受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

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 サピックスでは、2月から新学年の授業がスタートします。特に算数は、学年が上がるにつれて、学習の習熟度に差が生じやすい科目です。高学年に進級して好スタートを切り、リズム良く学習を進めるために必要なのは、どのような力でしょうか。算数科副教科責任者でもある大井町校校舎責任者から、高学年への進級を控えた3年生にアドバイスをいただきました。

第152回「高学年で算数をリズム良く
学習するために必要なことは?」
回答者/大井町校校舎責任者

難しい単元でも逃げずに向き合って復習
暗算の力を身につけ、土台となる計算技術を磨く

 サピックスの算数の学習では、4年生から1週間ごとに一つの単元を扱うようになり、2週間に1回だった低学年と比べるとペースアップします。家庭学習では、1週間単位で定着が図れるよう授業の復習に取り組む必要があるため、4年生に進級するに当たっては、学習習慣がついているかどうかが鍵を握ります。サピックスでは、低学年のうちは無理なく授業の復習ができるようにカリキュラムを組んでいますので、家庭内でのルール作り(たとえば、○曜日の○~○時に算数の学習をする)を通じて、高学年への進級を見据えた学習習慣をつけましょう。
 では、高学年の学習において好スタートを切り、リズム良く算数の学習を進めるためには、どのような力が必要なのでしょうか。
 まず、算数のカリキュラムは単元ごとの難易度に差があるため、思うように学習が進まないこともあると認識してください。毎週、同じ時間で学習が終わるとは限らず、授業の復習がスムーズに進む週もあれば、想定以上に時間がかかってしまう週もあります。ただし、理解が難しかったり、計算が面倒だったりと、一筋縄にはいかない場合でも、中途半端なまま終わらせるわけにはいきません。その時点で習得しなければならないものが定着できていないと、後々の学習に影響が出てきます。努力をしなければならない場面できちんと努力できるかどうかが重要で、逃げずに学習に向き合う精神力を育んでいく必要があります。
 次に、算数の学習において土台となるのは、やはり計算技術です。4年生に進級すると、まず2けた以上の整数で割る割り算を学習しますが、それに伴い、文章題や図形問題でも一気に大きな数を扱うようになります。問題を解くうえで必要な計算量が増えるため、そうした状況に対処できる計算技術があるかどうかが学習リズムを左右します。低学年のうちに、必要な計算技術を身につけておきましょう。特に、3年生で学習する掛け算や割り算は練習を繰り返し、「(2けた)×(1けた)」や「(2けた)÷(1けた)」といった計算は暗算でできるようにしておくとよいでしょう。
 もっとも、数が大きい場合や暗算が難しい場合には、筆算を用いて計算しなければなりません。必要に応じて筆算を使うことは、ミスを防ぐうえで有効な手立てです。しかし、「52-7」や「15×6」のような暗算で計算すべきものも含め、片っ端から筆算を書こうとするお子さんもいます。「ミスをしたくない」という意識が根底にあるからだと思いますが、これだといつまでたっても暗算の力は身につきません。さらに、高学年になって計算量が増えると、ノートやテキストが筆算だらけになり、書き込む量の多さから結果的にミスへとつながり、時間がかかってしまいます。
 計算力を向上させるために大切なのは、学習の初歩の段階ではミスもある程度は許容しながら、いろいろな方法を試し、暗算や工夫して楽に計算する技術を磨いていくことです。

4年生のときに学習姿勢を形作れるかがポイント
目先の結果や効率の良さだけを追求しない

 最後に、カリキュラムには連続性があるという点を確認しておきたいと思います。異なる単元であったとしても、相互に関連している場合や、過去に学習した考え方を利用しなければならない場合があります。たとえば、4年生で学習するつるかめ算や過不足算、消去算は、それぞれ個別の解法が存在するものの、底流にある考え方は同じです。それを「〇〇算」としてその単元独自の考え方としてのみとらえ、解法の丸暗記で学習を終わらせていては、さらに学年が上がり、複合的な問題に取り組まなければならなくなったときに苦戦します。一見異なるものでも、関連性や共通点をとらえる力が算数の応用力や思考力へとつながります。サピックスでは、3年生後半より定期的にサピックスオープン(実力テスト)を実施し、それまでの学習内容をもとに、複合的に考える問題を出題していますので、テストを通じても応用力や思考力を育んでいくようにしましょう。
 4年生のときに正しい学習姿勢を身につけることができたお子さんは、5・6年生へと進級し、取り組む量が増え、内容が高度になったとしても、比較的順調に学習を進めているように思います。目先の結果や効率の良さを追求するあまり、そのときに身につけなければならない力をつけることができなければ、将来的に苦戦を強いられることになるでしょう。逆説的かもしれませんが、「急がば回れ」で、その時々に向き合うべき内容ときちんと対峙することこそが、リズム良く学習を進めることへとつながります。

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