2004年に設置され、2024年に20周年を迎えた東京女学館中学校・高等学校の「国際学級」。世界各国から集まった海外帰国生と、日本で生まれ育った一般生が、同じクラスで6年間共に学ぶのが大きな特徴です。高い英語力を育成しながら、異文化理解を深め、リーダーシップを養う国際学級の学びについて、2人の高2生に伺いました。
帰国生と一般生が共に学ぶ6年間
毎日が学びの連続だった
左から、一般生のS.Sさん、帰国生のS.Yさん。2人が持っているのは、WSCの決勝大会出場者がもらえるアルパカのぬいぐるみです
東京女学館中学校・高等学校の国際学級は、海外帰国生と一般生との間に垣根を設けず、6年間同じクラスで共に学ぶ点が大きな特徴です。帰国生である高2のS.Yさんと、同じく高2の一般生S.Sさんに、国際学級での学びについて詳しく伺いました。
帰国生のS.Yさんは、アメリカのニューヨークで生まれ育ちました。日本に帰国後は、帰国生が多い学校に進みたい気持ちがあったと言います。「いくつかの学校を見学するなかで、一般生と帰国生との間に壁がなく、同じクラスで共に学べることや、研修や留学制度が充実していることにひかれ、女学館に入りたいと思うようになりました」と振り返ります。
一般生のS.Sさんは、小学生のときから英語が大好きで、6年生ではすでに高校レベルの英語力を身につけていました。「将来は英語を使って仕事をしたいと考えていたので、帰国生と同じクラスで学び、いろいろな国の文化を体感できる女学館の国際学級は、わたしの希望にぴったりでした」
国際学級の英語の授業は、少人数グループによるレベル別のクラスで、英語圏の現地校のように、テーマに応じてディスカッションをする機会が多くあります。一般生のS.Sさんにとっては、海外の文化に詳しい帰国生の意見を聞けることが勉強になったといいます。
2人が国際学級でいちばん思い出に残った行事として挙げたのは、高1生が全員参加する「ボストン・リーダーシップ研修(BLAST)」です。「アメリカのボストンに11日間滞在し、現地の女子大学生とのディスカッションや、有名大学へのキャンパスツアーなどを行いました。大学の寮生活も体験できて、とても新鮮でしたね」とS.Sさん。一方のS.Yさんは、本研修で参加したボランティア活動に感銘を受けたと言います。「寄付された洋服や文房具を、貧しい人々に配るボランティアを体験しましたが、『誰かを助けるのはこんなに充実した気持ちになるのか』と感動しました。日本に帰国後もボランティア活動に参加したり、ボランティア活動の現状を学ぶ講演会に出席したりするようになりました」
1年間の留学や、世界大会への出場は
夢を見いだす機会になった
ボランティア活動に興味を持ったS.Yさんは、高1のときに女学館の留学制度を活用して、1年間アメリカのマサチューセッツ州にあるDana Hall Schoolに留学しました。「学校では友だちがすぐにできました。現地では寮に滞在し、毎週末にはみんなで映画を観たり、カラオケをしたりといったアクティビティに参加して、とても楽しかったですね」と振り返ります。
「学業のかたわら、毎週土曜日の午前中にはボランティア活動に参加しました。アメリカの抱える社会問題を幅広く知りたいと考えていたので、週ごとにボランティアの団体を変えて、さまざまな内容の活動に参加しました」とS.Yさん。支援を受ける人々から要望を聞き取ったり、トラブルに対処したりするなかで、ボランティアの仲間と連携する大切さを学んだといいます。
そんなS.Yさんが活動を通して最も興味を持ったのは、「女性の生理の貧困」に関する問題だと話します。「貧しい女性たちが生理用品を満足に買うことができない現実を目の当たりにして、大きな衝撃を受けました。アメリカではこの問題にかかわる活動がとても多いのですが、日本ではまだまだ理解が足りている状態ではありません。将来はわたしもNGO団体を設立して、女性の権利を守る活動をしたいと思うようになりました」
一方のS.Sさんは、高2のときに、アメリカのイェール大学で開催されたThe World Scholar's Cup 2024(以下WSC)の決勝大会に出場し、ライティング部門で金メダル、知識部門art分野で金メダル、知識部門(チーム)で銀メダルを獲得するという快挙を成し遂げました。WSCとは英語で教養を競う大会で、世界約40の国と地域の中高生が集います。S.Sさんも多くの出会いや学びがあったと言います。
「決勝大会では、パキスタンの女の子とチームを組みました。メールでの連絡は事前にしていましたが、実際に対面すると大人びていて驚きました。競技のなかでも、ディベートはチームで協力して行うため、反論する際にどの点を強調するかなど、チーム内で意見を統一しなければなりませんが、チームメートとすぐに仲良くなれたこともあり、スムーズに意思疎通ができました。大会を通して、論理的思考力や、英語の多彩な言い回しを学びましたね」
さらに、WSCは大会そのものもとても楽しく自由な雰囲気で、当日ランダムに振り分けられたチームで宝探しをする交流イベントもあったとのこと。たくさんの国の友だちができ、今でも連絡を取り合っているそうです。
「大会に出場した経験などを通じて、英語を教えることに興味を持ちました。これまで自分で英語を学んできて、日本国内にいながらでも、高い英語力を身につけることは可能だと感じています。将来は、日本人がもっと英語に親しめるような活動をしたいと考えています」
最後は2人から小学生へのメッセージです。
「第一志望校合格への近道は、やはり基礎をきちんと固めることだと思います。ちなみに、英語が上達するコツは、英語自体を学ぼうとするのではなく、歴史や文化など、自分の興味のある分野を学びながら英語に触れることです」(S.Yさん)
「わたしも『この本のシリーズが好きだから英語で読んでみよう』などと、自分の興味に紐付けながら英語の勉強をしています。勉強が嫌いだという意識を持たないことが、モチベーションを保つコツです」(S.Sさん)
S.SさんがWSC決勝大会で獲得した金メダルと、事前学習ノート
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WSC決勝大会の授賞式で、メダルを手にするS.Sさん(左)とチームメイト
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アメリカの学生寮では、週末のアクティビティも楽しかったとS.Yさん(左から2番目)
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