受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

School Now

(「25年11月号」より転載/25年10月公開)

二松学舎大学附属柏
中学校・高等学校

地域を舞台に本物の学びに触れ
探究の基盤となる興味の芽を育てる

 中高一貫校として15年目を迎えた二松学舎大学附属柏中学校・高等学校。2022年度より「グローバル探究コース」「総合探究コース」の2コース制を導入し、より充実した探究プログラムを展開しています。今回は、総合学習の時間を活用して行われる中1の探究学習の取り組みについて、グローバル探究室長の森寿直先生と中1学年主任の坂井曜児先生に伺いました。

自然に恵まれたキャンパスの立地を活用
七つのテーマから選び、探究活動を実践

グローバル探究室長
森 寿直先生

 二松学舎大学附属柏中学校・高等学校では、探究学習を軸に主体的に学ぶ力を育成しています。その中心となるのが、独自の「自問自答プログラム」です。学年ごとに多彩な校外学習が用意され、生徒たちは実体験を通して幅広い視点を身につけます。

 「中1の探究学習では『地域を知る』を主要なテーマに掲げ、実際に現地を訪れ“直接触れる”経験を大切にしています。身近にありながらふだんは意識しにくい自然や文化に触れることで、生徒の興味・関心を広げるのが狙いです」と話すのは、中1学年主任の坂井曜児先生です。今年は5人1組の班に分かれ、「田んぼ」「水」「文学」「生き物」「鳥」「ゴミ」「伝統文化」という七つのテーマから一つを選んで活動しています。7月の校外学習では、近隣にある手賀沼で水質改善の調査や水生生物・野鳥の観察、ゴミを利用したアート制作などが行われました。さらに、田植えや稲刈り体験のほか、地域の文学や伝統行事に親しむなど、多角的な取り組みを進めています。9月の文化祭での中間発表を経て、11月には同じテーマで現地を再訪して探究を深め、最終的にポスター発表で成果を披露します。こうして1年間かけて、探究力の土台となるスキルをしっかり培っています。

 グローバル探究室長の森寿直先生は、「本校のキャンパス周辺には、都会では得られない題材が豊富にあります。中1での地域に根差した独自性のある探究学習は、やがて世界に向けて発信できる学びに発展していきます」と強調しました。

卒業生による「折り紙探究講座」を開催
STEAM教育につながるプログラムを体験

中1学年主任
坂井 曜児先生

 同校では今年、卒業生で折り紙作家の勝川東さんを講師に迎え、中1を対象にした折り紙の探究講座を開講しました。中高一貫制の1期生に当たる勝川さんは、東京大学法学部を卒業後、現在は折り紙作家として国際的に活動しています。今回の講座は「母校で折り紙を教えたい」という勝川さんの思いから実現し、当日は折り紙のゴミアートや鳥を題材にした作品制作など、探究学習を踏まえた3時間のプログラムが実施されました。

 坂井先生は、「中1生106名全員で一つの作品を作り上げることをめざし、3時間目には柏市鷲野谷地区の伝統行事『鳥備謝(とりびしゃ)』をモチーフに、紙に描いた木に飾る100種類以上の鳥を折り上げました。生徒たちは『難しいな』と言いながらも楽しみ、『こう折ったらどうなるだろう』と創造力をかき立てられていました」と振り返ります。

 折り紙には数学などの複合的な要素が含まれています。折り方は指示されないため、折る過程で問題解決力や自由な発想力も育まれます。「地域での探究の経験をアートとして表現するこの講座は、まさに『STEAM教育』への広がりを感じさせ、中1の探究プログラムがさらに豊かなものとなりました」と語る森先生は、「折り紙は、“紙”という限られた資源をどう配分して作り上げるかが重要で、それは勉強や日常生活で“時間”という資源を配分するのと同じ」という勝川さんのことばを紹介。「中高一貫教育に移行して15年が経ち、本校の探究学習の意義を理解し、社会で活躍する卒業生が後輩の指導に来てくれるようになりました。学校としての成長も強く実感しています」と喜びをにじませました。

伸びやかな校風の下、自主性を重んじながら
探究力を自然に伸ばすプログラムを整備

 探究のテーマは学年ごとに変化し、学習内容のレベルも段階的に高まります。中2では奈良・京都研修旅行を通じて日本全体に視野を広げ、中3では自問自答プログラムの集大成として8000字の論文にも挑戦します。また、高校では希望者制の「自由探究講座」が週1回設けられ、各自が自由にテーマを追求していきます。中1から積み重ねた探究活動を生かし、総合型選抜で大学合格を果たす生徒もいるそうです。森先生は「入試で問われるのは『自分で立てた問いにどのように取り組んできたか』という経験そのもの。中高時代に、好きなものにとことん向き合うこと自体に価値があるのです」と話します。

 教員自身が興味を持ち、積極的にかかわる姿勢も、探究学習を促す原動力になっています。坂井先生は「中1の今後のプロジェクトとして、かつて手賀沼に自生していた絶滅危惧種『ガシャモク』を学校で育て、いずれ手賀沼に戻すプログラムを考えています」と熱を込めて語りました。同校にはこうした教員の提案を前向きに受け止める土壌がある一方で、生徒の自主性を尊重する気風があります。自由で温かい雰囲気のなかで、生徒と教員が共に楽しみながら学びに打ち込める環境が、自発的な探究活動を後押ししています。

 最後に、2人の先生から次のようなメッセージが送られました。「入学当初は『探究って何だろう?』という生徒がほとんどですが、好きなテーマに取り組むうちに『もっと知りたい』という意欲が自然と芽生えます。本校は、月に一度は校外に出て、さまざまな体験ができる学校です。皆さんも、ぜひ一緒に楽しみましょう」(坂井先生)

 「本校の大きな特長は、やりたいことにとことん挑戦できることです。以前、ある生徒が卒業時に『勉強はつまらないものだと思っていたけれど、この学校で学ぶ楽しさを知った』と伝えてくれました。このような経験は一生の財産となり、これから先の長い人生を豊かなものにしてくれるでしょう。まだ自分の興味や好きなことがわからない人にこそ、本校で“本物の学び”に出合ってほしいと思います」(森先生)

「生き物」班は、手賀沼フィッシングセンターの敷地内にある「ミライいのち池」で生き物調査を実施。生物多様性について理解を深めました

「伝統文化」班は、柏市鷲野谷地区を探検。上新粉を水でこねて鳥の形を作り、木に飾ってお供えする伝統行事「鳥備謝」を体験しました

《学校のプロフィール》

二松学舎大学附属柏中学校・高等学校

所在地
 〒277-0902 千葉県柏市大井2590
 JR常磐線・東京メトロ千代田線・東武アーバンパークライン(野田線)「柏」駅、東武アーバンパークライン(野田線)「新柏」駅、JR常磐線「我孫子」駅から無料スクールバスでそれぞれ約15分 TEL 04-7191-5242
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《各種行事日程のお知らせ》

学校説明会などの情報はこちらよりご確認ください。
www.nishogakusha-kashiwa.ed.jp/jh_about/jh_briefing/

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