受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

子育てインタビュー

発達障害・ギフテッドってなに?

誰にだって得意・不得意はある
正しい知識を身につけ、みんなで支援を

 近年、発達障害やギフテッドということばが広く知られるようになり、「わが子もそうなのでは?」と不安を抱く保護者も少なくないようです。今回は、アナウンサーとして活躍するとともに、発達障害やギフテッドに関する情報を発信されている赤平大さんに、SAPIX YOZEMI GROUPの髙宮共同代表がインタビュー。発達障害やギフテッドとされる子どもたちへの向き合い方、支援の方法などについて伺いました。

わが子の特性を見極め
寄り添いながら能力を伸ばす

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髙宮 その人の特性に合った働き掛けが望ましいという考え方は、特性に大きな偏りのない定型発達の人にも有効でしょうね。たとえば、情報のインプットは「耳から」「目から」「書くなどの動きから」など、人によって得意・不得意があり、それぞれにとって最適な方法を選択するのがよいといわれています。

赤平 おっしゃるとおりです。学習面ではもちろん、社会人になってからの指示の方法などでも、それぞれの特性に合った方法を選ぶと、物事がスムーズに運びます。わたし自身も、文字を読むのが苦手で、音声で伝えてもらったほうが頭に入りやすいという特性を持っています。 

 わたしの場合は、それで社会生活に困るということはありません。しかし、得意・不得意の凸凹の度合いがあまりにも激しい人、発達障害やギフテッドである当事者には、やはり適切な支援が必要です。2005年に発達障害者支援法が施行されてから、教育現場での支援も充実しつつありますが、それでも大学における発達障害者の割合は、わずか0.3%といわれています。発達障害者は全人口の6~8%とされていますから、適切な教育を受けられず、本来の力を発揮できていない当事者が数多くいるということです。たとえば、字の読み書きが不得手の人には授業や試験でIT機器の利用を許可するなど、教育現場での柔軟な対応が望まれます。

髙宮 赤平さんは、息子さんに関してどのようなサポートをされましたか。

赤平 息子が小学校に入学した当初は、みんなと一緒に行動できずに目立ってしまい、周りの子から心ないことばを投げ掛けられることもありました。そこで、まずわたしが積極的にPTAの役員を引き受けるなどして、息子の状況を保護者の方々や先生に知っていただくとともに、周囲のご家庭や学校の状況も理解するようにしていました。息子は保育園のころから数字が好きだったので、「算数をがんばって勉強しよう」という話もしました。

 しかし、ADHDの影響で集中することが苦手です。多動性が穏やかになるADHD薬を飲んでいましたが、効果は9時間。朝6時に服用すると15時に切れてしまうので、進学塾への通塾はあきらめました。ただ、薬の効果がある朝の1時間は集中しやすい状態です。息子には「習慣を崩したくない」というASD(自閉スペクトラム症)の特性もあるため、「毎朝7〜8時は勉強しよう」と繰り返して言い、それを習慣化しました。毎朝、息子と一緒に算数検定、数学検定、先取り学習に取り組んでいると、信じられないようなひらめきを見せたり、大人以上の文章を書いたりすることがあります。わたしは、「この子の才能を伸ばすことに、自分の命を使い切ろう」と覚悟を決めました。

中学受験のメリットは
個性に合った学校を選べること

髙宮 発達障害のお子さんにとって悩ましいのが、小学校の先にある進学問題です。息子さんはこの春、中学受験に挑戦し、麻布中学に進学されました。なぜ、中学受験を選択されたのでしょうか。

赤平 一般的な傾向として、中学からは支援が手薄になっていくため、学校選びが重要になります。わたしは息子に相談し、4年生のころには首都圏にある発達障害への支援が手厚い私立校を第一志望に決めていました。6年生のときに体験授業や学校見学に行き、受験の面接も終え、あとは筆記試験だけとなった12月、息子から、「行けるなら、麻布中学に行ってみたい」と言われました。

 実は4年生のとき、父子でお世話になっている教育者の方に「息子さんには麻布が合っていると思いますよ」と言われました。それ以降、「麻布=良い学校」という印象はありましたが、本気で受験するつもりはなく、当然12月の公開模試の成績は麻布の合格レベルには届いていませんでした。ただ、合否にかかわらず、自分の限界に挑戦すれば、その経験は将来に生きると思いました。そこで、模試の答案用紙を見ると、記述のところが真っ白です。本人に聞くと、「頭ではわかっているけれど、書けなかった」とのこと。そうであれば、「記述対策をすればぐっと伸びるはず」と考え、6年生の12月から約2か月、記述対策と麻布の過去問に専念しました。息子の特性を考え、大胆に選択と集中を行ったことが功を奏し、合格することができました。

髙宮 中学に通い始めてから、ご本人の様子はいかがですか。

赤平 環境が激変して日々疲れ果てていますが、授業はおもしろいようです。麻布には個性の強い生徒がたくさんいて、先生方がそれをおおらかに見守る雰囲気があります。少しずつですが、麻布を楽しんでいるように見えるので、環境が合っているのかもしれません。私学は学校によってさまざまな個性があり、本人と相性の良い学校を選べます。そこが中学受験のいいところだと思います。


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髙宮 子育てに悩む保護者の方にアドバイスはありますか。

赤平 発達障害がある子どもの場合、保護者がそれに関する知識を身につけるだけで、子どもの生き方すべてが良い方向に変わっていきます。そして、本人と家族、双方のストレスも軽減します。わたしたち大人を含めて人間は、誰でも大なり小なり、何らかの特性を持っています。ですから、発達障害は自分に無縁だと感じていらっしゃる保護者の方も、発達障害の基本的な知識があれば、日々の生活、学習、仕事をより良く変えられると思います。まずは、知ることから始めてみてください。

髙宮 SAPIX YOZEMI GROUPでは、さまざまな子どもの力を伸ばしたいという思いから、児童発達支援と放課後等デイサービスを行う「あそびや」を開設しています。そうしたサービスの活用も検討していただければと思います。本日は、ありがとうございました。

23年7月号 子育てインタビュー:
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