受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあ何でも相談室

 「子どもに算数の途中式を書く習慣をつけさせたいが、なかなかうまくいかない」「途中式を書かないから、計算ミスが多い」といった悩みを持たれる保護者の方は少なくないようです。この場合、どのような対処法が考えられるでしょうか。永福町校校舎責任者にお話を伺いました。

第166回「子どもが算数の途中式を
書かないときの対処法は?」
回答者/永福町校校舎責任者

途中式を書くことは目的ではなく手段
式を書くメリットが高い問題を見極める

 「子どもに算数の途中式をきちんと書くように言っても、答えしか書きません。どうしたらよいでしょうか」と、保護者の方から相談を受けることがあります。特に低学年のお子さんの場合は、まだ式を書くメリットを感じていないのかもしれません。算数の問題には、式を書かないと解き方の方向性が決まらないものや、順を追って一つひとつ計算しなくても、途中式を約分すればより簡単に計算できるものなどもあります。例としては扇形の面積の計算が挙げられますが、そのような式を書くメリットが高い問題が出てくるのは、4年生の秋ごろからです。その時期が来たらサピックスでも式を書く練習をしていきますので、低学年のうちは、式を書かなかったとしてもあまり気にし過ぎなくてもよいでしょう。
 高学年の場合も、必ずしも式を書かなくてはならないというわけではありません。大切なのは、式を書いたら効果が上がりやすい問題を見極める力を養っていくことです。何でもかんでも「式を書かないとだめ」とネガティブなことばを使うよりも、「これは式を書いたほうが解きやすいよ」と伝えたほうが、お子さんも受け入れやすいのではないでしょうか。
 保護者の方に特に意識していただきたいのは、「何のために式を書くのか」ということです。中学校の算数の入試では、答えのみではなく、途中式や考え方などを書く枠が設けられているケースがよく見られます。答えが間違っていても、部分点が与えられる場合もあるため、「途中式はしっかり書かなくてはならない」と考える保護者の方もいらっしゃることでしょう。しかし、採点者は受験生がどうやって問題を解こうとしたのかを理解しようと、寄り添いながら採点してくれる場合が多いです。そのような場合、たとえ筋道を立てた考えが書かれていなかったり、メモ書きのようなものであったりしても、内容をくみ取ろうとしてくれるので、数学の証明問題のように、「どうやって問題を解いたのかを、ていねいにきっちりと説明するように書かなければならない」と、過剰に考える必要はないのです。式をしっかり書くように意識し過ぎてしまうと、かえってお子さんの自由な発想が阻害される恐れもありますので、まずは大らかに接していただければと思います。
 式を書くことは目的ではなく手段です。お子さん自身が問題を理解し、正しい答えを出すためのものだということを忘れないようにしてください。

問題の条件を整理するためには
図や表をかくトレーニングが重要

 さらに詳しく言えば、書くのは式だけとは限りません。与えられた条件を整理するには、図や表をかく力のほうが重要です。日ごろから、線分図やグラフなど、さまざまな図や表をかくトレーニングは十分にしてください。ただ、いきなりできるようにはならないので、まずはサピックスの授業の板書など、模範となる図のまねをするところから始めるとよいと思います。
 また、「式を書かないから、ミスが減りません」という相談を受けることもありますが、式を書けばミスが減るとは言い切れません。特に気をつけなくてはならないのが、本当は計算ミスではなく理解不足の場合があることです。したがって、「式を書くこと」に力を入れるよりも、「なぜ間違えたのか」をしっかり分析するほうが大切だといえます。問題文の上に文字を重ねて書いたり、あちらこちらに計算をしたりするのはミスのもととなります。このような悪い癖は直すのにも時間がかかりますので、最低限「文字の上に文字を重ねないこと」「左上から右下へ順序よく書くこと」は意識させるとよいでしょう。ご家庭で「基礎力トレーニング」やテキストの「計算力コンテスト」の問題を解く際に、スペースが足りない場合は、ノートなどの違う用紙を用意するなどして、訓練を積むとよいと思います。
 なお、計算力をつけるためにお勧めしているのは、「基礎力トレーニング」をあえてゆっくり解くことです。時間制限を設けるカウントダウン方式ではなく、実際に何分かかったかを計るカウントアップ方式で解き、「これだけゆっくり解いたら間違えない」と自信がついたら、徐々にスピードを上げていくとよいでしょう。
 もちろん式を書くことが大切な問題もありますが、書くこと自体にこだわり過ぎず、発想力を大切にしながら学習を進めていただけたらと思います。

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