んでも、子どもたちは本当に幸せになれるのでしょうか。個性のない、みんな同じ顔をした人間になってしまい、結局はAIに負けてしまうのではないでしょうか。

 人間ならではの力、自分の人生を積極的に生き抜く力を育むためには、やはり本物の体験を積み重ねることに勝るものはありません。バーチャルではなく、現実世界での本物体験は心に響きます。体を動かし、五感で吸収し、自分で考えて創造したり、仲間と協力し合ったりしたことは、深く子どもの心に刻まれます。そして、チャレンジして最後までやり抜いた成功体験や失敗して学んだことは、子どもの自信となって成長につながり、心を豊かにし、人間力を大きく育てるのです。

 こうした力は人間形成の土台となる幼児期から育むことが大切で、幼児期に本物の体験を通して学んだことがやがては机上の学習と結び付き、自分の中に落とし込まれ、“本物の力”になると思っています。わたしたちは、子どもが主体的に取り組み、ドキドキわくわくするような体験を通して、本物の力、みずから生き抜く力を育んでいけるようにサポートしたいと考えています。

広野 具体的には、どのようなプログラムがありますか。

鈴木 年間を通して自然体験、食育体験、スポーツ体験、科学体験、職業体験、専門分野の有識者との体験などを実施しています。2024年には、潮干狩りやすだて漁、川遊びキャンプ、ワカサギ釣りなどを行いました。初夏に田植えをして秋に稲を刈り、ご飯を釜で炊いたり、新春には餅つきをしたりするなど、稲の一生を学ぶ企画もあります。野菜を収穫してカレーライスやピザを作る食育や、俳優の香川照之さんと一緒に昆虫採集や昆虫の特徴について学ぶ教室、青山学院大学陸上部の選手に走り方を教わるスポーツ体験なども開催しました。

25年2月号 子育てインタビュー:
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