そこが知りたい!
中学受験をすることは決まっていても、志望校が決まっていないと、目標がなかなか定まりません。しかし、たくさんの学校のなかから「わが子にぴったりの志望校」を見つけるのは、とても大変なことです。教育理念や校風、カリキュラムなどは学校ごとにさまざまだからです。親子共に納得できる学校を見つけるにはどのようにすればよいのでしょうか。今回の「そこが知りたい!」では、志望校選びのポイントとそのためのアクションをご紹介します。
POINT1 知る 学校の特徴を理解する
中学・高校の6年間は、知識や教養を身につけるだけでなく、心と体が大きく成長を遂げる大切な時期です。どのような環境で6年間を過ごすかは、その後の進路や人生設計に大きな影響を与えるでしょう。それだけに、労を惜しまず、慎重に志望校を選ぶべきといえます。たくさんの中高一貫校のなかから、お子さんの可能性を最大限に伸ばしてくれる学校を見つけるためには、まず何から始めればよいのでしょうか。
●志望校選び/四つのアクション
志望校選びのためのアクションは次の四つに分けて考えるとよいでしょう。まず最初は、それぞれの学校の特徴を「知る」ことです。そこで、中学校の特徴をタイプ別に分類しています。各項目から、お子さんに合っていると思えるタイプを選んで組み合わせることで、「私立」の「進学校」で「共学校」などといったように、具体的な学校像が見えてくるはずです。学校を知るための情報源も確認しておきましょう。冊子では『さぴあ』のような進学情報誌や、サピックス小学部が企画・編集する学校案内『中学受験ガイド』(6月中旬発行予定)、各学校の学校案内パンフレットなどがあります。
●志望校選び/四つのアクション
一方、手軽に活用できる情報源は、やはりインターネットです。『さぴあ』のほか、各学校や各都道府県の私立中学高等学校協会などのホームページも役立つでしょう。
私立の学校は、教育理念や校風、カリキュラムなどに、それぞれの個性がはっきりと表れています。受験対策よりもアカデミックな授業を重視する学校もあれば、大胆な先取り学習を行って大学受験に備える学校もあります。ご家庭の教育方針に合っており、受験する本人も「このような環境で学びたい」と思えるようなところを選べば、有意義な学校生活が送れるでしょう。
先生の異動が少ないのも私立の特徴です。6年間続けて同じ先生に教えてもらえる場合もあります。卒業後に母校を訪ねたとき、私立なら20〜30年たっていても恩師に会えるかもしれません。
一方、国立の学校は、多くの場合、大学の教育系学部の付属校として設置され、経済的な負担が軽いだけでなく、一般的にレベルの高い授業が行われています。ただし、筑波大学附属のように、併設の高校に進学するためには、内部試験などの審査(8割程度が進学)を受けなければならない場合もあるので、この点は注意が必要です。
そして、近年次々と開設されているのが公立の中高一貫校(中等教育学校や併設型の一貫校)です。私立の中高一貫校と同様に、6年間を通したカリキュラムが組まれています。
付属校は、併設された大学に無試験、または有利な条件で進学できるのが大きな魅力です。受験勉強にとらわれることなく、クラブ活動や学校行事、興味のある勉強に打ち込むなど、ゆとりある学校生活を送ることができます。
半付属校は、形式的には付属校でありながら、他大学への進学にも力を入れています。このタイプの学校は、中学・高校に進学してからの進路変更にも柔軟に対応できるというメリットがあります。卒業生の多くが、併設大学以外に進学しているという学校も少なくありません。なお、大学進学の際には、併設大学への被推薦権を保持したまま他大学を受験できる学校もあれば、他大学を受験する場合は、内部進学の権利を放棄しなければならない学校もあります。学校によって対応が異なるので、あらかじめ確認しておいたほうがよいでしょう。
一方、系属校は大学と提携関係を結んでいる学校です。付属校と異なるのは、大学とは別の学校法人が経営しているという点です。ただ、実態は付属校と似ている場合もあります。代表的な学校は、早稲田実業学校、立教女学院、青山学院横浜英和など。なお、提携している大学に推薦で進学できる割合は、学校によって異なり、ほぼ100%という学校もあれば、50%程度の学校もあります。この点はしっかり確認しておきましょう。
