2021年に女子校から共学校となり、4年目を迎えた光英VERITAS中学校・高等学校。2024年春には、高校から入学した初めての男子生徒が卒業しました。男女共学化や、「探究」をはじめとした独自の学びを通じて、生徒たちはどのような成長を遂げているのでしょうか。進路指導部長の松浦享子先生に、2024年度の大学進学実績や、共学化以降に入学した生徒たちの様子、今後の展望などについて伺いました。
大学と連携した学びによって
理系学部への進学者が大きく増加
進路指導部長
松浦 享子先生
2024年春、光英VERITAS高等学校の一期生129名が卒業し、現役進学率94.6%、4年制大学進学率86.0%というすばらしい実績を挙げました。特に注目したいのが理系学部への進学率で、2023年度には26%だったものが、2024年度には41%にまで増加しています。
その要因について、進路指導部長の松浦享子先生は、「理系分野に興味を持つきっかけづくり」の成果が表れていると話します。「放課後には、『だれでもサイエンス』というプログラムを年間5~6回開催しています。これは中学や高校、学年の枠を超えて、誰でも参加できる理科実験のイベントです。過去には、科学マジックや科学クイズを一緒に行う『わくわく科学教室』、校舎の4階から卵を割らないように落とす方法を工夫する『エッグドロップコンテスト』などを実施してきました。こうしたイベントを通して、サイエンスに対する興味・関心が高まっています」と説明します。
大学と連携した学びも、理系分野に興味を持つきっかけとなっています。2020年4月には、東京理科大学と連携協定を締結。大学教員による模擬授業のほか、大学からのインターンシップの受け入れを通して、生徒たちが大学生に直接質問できる機会をつくっています。「今後は、キャンパスツアーといった、学外に飛び出して大学の学びに直接触れるプログラムを考えていく予定です」と松浦先生。高大連携プログラムを、今後もさらに充実させていきたいと説明しました。
生涯学びたいことを見つける「探究」
個人研究の成果を、大学受験に生かす生徒も
共学化以降に中学校に入学した生徒たちは、すでに高1生となっています。生徒たちの様子について、松浦先生は「中1から探究の授業をしてきたおかげで、主体的に学習する姿勢が身についています」と話します。「たとえば、東京大学の研究室を訪問する、希望制のイベントの参加者を募集した際も、共学化以降に入学した生徒たちは、積極的に手を挙げてくれました。さまざまなことに対する好奇心が強いと感じます」
同校の探究の時間は、未知の知識や体験に関心を持ち、生涯にわたって学び続ける姿勢を育むなかで、将来どのように人・社会・自然とかかわっていきたいかを探すものです。この時間では、各学年ごとに職業研究や職場体験、地球の課題などを学ぶゼミを通して、生徒たちの興味・関心を刺激します。
高2になると、その集大成として、自分の進路決定に直結するテーマを設定した個人研究を行います。「たとえば、地震大国日本における建築、縄文時代の精神文化と暮らし、動物と人間が共に幸せに生きるための鍵など、テーマは非常に多岐にわたります。これらを深掘りしていくうちに、進学したい大学も自然と決まっていくのです。地震大国日本における建築を研究した生徒は、建築学を学べる大学に進学しました」と松浦先生。自分が疑問に感じることや、興味のある事柄を探す探究活動が、進路決定の大きな後押しになっています。
探究の成果は、2024年春に卒業した生徒たちの動向にも表れています。内部推薦や指定校推薦での受験者が減少し、個人研究の成果を生かした総合型選抜(AO入試)での受験者・合格者が増加したのです。希望の大学に進むための武器としても、探究の学びは役立っています。
ヴェリタスアフタースクール(放課後自習室)の様子。大学生9名が学習支援を行います
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年に数回実施している「わくわく実験教室」。写真は、水素と酸素の化学反応実験をしたときの様子です
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卒業生講演会では、いくつかのグループに分かれて、卒業生とディスカッションをします
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現役大学生が常駐する「放課後自習室」を導入
きめ細かい学習サポートが可能に
同校では、学習サポートにも力を入れています。代表的なものがヴェリタスアフタースクール(放課後自習室)で、学習メンター9名が夜7時まで常駐して学習支援を行っています。「学習メンターは、最難関大学のさまざまな学部に在籍する現役大学生です。日々の学習や大学受験のアドバイスはもちろん、探究論文の作成指導や、英検®対策指導、各種コンクールの参加サポートなども行います」と松浦先生。現役大学生から具体的なアドバイスを得られるとだけあって、多くの生徒が自発的に参加しています。
さらに、最難関の国立大学・私立大学の志望者に対しては、相応の知識・能力を持つ学習メンターや教員と連携を取り合い、入試対策講座を実施しています。こうしたきめ細かいサポートによる成果も出ており、2023年度には東京大学の合格者も誕生しました。
「学力はもちろん大切ですが、生徒たちには、単に自分の学力と大学の偏差値のみを目安に進路を選択するのではなく、自分の力を将来どのように人や社会とつなげていくかを考えてほしいと思います」と松浦先生。そのための手段として、同校では探究の時間と連携した、将来の目標を見つけるプログラムを設けています。
たとえば、中2で行う「Catch Your Dream」では、さまざまな企業で働く社会人を招いて、どのような人生を歩んできたのかを伺います。社会で活躍する人の話を通して、生徒たちは自分の将来像に近づくために、どのようなアプローチをしていけばいいかを考えます。
また、中3の夏休み前に行う卒業生講演会も、生徒たちの進路に大きな影響を与えています。この講演会では、卒業生がみずから学習方法などをまとめたスライドを作り、その内容をプレゼンテーションします。後輩のために強い熱意を持って取り組んでいるようで、松浦先生も「本校を巣立った生徒たちの成長を感じて感慨深くなります。特に昨年度はスライドとプレゼンの出来がとても良く、探究学習で学んだことが生かされていると感じました」と振り返ります。
最後に、松浦先生は受験生へのメッセージを送りました。「本校は、人・社会・自然に貢献する地球を守る自覚と実践力のある次世代リーダーの育成をめざしています。今ははっきりした目標がないけれど、やりたいことを見つけて、それに向かって努力していきたいという子には、ぴったりの学校だと思います。ぜひ説明会などに参加して、学校の雰囲気を体感してください」
※英検®は、公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。