受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあ何でも相談室

 「苦手科目と得意科目をどのように学習したらよいか」は、多くの受験生が直面する問題ではないでしょうか。夏休みを前にして、これからどのように取り組むべきか考えている保護者の方も多いかと思います。苦手科目への向き合い方と苦手意識を変える授業への取り組み方、得意科目とのバランスの取り方について、渋谷校校舎責任者にお聞きしました。

第159回「苦手科目の克服法と
得意科目とのバランスの取り方」
回答者/渋谷校校舎責任者

小さなハードルを一つずつ乗り越えて
達成感を得ながらステップアップ

 これから夏休みを迎えるこの時期には、「苦手科目を克服するために時間がかかり、ほかの科目がおろそかになってしまう」というご相談をよくいただきます。特に5・6年生になってくると、苦手科目に集中し過ぎてしまうというケースも多いようです。苦手科目が少しできるようになっても、ほかの科目が伸び悩み、トータルで見たときにマイナスになることもあるので、バランスを欠いた学習の仕方にならないようにすることが大切です。
 わたしが担当する算数は解き方を学んで、そこから実際に問題を解いていく科目なので、どうしても時間がかかります。そのため、あまり手を広げ過ぎず、ある程度基本的なところから取り組むのがよいと思います。何とか苦手を克服させたいと考え、「あれもこれも」となる保護者の方も多いのですが、順を追ってステップアップしていくのがポイントです。
 基本的に小学生は、まだ「勉強」というものを始めたばかりです。“苦手”といっても、10年以上取り組んできて「この科目は苦手」となっているわけではないので、好き嫌いや気分的な要因もあると思います。まずは小さなハードルを準備し、それを乗り越えさせることによって、子どもに達成感を味わってもらうことが大切です。小さなきっかけで気分が良くなっていき、気がついたら「苦手な科目が好きになる」ということもあります。急いで目に見える結果を求めるよりも、まずは子どもが達成感を得られるようにしていくとよいでしょう。本人にも保護者の方にも、「できない」という意識を持ってほしくないのです。基本的なところを押さえて、それが理解できたら次、またそれができるようになったら次と、一つひとつ段階を踏んでクリアしていくと、徐々に点数に結びついていきます。

苦手科目は「伸びしろ」だといえるが
「大きく負けない」という考え方も必要

 6年生であれば、SS特訓の算数解法力講座のテキストや「基礎力トレーニング」は、基礎から復習できる内容になっているので、入試に向けてもう一度振り返る学習に適しています。自分のなかに「抜け」がないかを確認し、どの単元が不十分かを把握すると、何に時間をかけるべきかがわかります。また、6年生の秋ごろに過去問を解くようになると、実際にどの部分が得点できていないのかが見えてきます。それによって、合格点に届くためにはどこを伸ばせばよいかを意識するようになるので、苦手科目は「伸びしろ」だといえます。
 苦手なところはどうしても目につきやすいものですが、ネガティブな面ばかりを見てしまうと、勉強自体が嫌になり、自信もなくなってしまいます。苦手科目の授業は、「新しいことを学ぶ」という意識で楽しんでもらいたいと思います。算数の授業では、「なんで?」という問いかけをしています。解き方を教えるだけでなく、「なぜそうなるか」を子どもたちに考えさせて、能動的に頭を使わせます。たとえば、あえて誤った解法の例を示して、「なんでこれが間違いなの?」と聞いてみます。すると子どもは、他人の間違いには鋭いので、正しい解き方をきちんと理解し、「そういうことなんだ」と気づいて自信をつけていきます。このように苦手科目の授業であっても「嫌なものが増える」時間ではなく、「楽しいことが増えて自信になる」時間にしていきたいと考えています。
 家庭学習の際には、好きな科目からやり始めて苦手科目を後回しにしてしまい、時間がなくなって、結局、次の日に回すことになる、という声もお聞きします。できれば苦手科目には最初に取り組んで、好きな科目は、ある意味「ごほうび」のように学習するのが望ましいと思います。
 また、苦手科目を必要以上に意識しないことも大切です。全科目が得意できちんと理解しているという子どもは少なく、みんな多かれ少なかれ得意・不得意を抱えているはずです。4科目で勝負する入試の場合は、得意科目できちんと点数を取って、苦手なところで「大きく負けない」ようにする、つまり「トータルで勝つ」という意識も重要になるでしょう。

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