これらに対して、大学を併設していない、またはしていてもそこへの進学者がほとんどいないのが進学校です。国公立大学や医学部に進学させたい、あるいは、高校卒業後の進路は、中学・高校での学びを通じてじっくり考えたいというご家庭にとっては、進路に制限のない進学校のほうが向いているといえます。
一般的に、男子校・女子校には歴史の古い学校が多く、伝統が受け継がれているのが特徴です。これに対し、共学校・別学校には、比較的新しい学校が多く、男女の相互理解などを重視する傾向にあります。最近では、男子校・女子校から共学校に移行する学校も増えています。
なお、別学校とは、男女それぞれの成長のスピードや特性を考慮し、「一定期間、授業は男女別に行い、校内行事やクラブ活動、委員会活動については男女が協力して行う学校」のこと。国学院大学久我山、桐光学園が代表的です。別学にする期間や方法は学校によって異なります。
私立校では、キリスト教系(カトリック系・プロテスタント系)や仏教系など、宗教を人間教育の基盤としている学校もあります。礼拝の時間を設けるなど、宗教教育を行っているところもありますが、生徒や保護者に信仰が強制されるわけではありません。多くの場合、その学校の宗教・宗派に関係のない生徒もたくさん在籍しています。キリスト教系の学校には、語学教育を重視しているところも多く、英語以外にフランス語を学べることもあります。
立地条件を考慮すると、大きく都心型と郊外型とに分けられます。都心型の学校は、通学に便利で塾などにも通いやすい半面、登下校の途中に"誘惑"が多いというデメリットもあります。一方、郊外型の学校は、広大な校地や充実した施設を持つところが多く、伸び伸びとした生活を送れるものの、自宅からのアクセスが悪いと、通学に時間がかかってしまう場合があります。6年間通学することを考え、自宅からの距離や交通手段を詳しく調べたうえで選びましょう。ただ、受験生本人に「この学校に通いたい」という強い思いがあれば、周辺の環境や多少の通学時間の長さは問題ではないかもしれません。
なお、都心型・郊外型にかかわらず、自宅から徒歩圏外の学校の場合は、大きな災害が起こったときに、交通機関がストップし、帰宅が困難になる恐れがあります。それを踏まえ、多くの学校は、生徒が数日間、学校にとどまることになっても十分に対応できる備えをしていますが、具体的にどんな備えをしているのか、きちんと確認しておくことも大切です。
伝統校は、戦前に設立された旧制中学・高等女学校の流れをくんでいたり、キリスト教や仏教の精神を基礎に創立されたりするなど、長い歴史を誇る学校です。独自の校風を形成しており、卒業生のネットワークが各界に張り巡らされているという強みがあります。
一方、比較的歴史の浅い新興校は、郊外に校地を構えることが多く、進学指導に力を入れて大学合格実績を飛躍的に伸ばしている学校もあれば、全国レベルで活躍しているクラブのある学校も存在し、さまざまな特色を出しています。歴史が浅いということは、これから入学する生徒がその学校の歴史をつくることができるというメリットにもなります。
基本的に生徒の自主性に任せるという自由な校風の学校もあれば、生徒指導や学習指導に力を入れている規律ある校風の学校もあります。ただし、自由な校風の学校でも、生徒一人ひとりに責任が求められますし、規律ある校風の学校でも、生徒の自主性を伸ばす方針であることには変わりありません。いずれの場合も、受験生本人の性格に合うかどうかをしっかり見極める必要があります。
寮や奨学生・特待生制度の有無、帰国生の割合、留学制度の有無、併設高校からの大学進学実績、クラブ活動、カリキュラム、入試科目(4科・3科・2科・1科・適性検査型・面接の有無)なども確認しておきたいポイントです。また、受験生としては、偏差値(難易度)や、通学時間帯の交通機関の混雑状況なども考慮する必要があるでしょう。
なお最近では、共学校が増えるなかで学校選びが多様化する傾向にあります。偏差値だけではなく、学校の特徴を踏まえて、自分がその校風に合っているかを考えながら選んでいるようです。
その結果、「付属校」と「進学校」などを併願するケースも増えてきています。
●わが家の志望校選び/チェックシート 該当する項目に○を付けましょう。
- 23年5月号「そこが知りたい!」シリーズ Vol.2:
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