受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあ何でも相談室

 算数において計算力は必要不可欠なものであるため、「より速く正確に計算できること」が、すべての入試問題を解くうえで基本となる力といえます。計算力を上げるためには、どのようなことを意識すればよいのか、千里中央校校舎責任者にお聞きしました。

第178回「より速く正確に計算する
力をつけるには?」
回答者/千里中央校校舎責任者

学習した計算方法の習得度を確認
日ごろから数字に慣れ親しむ習慣を

 「算数のテストでなかなか点数が取れません」という相談を受けることがありますが、原因を分析してみると、計算するのに時間がかかってしまったり、正確性に欠けてしまったりと、「計算力が身についていないから」という場合も少なくありません。また、入試では最初に計算問題を出題する学校が多く見られます。計算のみの出題がなかったとしても、どの問題でも解き進めるには計算力が必要になるため、速く正確に計算するということは、非常に大切な要素だといえるでしょう。
 計算力を上げるためには、正確性を重視しながら、日々ていねいに練習を積み重ねることが有効ですが、その前に意識していただきたいのが「下地づくり」です。まずは、これまで学習した計算方法を、お子さんがきちんと理解できているかどうか確認してください。たとえば、低学年なら繰り上がり・繰り下がりのあるたし算・ひき算や九九、高学年なら四則演算や分数・小数のかけ算・わり算などです。これらが定着していないと、どれだけ計算の練習をしても、思うように上達しません。
 また、中学入試では、工夫しながら合理的に計算する力が試されるため、「たし算をするときに、先にこの数字とこの数字を足したら計算が楽になる」といった効率的な計算をする意識も必要となります。そのような工夫に気づく感覚を養うために、低学年のうちから、日常生活のなかで数字に慣れ親しむ機会をできるだけ多くつくっていただけたらと思います。
 今は電子マネーなどの普及で現金を使うことが減り、昔に比べて数字に触れる機会が減っているように感じます。保護者の方は、ぜひお子さんと出掛ける計画を立て、所要時間や買い物の予算などを一緒に考えるようにしてください。家で料理をしながら、人数分の分量を計算するのもよいでしょう。また、2年生になると「かさの単位」を習いますが、1Lが実際にどれくらいの量なのかを把握するなど、数の実感を持っておくことも役立ちます。それは、問題を解いていくなかで「この答えだとおかしい」といった感覚的な気づきにつながるからです。
 ある程度、計算方法を学んだ4年生以上のお子さんの場合は、暗算を取り入れる練習をしてみましょう。たとえば、2桁同士のたし算・ひき算や2桁と1桁のかけ算・わり算をできるようにしておくと、計算問題を解く際にスピードが上がります。

正しいやり方で計算練習を反復
苦手な場合は時間を気にせず解いてみる

 ここまでの下地ができたら、計算力アップのための反復練習が生きてきます。目標と時間を決め、計算をしながらしっかりていねいに手を動かします。入試問題では部分点を与える学校もありますが、文字が読みづらかったり、式が飛び飛びでわかりにくかったりすると、点数にならない場合があります。早い段階から、途中の式を省かずに、きちんと並べて書くことを意識しておいたほうがよいでしょう。計算練習は、正しいやり方を反復しながら、スピードを徐々に上げていきますが、時間の設定は無理せずにできるところから始めましょう。
 なかには、計算練習を苦痛に感じるお子さんもいるかもしれません。その場合は、まずは時間を気にせずに練習をする機会を設けてください。計算嫌いなお子さんは、無理やり早く終わらせようとして計算が雑になり、かえって時間がかかったり、間違えたりする場合があるからです。時間をかけて練習をすることで、式全体をじっくりと見渡すことができます。わたしはゲームにたとえて、「計算問題も『どんな裏技を使ったらうまくクリアできるか』と考えながら作戦を立ててみよう」と話すことがあるのですが、「こうやったらうまくできた」「計算が楽になった」という成功体験を積み重ねると、前向きな気持ちで計算練習に取り組めるのではないでしょうか。
 ご家庭では、お子さんの計算力が上がったか確認するために、「どうやって計算したの?」と質問してみてください。その説明を聞くと、どのくらい理解できていて、どのような工夫を意識したのかがわかります。進捗具合を確認しながら、「じゃあ、この問題を優先してやってみようか」などと、家庭学習の際に促していただけたらと思います。

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