「教養ある堅実な女性」の育成をめざし、90年以上の歴史を刻んできた江戸川女子中学校・高等学校。校訓「誠実・明朗・喜働」を受け継ぎながら、生徒たちが伸び伸びと活動できる環境を整えています。今や同校の伝統行事ともいえる「ベートーヴェン第九発表会」と、現在の施設・環境や入試制度について、音楽科の佐野直樹先生、中学入試対策委員長の吉田秀徳先生、中学入試対策委員の水嶋瞳先生にお聞きしました。
大勢で一つのものをつくり上げ
卒業後も忘れることのない経験に
音楽科
佐野 直樹先生
毎年3月の恒例行事となっている「ベートーヴェン第九発表会」は、今年度で30回目の開催となります。「何か特徴があるもの、生徒のためになるものを始めたいと考えたところ、『第九』が思い浮かびました。吹奏楽部の10周年記念コンサートのときに、高1の生徒がゲストとして参加し、吹奏楽と合わせて歌を披露したのが初めての演奏でした」と振り返るのは、第1回から指導を担当する佐野直樹先生です。
その後は少しずつ形態を変えながら発展していき、同校ならではの行事として定着しました。もともとは吹奏楽と女声合唱だけでしたが、弦楽部を創設し、11回目からは吹奏楽に弦楽器も加えたオーケストラの演奏に。さらに、生徒の父親など男性の保護者と職員にも協力してもらい、男声合唱も加えた形となって現在も続けられています。節目となる10回目はNHKホール、20回目はサントリーホールで公演を行いました。
コロナ禍により残念ながら中止になった年もありましたが、今年3月の29回目は観客を迎えた本来の姿に戻って開催できました。ただし、部活動が制限されていた影響が残っており、吹奏楽と弦楽の演奏は高校生だけで賄うことができず、OGの力を借りています。「生徒たちが中心となってつくり上げる第九に戻すことが現在の目標」とのことです。
高1では、週2コマある音楽の授業のうち1コマを第九の合唱の練習に充て、4月から約1年かけて練習します。「専門的な知識がない生徒たちに第九を教えるのは大変ですが、ただ歌うだけでは達成感は得られないので、生徒の反応を見ながら、ある程度高いレベルをめざして指導しています。大勢で一つのものをつくり上げるという経験から、何かを感じ取ってもらえたらいいなと思っています」と佐野先生は熱意を持って語ります。
保護者が担当する男声合唱の練習は、1月から7~8回行います。今では毎年参加する常連のメンバーも増え、100人程度が集まります。お子さんとの貴重な共演の機会を楽しみにしている方も多いようです。
今年からはドイツ大使館がこの催しを後援することになりました。大使館の関係者は演奏を聴いて、「なかなか本格的ですね」という感想を述べたそうです。佐野先生は「この行事そのものが、携わった皆さんのためになることが大切だと考えています。クラシックに興味がなかった生徒が、1年間やってみて『歌ってよかった』と思ってくれたら、わたしもがんばったかいがあります。歌ったことを誇らしく感じている卒業生も多いと聞きます。これからも、この伝統行事を発展させながら続けていければと思っています」と結びました。
落ち着ける高3専用の校舎は
勉強に励みながらくつろげる空間
中学入試対策委員
水嶋 瞳先生
2022年に創立90周年を迎えた同校。その年の3月に完成したのが、高3(6年生)専用棟である西館です。水嶋瞳先生は、西館を建てた経緯を次のように述べます。「18歳成人となったこともあり、高3の生徒を大人として扱い、ほかの学年とは違う過ごし方ができたらと考えました。教員にも『最高学年で特別なことを経験して卒業させたい』という思いがあったので、高3専用の校舎を新設しました」
西館には一般教室8室、演習室3室に加え、高3専用の自習室、グループでの学習や憩いの場として利用できるラウンジが備えられています。壁や窓も厚くなっているためとても静かで、ゆったりとしたスペースを気兼ねなく使えて、受験勉強に集中できる環境が整っています。「高3だけの空間になって、落ち着きが出てきたと思います。環境はとても重要だとあらためて感じています」(水嶋先生)
2022年には制服も変更。スラックスを採用し、さまざまなコーディネートが可能となりました。「生地も軽くなり、使い勝手が良くなったと生徒たちに好評です。これからも生徒と一緒に考えながら、時代の変化とともに環境面も改良していきたいと思っています」と水嶋先生は話します。
多種多様な入試のなかから
自分の強みを生かせるものを選択
中学入試対策委員長
吉田 秀徳先生
同校の中学入試には、さまざまなタイプの試験があるため、どの受験生も自分の得意なことを生かして選べるのがメリットです。2024年度には適性検査型入試を新設。「48名の合格者に対して、21名が入学しました。予想以上に入学者が多く、入学した生徒のポテンシャルも高いと感じています」と吉田秀徳先生は説明します。
一方、特徴的な入試としては、基礎学力型入試(一般・帰国生)が挙げられるでしょう。試験科目は国語・算数の2教科、または英語を加えた3教科。国語・算数は小学校の教科書レベルの問題を出題し、英語は一般は英検®4級、帰国生は英検®3級レベルです。3教科で受験した場合は、得点の高い2教科の合計点で判定します。基礎学力型で入学した生徒もしっかり勉強しているので、授業についていくのが難しいなどということもないそうです。
さらに、定番の一般4科入試、英検®2級レベルの英語と面接が試験科目の英語特化型入試(一般・帰国生)もあります。英語特化型入試の合格者は全員が国際コースになりますが、ほかの入試でも条件を満たせば国際コースに入ることができます。吉田先生は「募集要項で合格の目安を示しているので、対策が立てやすい入試です。問題の傾向や難度も大きく変えていないため、過去問にきちんと取り組めば点数が取れると思います」と強調しました。
最後に吉田先生と水嶋先生は、受験生に次のようなメッセージを送ってくれました。
「本校には多種多様な入試があるので、自分の強みを生かした入試を選んでチャレンジしてください。入学してからその強みをしっかり伸ばしていきます」(吉田先生)
「本校は勉強に力を入れながら、『人を育てる』環境を大切に考えています。実際に学校を自分の目で見て選んでいただけたらと思います」(水嶋先生)
※英検®は、公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。
今年度で30周年を迎える「ベートーヴェン第九発表会」。2013年の20周年の記念公演は、サントリーホールの大ホールで行われました
高3(6年生)専用棟の西館。受験勉強に励みながらも、最高学年としての思い出を作れる充実した環境が整っています