挑戦するキミへ

Vol.33
親のストレスを子に向けないために
想像力をはたらかせ、前向きな声掛けを
入試本番までいよいよ3か月を切りました。最終的な受験校選びや、それに伴う合格可能性の変動に、受験生以上に不安を募らせている保護者の方も多いことでしょう。しかし、中学受験を上手に乗り切るために大切なのは、「保護者が精神的に安定していること」だと柳沢先生は言います。親のストレスを子どもに向けないための心の整え方と、気持ちよく中学校生活を始めるための心構えについて考えます。
文責=柳沢 幸雄
子どもと過去の自分を重ね合わせ
言われて嫌だった小言はぐっとのみ込む
柳沢 幸雄
やなぎさわ ゆきお●北鎌倉女子学園学園長。東京大学名誉教授。1947年生まれ。東京大学大学院工学系研究科化学工学専攻博士課程修了。ハーバード大学大学院准教授・併任教授などを経て、2011年4月から2020年3月まで開成中学校・高等学校校長を務める。2020年4月から現職。
中学受験において、保護者の焦りは禁物です。その不安や焦燥感は確実に子どもに伝わり、余計なプレッシャーとなってしまいます。つまり、親がどれだけ上手にストレスをコントロールできるかが、受験の結果を左右するといっても過言ではないのです。
そこで大切なのが、自分の育ってきた環境を思い出しながら子どもに接することです。「子は親の鏡」ということばがあります。これが成り立つのは、近いDNAを持つ同士だからという生物的な理由はもちろんありますが、家族として長い時間を共有するなかで、親の価値観が無意識に子どもに受け継がれているからでもあります。つまり、子どもも保護者の感性と非常に近いものを持っていると考えれば、「自分が子どものころ、親にされてうれしかったことを積極的に行い、嫌だったことは控える」のが、トラブル回避の最も有効な方法なのです。
幼いころ、「もっと勉強しなさい」と言われてうれしかった経験がある人は少ないでしょう。わが子も同じです。小言を言いたくなる気持ちをぐっとのみ込み、別のことばを選んでみましょう。たとえば、今の子どもと同じ年ごろの自分の写真を机のそばに置いてみるのもいいかもしれません。「あのころの自分は、大人になった自分の言動をどう感じるだろう」と想像してみれば、おのずとわが子にもプラスの声掛けができるようになるのではないでしょうか。
性別やきょうだい構成で変わる接し方
無意識のバイアスに気づくことが大切
とはいえ、わたしも子育てをしてきた経験から、親が子どもに対して常に正しく、公平な声掛けができるわけではないこともよく理解しています。子どもが同性か異性か、長子か末子かによって、無自覚に対応に差をつけている場合もあります。
一般的に、母親は息子に、父親は娘に甘くなりがちで、逆に同性の子どもには厳しく接する傾向があるといわれます。同性の子どもの場合、自分に似た部分が多いため、つい細かいところまで気になってしまうのかもしれません。
また、きょうだいがいる家庭では、上の子には厳しく、下の子には甘くなってしまうこともよくあります。わたし自身、2人の息子を育てるなかで、長男とは意見の相違でよくぶつかった一方、その様子を近くで見ていた次男は「同じ轍は踏むまい」とうまく立ち回るので、衝突することはあまりありませんでした。そのような出来事が何度か重なると、親のなかに「扱いやすい子」「扱いにくい子」という認識が生まれ、子どもから見ても「どうして自分だけ注意されなければならないのか」という不満が募り、いらぬ軋轢(あつれき)を生むことになります。
このように、親は平等に接しているつもりでも、子どもはそう受け止めていないケースが多々あります。だからこそ大切なのが、「子どもから見てどう感じるか」という想像力です。親としての立場にとらわれず、自分のなかにあるバイアスを自覚し、客観的にわが子を見ること。それを意識するだけでも、子どもの精神は安定し、うまく成長の軌道に乗せることができるのです。
取り組むべきは、徹底的な健康管理と
充実した中学校生活のための下準備
受験期に親のストレスがたまりやすいのは、「ないものねだり」をしてしまうからです。今のわが子に「ないもの」を追い求めてもキリがありませんから、まずは今のお子さんの「あるもの」に目を向けてみましょう。それでもすっきりしない場合は、塾の先生に相談するのが得策です。これまでさまざまな受験生を見てきた経験から、親子双方のメンタルケアについて、具体的なアドバイスがもらえるはずです。
入試本番が近づく今、保護者が取り組むべきことは二つあります。一つは、中学受験がどんな結果になっても、それを前向きに受け止められるよう心の準備をしておくこと。受験校それぞれの魅力をお子さんと共有し、「どこに進学したとしても、楽しい中学校生活が待っているよ」と伝えてください。そこに第一志望、第二志望といった序列をつける必要はありません。大事なのは、「自分が選んだ学校に、自分の力で合格した」という本人の自信です。それさえあれば、本来の志望順位がどうであれ、きっと実りある6年間が送れると思います。
もう一つは、徹底した健康管理です。試験当日に、お子さんを万全な体調で送り出すことは、保護者の方にしかできない大事な役割です。あれこれ先回りしたくなる気持ちを少し抑えて、“黒子”に徹することは、やがて訪れる“子離れ”の練習にもなるでしょう。それを乗り越えた先には、親子ともに大きな成長が待っているはずです。
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