1940年に創設された京浜高等女学校から発展した横浜創英中学・高等学校は、「考えて行動のできる人の育成」を建学の精神に掲げる進学校です。2020年度から大規模な学校改革を行い、2025年度には中学に「グローバルコース」を新設したほか、2期制も導入しています。今回は3人の先生方に、同校の教育について詳しく伺いました。
中学にグローバルコースを新設
サイエンスコースとの2コース編成に
校長 本間朋弘先生
横浜創英中学・高等学校は、2020年度からスタートした大規模な学校改革を機に、それまでの学びを見直し、新たな制度を次々と導入しています。校長の本間朋弘先生はその背景について、「かつての教育は、工業化社会を支える均一な人材育成が目的でした。しかし現在は、みずから課題を見つけ、解決する力が求められる時代です。本校では、“与えられた学び”から“みずから選ぶ学び”へと転換を図っています」と語ります。また、小学校では教員の指示に従って学ぶのが当たり前だった子どもが、中学生になって「自分から学びをつかみに行く力」を身につけられるように導くこと、それが同校のめざす教育だと言います。
学校改革の一環として、2025年度から中学でスタートしたのが「サイエンスコース」と「グローバルコース」の2コース制です。従来の本科コースはグローバルコースに再編され、学びの内容を一新しました。サイエンスコースでは、自然科学に特化するだけでなく、科学的リテラシーや論理的思考力、クリティカルシンキングなどを養成します。授業の構成は、初期段階では理科や数学の時間を増やし、それとともに、自然科学に対する探究活動の時間を増やしています。
一方、グローバルコースは、単なる英語教育にとどまらず、SDGsなどの世界的な社会課題に目を向け、英語をはじめとした外国語の学習や異文化理解を通じて、広い視野と課題解決力を育てます。探究活動について、入試広報部部長の松岡徹先生は「サイエンスコースの生徒は自分で選んだテーマを科学的に追究し、グローバルコースの生徒は英語などの外国語も駆使して国際的な視点から考察します。ただし、探究を進めるうえで、科学的リテラシーや国語力はどちらのコースでも必要になることからもわかるように、実際には多くの教科で共通する学びを実践しています」と話します。
英語の授業のうち週2コマは
生徒みずから「学び方」を選択可能
両コースに共通するのが「各界トップランナー授業」です。中1を主な対象としたこの授業では、各分野で活躍するプロフェッショナルの話を聞くことで、生徒が早い段階から興味の幅を広げたり、将来を考えるきっかけをつかんだりすることを目的にしています。過去には、ロケット開発に取り組む植松電機社長の植松努氏や、アナウンサーの赤平大氏などが講師として登壇しました。授業は週1回程度実施されます。生徒たちが「将来のために、何を学ぶべきか」を考え、自分を見つめ直す絶好の機会となっているようです。
2025年度からは2期制もスタートしました。2期制では学期の始まり(4月・10月)の1か月間を「エンゲージメント月間」として、生徒が学びの目的や計画をみずから立てる期間としています。さらに、定期考査を減らす代わりに、各教科で単元テストを実施し、小さなPDCAサイクルを回すことで、目標設定と自己選択を繰り返すしくみをつくっています。
また、英語の授業のうち週2コマは、中1~3混合の「自律学習」を行います。生徒たちは、A「先生に教わる」、B「話し合って学ぶ」、C「AI教材や問題集などを使って個人で学ぶ」、D「英会話やプログラミングなど企業の力を借りて学ぶ」などから、自分で「学び方」を選択できます。副校長の山本崇雄先生は「たとえば、BやCを選択したときに、入学当初は無駄なおしゃべりをしてしまい、学習に集中できなかった生徒も、同じ教室で先輩が勉強に没頭する姿を見て徐々に変化します。中3になるころには全員が自分で目標を立て、主体的に学んでいますね。学年混合の授業だからこそ、下級生が上級生を見て自然に成長していけるのではないでしょうか」と述べました。
クラス・学年を超えて、生徒が「学び方」を選べる中学の英語の授業。企業から英会話やプログラミングを学ぶ教室もあります
中1が受講する「各界トップランナー授業」。各分野で活躍するプロフェッショナルの話を聞き、生徒それぞれが将来を考え始めます
高校では自由選択科目を拡大
学年の枠を超えた教育にも注力
高校では2025年度から「自由選択制の大幅な拡充」と「学年制の柔軟な運用」に取り組んでいます。必修科目を最低限に抑え、多くの授業を生徒の選択に委ねることで、教科や学年の枠を超えた、生徒主体の学びを実現していきます。高1から本格的に始まる「自由選択科目」では、文系・理系といった従来の枠にとらわれず、必要な学びを選び、自分だけの時間割を組み立てます。高2・3では学年混合の授業を行い、ここでは幅広い視点や多様な考え方に触れて、学びを深めていくことができます。中学では完全な自由選択はありませんが、週2回行われる英語の「選択型自律学習」で学び方を選ぶ経験を重ね、高校での自主的な学びへとつなげています。
最後に、3人の先生が受験生にメッセージを送りました。「本校は、目標を持つことで、自分を成長させられる学校です。自分を変えたいという意志を持つ受験生、みずから学ぶ力を持つ子どもに育てたいと願う保護者の方に、ぜひ志望校の一つとして考えていただけるとうれしいです」(松岡先生)。「中学のうちから学び方を選び、目標を立てる経験を積むことで、高校ではさらに将来を見据えた学びが可能になります。この経験は大きな強みになると思います。ぜひ、本校を選択肢の一つとして考えてみてください」(山本先生)。「本校は、生徒が自分から学びをつかみに行ける学校です。入学当初は積極的でなかった生徒も、中3になるころには驚くほど成長しているので、安心して入学を検討してください」(本間先生)。