受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

子育てインタビュー

中学受験に詳しい「心の専門家」がアドバイス

誰かと比べるのではなく
わが子自身の成長に目を向けて

真田 涼さんSanada Ryo

(さなだ りょう)RinDa臨床心理士ルーム代表。臨床心理士・公認心理師、ストレスチェック実施者、児童発達支援管理責任者。東京公認心理師協会理事(2024年8月現在)。小児科にて発達健診や集団療育を行うほか、幼稚園や保育園などにてストレスチェックを実施。また、保健所の心理判定員や行政の巡回相談など、幅広い活動を展開。著書に『受験精が来た!』(講談社)、『臨床心理士が書いた決定版!! 中学受験 合格メンタルの作り方』(日本能率協会マネジメントセンター)などがある。

 今回登場していただいたのは、臨床心理士として活動する傍ら、今年6月に『中学受験 合格メンタルの作り方』(日本能率協会マネジメントセンター)を上梓された真田涼さんです。なぜ、真田さんは中学受験をテーマに取り上げたのでしょうか。「心の問題」を扱う専門家であり、ご自身がお子さんの中学受験を経験された保護者でもある真田さんに、執筆の動機や中学受験で合格を勝ち取るために必要なメンタルケアなどについてお聞きしました。

目に見えないものだからこそ
大切にしたい「心のケア」

広野 真田さんは臨床心理士、公認心理師という資格を持って活動されています。これらはどのような資格なのでしょうか。お仕事の内容とともにお聞かせください。

真田 どちらも、心理学などの知識をベースに心の問題を扱う専門家であることを示す資格で、未就学児の心の発達の問題から老人の認知症まで幅広く対応します。わたしは普段、クリニック、小児科、保健所、幼稚園、保育園などを巡回して、心の発達や就学に関する相談に乗っています。なかには、スクールカウンセラーをしている人もいます。大きな事件や事故、災害があった際に、幼稚園、保育園、学校などに緊急支援で派遣されて、子どもたちの心のケアを行うこともあります。

広野 大災害が起こると、経済的な損失や生活面の不自由のみがクローズアップされがちですが、メンタル面の被害も深刻でしょうね。

真田 おっしゃるとおりです。心と体はつながっているので、悩みがあると体調が悪くなることはありますし、逆に、病気になってメンタル面に不調をきたすこともあります。目に見えず、わかりづらいからこそ、心のケアを大事にしたいと、わたしたち専門家は考えています。

広野 事件や災害がなくても、教育現場でのいじめや不登校といった問題がクローズアップされ、不安になっている方もいらっしゃいます。保護者はどのような心構えでいるとよいのでしょうか。

真田 そうしたトラブルは、個々の「根性」や「しつけ」とは関係なく、誰にでも起こりうるものです。一つ言えるとしたら、子どもに学校以外の居場所をつくってあげることでしょうか。子どもの世界は狭く、家と学校のみになりがちで、そこでうまくいかないと思い詰めてしまいます。でも、もし塾や習い事といった別のコミュニティーでうまく適応できれば、それが次に進む足掛かりとなります。子どもが学校でうまくいかなくても、保護者の方は「たまたま、ここに合わなかったんだ」と考え、違う環境を用意してあげてください。地元の子が通う公立中学校とは別の私立中学校を受験して、そこに進学するなどという環境の変化が、いい転機になることは多々あります。

広野 「この学校に行かなければならない」「みんなと仲良くしなくてはいけない」といった固定観念を捨てて、広い目で子どもの様子を見ながら、居心地のいい場所を探してあげることが大切なのですね。

不安を抱える保護者に向けて
心理の専門家から情報発信を


サピックス教育事業本部
本部長
広野 雅明

広野 今回、上梓された『臨床心理士が書いた決定版!! 中学受験 合格メンタルの作り方』では、中学受験でよくある保護者の悩みと、それに対する考え方やケアについて紹介されています。こうしたテーマを取り上げることになった経緯をお聞かせください。

真田 わが家も中学受験を経験したからわかるのですが、受験生の保護者は先が見通せず、不安でいっぱいです。いくら模試で「合格可能性80%」と出ても不安でたまらないものです。その一方で、不安な様子を子どもに見せまいとして、本心が出せない毎日を送っています。そうした皆さんの悩みに寄り添い、サポートしたいという思いで筆を執りました。

広野 世の中には中学受験にまつわる体験談や情報がたくさん出回っていますが、極端な事例がクローズアップされることもあり、一般的なご家庭の参考にはならないものが多く見受けられます。そうした意味で、心理の専門家が執筆された内容には安心感があります。

真田 ありがとうございます。学習面のサポートについては塾の先生などからの発信がありますが、メンタル面については専門家による情報が今まであまりなかったという印象があります。受験生にとって重要な心のケアの大切さについて、多くの方に知っていただきたいですね。

広野 真田さんのお子さんはサピックスに通塾し、中学受験に臨まれました。この本には、その経験も反映されていますね。

真田 実は、うちの子は小学校での成績があまり良くありませんでした。習っていない漢字を書く、掛け算の式の順番を守らない、答えで単位を書き忘れるなどといったことで不正解とされ、「変なルールばかりでつまらない」と勉強に否定的な印象を持っていたようです。ところが、サピックスで思考力をみる問題に取り組んだら、とても楽しかったようで「勉強っておもしろいんだ」と目覚め、成績もめきめきと上がっていきました。「子どもにとって、楽しく学べることはこんなにも大事なんだ」と、あらためて認識させられました。

広野 著書内のコラムをお書きになった「現役東大生Zen」さんは、ご子息ですか。

真田 そうです。中高一貫校から現役で東京大学に進みました。第一志望校の中学に合格したときはよほどうれしかったのか、『さぴあ』の取材を受けましたし、父親と一緒に『受験体験記』も書いたんですよ(笑)。

24年10月号 子育てインタビュー:
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