「汚れなきマリア修道会」を設立母体に持つ晃華学園は、1963年に設立された女子のミッションスクールです。カトリックの教えに基づく教育活動の下、高い志と広い視野を持った生徒の育成をめざしています。そんな同校の教育の集大成として位置づけられているのが、高3の沖縄修学旅行です。その狙いと内容について、広報部長の安東峰雄先生と高3学年主任・広報部副部長の長岡仰太朗先生にお聞きしました。
事前・事後学習をじっくり行い
探究学習の手法を完成させる
広報部長
安東 峰雄先生
高3学年主任・広報部副部長
長岡 仰太朗先生
晃華学園では、世界の取り組むべき重要課題である五つのテーマ(生命・自然と環境・正義と平和・奉仕と福祉・女性の使命)を、6年間の学校生活のなかで、総合的・体系的に学習します。そして、この五つのすべてを網羅する教育活動として同校が重視するのが、高2から高3に進級する春に行われる、3泊4日の沖縄修学旅行です。
広報部長の安東峰雄先生は、この修学旅行を「学園生活の集大成」と表現します。単に旅行を楽しむだけではなく、事前・事後学習をていねいに行うことで、中1から体系的に進めてきた探究学習を完成させるとともに、これからの未来を担ううえで大切な、自然や平和の尊さを知る機会にしてほしいと考えているからです。
今年の修学旅行は、4月1~4日に行われましたが、事前学習が始まったのは昨年の7月ごろ。ワークシートや映像を用いて沖縄の地理・歴史への理解を深めた後は、沖縄の魅力や課題を調べるグループ学習へと移行していきます。グループは原則3人1組。今年は全48班に分かれて活動しました。それぞれにテーマを見つけ、沖縄の魅力をどう維持していくか、あるいは、沖縄が直面する課題をどう解決していくかについて、仮説を立てながら考察を進めていきます。
2月には、中間発表としてポスターセッションが実施されました。調べたことをポスターにまとめ、制限時間1分でプレゼンを行い、教員・同級生・保護者の投票によりナンバーワンを決めます。「最優秀作品は沖縄の食べ物と肥満率の高さに着目した研究でした。限られた字数と時間で成果を披露するため、どのチームも創意工夫が見られ、非常に見応えがありました」と、安東先生は振り返ります。
この探究活動のゴールは、旅行後に、課題の検証結果を新聞記事にまとめることです。「旅行前に立てた仮説が、現地の人の話を聞くことで覆されたり、異なるアプローチ法が必要だと気づかされたりします。確かな目的意識を持って現地に赴くからこそ、修学旅行がより実り多きものになるのです」(安東先生)
もう一つの事前学習として、今年は探究活動と並行しながらある企画に取り組みました。それは、ひめゆり平和祈念資料館主催の「第6回“ひめゆり”を伝える映像コンテスト」です。有志3チームがひめゆり学徒隊にまつわる映像作品を応募したところ、1チームがひめゆり映像賞(最優秀賞)を受賞。実際に修学旅行でひめゆり平和祈念資料館を訪れた際に、館長の厚意で授賞式を開催してもらったそうです。加えて、ほかの2チームの映像も特別上映されるなど、生徒にとってはひときわ思い出に残る訪問になりました。
その学年の興味や関心に合わせて
独自性の高いアクティビティーを用意
今年の沖縄修学旅行を引率した高3学年主任の長岡仰太朗先生は、同校の修学旅行について「毎年、大枠のテーマは変わらないものの、細かいアクティビティーはその学年の興味や関心によって異なります。ある程度、独自性が認められるのも大きな特徴です」と話します。また、安東先生も「沖縄の魅力を知ってほしいという思いから、修学旅行にありがちな簡易的な宿ではなく、一流のリゾートホテルに泊まるのも本校のこだわりです」と付け加えました。
今年の平和学習では、ひめゆり平和祈念資料館、沖縄県平和祈念資料館、糸数アブチラガマ、佐喜眞美術館を訪れ、歴史的な遺構や資料から戦争の悲惨さと平和の尊さをあらためて学んだほか、沖縄で暮らす人々との交流を通して、“生の声”に耳を傾けました。さらに、2日目の夜にホテルで行われた平和講話では、サプライズゲストとして、THE BOOMの元ボーカル宮沢和史さんが登場。「県外の出身でありながら、沖縄のために精力的に活動を行う彼のスタンスには、生徒たちにも共感できる要素がたくさんあるのではないかと考え、講話をお願いすることに決めました」と安東先生。続けて、「生徒たちは実際に沖縄で暮らす人と、県外から沖縄の支援に携わる人の二つの立場を知ることで、沖縄の抱える課題をよりリアルにとらえることができたようです」と話します。
ひめゆり平和祈念資料館で、「第6回“ひめゆり”を伝える映像コンテスト」最優秀賞の授賞式が行われました
|
図書情報センターやタブレット端末を使った事前学習により、深い学びにつなげています
|
事前学習の後半では、各班が調べたことを発表し合うポスターセッションを実施しました
|
6年間の探究活動の積み重ねが
社会でも通用するスキルとして結実
2日目夜に行われた平和講話後の記念撮影。宮沢和史さんは代表曲『島唄』の由来などについて話してくれました
長岡先生は、約9か月かけて事前学習、修学旅行、事後学習をやり遂げた生徒たちを見て、「課題発見力と課題解決力が自然な形で身についていることに成長を感じました」と感想を述べます。同校では、中2で「地域調べ学習」や「奈良京都学習旅行」を行い、中3では8000字の「課題研究論文」に取り組むなど、学齢に合わせてさまざまな探究活動を設定していますが、その積み重ねが実践的な能力として結実していることを実感したそうです。
安東先生も、「ここで学んだ探究のサイクルは、大学入試はもとより、社会人になってからも役立つスキルとして彼女たちの人生を支えてくれることは間違いありません。6年間の積み重ねの大切さを感じるとともに、これこそが中高一貫校の良さなのだと思います」と語ります。
最後に安東先生は、今後の中学の奈良京都学習旅行の方向性についても言及し、次のように締めくくりました。「これまでは寺社巡りがメインでしたが、今後は町屋や京都の老舗などの見学も取り入れながら、より実践的な探究活動ができるよう、内容をさらに強化していく予定です。今の受験生が入学するころには、さらにパワーアップした修学旅行を楽しんでいただけるはずなので、ぜひ楽しみに入学してください」