各大学の詳細なデータを元に面談を行い、進路を共に考えます 　同校では2015年より、学園創立100年を見据えて「東京成徳ビジョン100」を作成し、拡大・多様化し続ける学園の指針としました。そのなかで、「創造性とチャレンジ精神を涵養し主体的に学び、考え、行動する人材を育成する」「グローバル人材の育成の強化を図るとともに社会的評価の獲得を目指す」「大学入試の変化等にともなう教育内容の変化への対応」の三つを重点目標に定め、自律した学習者（Distinguished Learner）を育成するための教育活動を展開しています。

　このうちの一つ、「大学入試の変化等にともなう教育内容の変化への対応」では、大学入試改革の内容と実施の状況を検証し、生徒の高等教育への進学希望をかなえる進路指導を行っています。「大学入学定員の厳格化など、大学受験を取り巻く状況は刻々と変わりつつあります」と話すのは、進路指導部部長の吉川直樹先生です。「なかでも最近は、受験生の勉強以外の能力や経験、適性などを総合的に評価するAO入試と呼ばれていた総合型選抜がかなり増えてきています。本校でも、7割前後の生徒が総合型選抜で、将来の夢をかなえるための進学先を決めています。また、高3生の在籍数を超える学校推薦枠も用意されています」と説明します。

　2023年度は、高3生に対して1,304名分という、潤沢な4年制大学の指定校推薦入学枠を保持し、各大学からの資料を吉川先生が細部に渡ってデータ化しました。これを元に面談を行い、生徒の希望に合った大学選びに役立てています。このデータは先生方で共有され、いつでも最新の情報を確認することが可能となっています。また、生徒の模試結果もデータ化し、6月と11月に一週間ほど設けている進路指導期間の面談の資料としています。「オープンキャンパスなど、実際に大学へ足を運んで得た情報なども担任の先生と共有しています。生徒のための支援ではありますが、同時に先生方のサポートにもなっていると思います」と吉川先生は語ります。

海外大学への進学を希望する生徒も近年増加しています　受験期となる高3次では、担任のほか、希望する進路に強い教員1名が受験指導につく「W担任制」を設けています。入試方法や、志望学部学科は年々多様化しており、担任1人だけでは目が行き届かないこともあります。また、小論文が苦手な生徒をはじめ、音楽や美術など芸術系大学への進学を希望する生徒にも、経験豊かな先生方がきめ細かい指導を行います。担任の先生は、長い受験期間の計画面や精神面のサポート役を担い、場合によっては、親しい第三者である部活動担当の先生なども交えて指導しています。

　また、既卒の生徒にもきめ細かいサポートを行うのが、同校の特長の一つでもあります。吉川先生は、「卒業したら終わりではなく、最低でも大学にきちんと入学するまで、声を掛けていこうと思っています。再チャレンジする大学入学共通テストのための書類を学校に取りに来た既卒生とも面談を行いますし、彼らの受験日程もすべて把握し、高3次の担任だった先生と共にサポートを続けています」と強調しました。

　近年、増加している海外大学への進学を希望する生徒のサポートも行っており、2022年度より（株）留学情報館を経由した「海外大学からの指定校推薦制度」を導入しました。海外大学指定校推薦制度では、一定の英語力や評定平均などがあれば、海外大学50校へスムーズに進学することが可能となります。「海外大への進学を希望している生徒とは、わたしとの三者面談やエージェントを交えての四者面談など、かなりの回数の面談を行います。2024年春は3人が海外大へ進学し、そのうち、イギリスのサセックス大学へは指定校推薦で入学しました」と吉川先生は話します。

　同校は、学力試験では測れない資質を見つける新しい入試であるDistinguished Learner選抜入試などを導入することで、入試改革にも積極的に取り組んできました。これからも「成徳」の精神を持ったグローバル人材を中高6年間で育成する学校として、生徒たちが描く未来につながる大学選びを、先生方が一丸となってサポートし続けます。