受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

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 中学受験において、かつては「暗記教科」といわれていた社会科ですが、今では「考える教科」として、より幅広い知識が求められるようになっています。なかには、「時間をかけて取り組んでいるのに、社会の成績が上がらない」と悩んでいるご家庭もあるようです。多様化する社会科の入試問題にどのように対応すればよいのか、柏校校舎責任者にお聞きしました。

第160回「現在の社会科の入試問題に
対応するには?」
回答者/柏校校舎責任者

日常生活での知識が入試でも問われる
最初の段階では基礎知識の定着が重要

 中学受験の社会科の入試問題は、この10〜20年で大きく変わりました。保護者の方の時代には、「暗記する教科」というイメージが強かったかもしれませんが、今では暗記だけでは歯が立たない「考える教科」となっています。知識を問う問題であっても、「この出来事は何年に起こったか」という一問一答形式の単純なものではなく、「次の出来事を歴史順に並べなさい」といった複数の知識を組み合わせなければ解けない問題が増えました。
 教科書には載っていない内容も出題され、過去には、エアコンの室外機の設置方法が問われたこともありました。つまり社会科は、世の中のすべての出来事が出題範囲になり得るのです。日常生活での知識が、入試でも重要視されているといえるでしょう。
 しかし、基礎知識を身につけていなければ、応用問題は解けません。サピックスの授業でも、最初は「デイリーステップ」などで基礎知識を定着させていきます。「社会は考える教科」と言いましたが、最初の段階では暗記も必要なのです。もし暗記が苦手ならば、ノートに書きながら声に出して読むなど、五感をたくさん使って覚えるようにしましょう。大学ノートだと文字が小さくなるため、サピックスの受付で販売している「社会科ノート」(8mm方眼)をお勧めします。

「なぜ?」と思ったことはすぐに調べる習慣を
親子で体験することでも考える力が身につく

 「がんばっているのに、社会の成績が上がらない」というお子さんは、マンスリーテストや組分けテストで伸び悩んでいる場合が多いように思います。これらのテストは、入試問題を意識して作られているため応用問題が多く、単純な基礎知識だけでは解くことができません。これまで暗記をがんばってきたお子さんにとっては、問題が急に難しくなったと感じるかもしれません。基礎知識を身につけたら、応用問題に対応できる力を養っていく必要があるのですが、暗記だけに力を入れている状態だと、「成績が伸びない」と悩んでしまうこともあるのです。
 今の入試に対応するには、まずは確認問題やテストの解き直しをていねいに行うようにしてください。たとえば、「正しいものを選ぶ」という正誤問題であれば、正解がどれかだけではなく、間違っている選択肢のどこが違うのかまで確認し、一つひとつしっかりと正確な知識を得るようにしましょう。
 教科書やテキストに載っていない問題への対策としては、ふだんの生活のなかで「なぜ?」と疑問に思ったことを、保護者の方も一緒に、その場ですぐに調べる習慣をつけてください。今の入試では、たとえば「造船で有名な地域はどこ?」と問うのではなく、「瀬戸内地方で造船が盛んなのはなぜ?」という出題方法に変わってきています。日ごろから「なぜ?」と疑問を抱き、その答えを調べることが、試験対策にもつながっていきます。
 お子さんが実際に体験する「直接体験」も重要です。スーパーでの買い物に一緒に出かけるのもよいでしょう。野菜などの原産地表示を見れば、都道府県名を覚えるのにも役立ちます。過去には、スーパーの売り場の配置について、「肉と魚の売り場がいちばん奥にあるのはなぜ?」という問題が出ました。ほかにも、「博物館で見た国宝が入試に出た」というケースもあり、さまざまな場所に出かけて得た体験が、社会科の勉強になるともいえます。
 わたしが特にお勧めしているのは、『アトラス(地図帳)』の活用です。その土地の特産品や歴史的な出来事などが記載されているので、日常的に地図をよく見ておくとよいでしょう。旅行に出かける機会があれば、事前にその土地のことを調べ、旅行中も『アトラス』を持ち歩いて確認してみてください。実際に体験したことは記憶に残りやすくなります。
 時事問題については、ニュースなどを見て、社会で起きていることにアンテナを張り、「自分はどう思うか」を家族で話す機会を設けてください。入試には、数年前の出来事が出題されることもあるので、4年生ごろから時事問題に触れておくとよいでしょう。
 社会科では、世の中のすべてが教材となります。日ごろからさまざまなことに興味や関心を広げていくと、成績を伸ばすことにもつながると思います。

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