受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

School Now

(「23年12月号」より転載/23年11月公開)

市川中学校・
高等学校

学びに対する興味・関心を広げる
教科にとらわれない多彩な講習

 市川中学校・高等学校では「個性の尊重と自主自立」を教育方針に、生徒みずからが考え、行動する力を身につける教育を実践しています。正課の授業に加え、長期休暇中の講習も充実しており、教養を深める教科横断型のプログラムなど多彩なカリキュラムで生徒たちの力を伸ばしています。その具体的な内容について、現在中2・3に在籍するサピックス卒業生4人と、数学科の松本昌也先生、社会科の本川梨英先生に話を伺いました。

「第三教育」にふさわしい
長期休暇中の講習が充実

左から、松本昌也先生、池尻帆夏さん(サピックス西船校OG)、川口晴生さん(サピックス新浦安校OB)、松本彩良さん(サピックス松戸校OG)、中野壬月さん(サピックス西船校OB)、本川梨英先生

 市川中学校・高等学校は、親からの第一教育、学校で受ける第二教育に対して、「自分で自分を教育すること」を「第三教育」と名づけ、教育の柱としています。

 その象徴といえるのが、長期休暇中に行われる自由選択制の講習です。中1から高3まで、すべての学年を対象に開かれており、中1~高2は、1ターム原則5日間の講習を、最大5テーマまで自由に組み合わせることができます。さらに、高3は午後も受講できるので、より多彩な組み合わせが可能とのことです。

 これらの講習について、「内容は二つに大別される」と話すのは数学科の松本昌也先生です。「一つは通常授業に近い内容です。教科ごとに、基本事項の確認や問題演習を重点的に行います。もう一つは、教養を深めるための講座です。教科の枠にとらわれず、生徒たちに深く考えてほしいことをテーマに置いています」

 教養を深めるための講座について、社会科の本川梨英先生は「教員の専門分野をテーマにしたものが多く、教員自身も楽しみながら授業を展開しているのが特徴です」と話します。教員が個人的に所有する図録や資料を交えながら、通常授業ではカバーできない深いテーマに取り組んでいます。

歴史と数学を組み合わせた
教科横断型の異色の講座も

江戸時代の和算の歴史を知り、算額の問題に挑戦した講座「歴史×数学=魅惑の京都」。歴史と数学の組み合わせに興味を持つ生徒が多かったようです

 今年の夏休みに中2を対象に行われた講習の一つが、「歴史×数学=魅惑の京都」です。もともと歴史が好きだという池尻帆夏さんは、この講座名を目にしたとき、「歴史と数学という初めて見る組み合わせに驚きました」と振り返ります。川口晴生さんも「数学が京都とどうつながるのか、興味をそそられました」と受講のきっかけを話してくれました。

 開講の狙いについて、松本先生は「中2は毎年11月に宿泊研修で京都に出掛けます。その事前学習を兼ねて、数学と歴史のさまざまな側面から京都の文化に触れたいと考えたのです」と説明しました。

 具体的に、どういった切り口から京都にアプローチしたのでしょうか。講習の中心に据えたのは、江戸時代に流行した「算額」です。算額とは、数学の問題が書かれた絵馬のことで、学問成就を祈念して多くの人が奉納したといわれています。松本先生は、北野天満宮など京都にある神社・寺院に奉納された算額から図形や代数など、中2の知識で解けそうなものをピックアップし、講習で取り上げることにしました。

 実際に算額を解いた感想について、池尻さんは「どれも難しい問題ばかりでしたが、ペアやグループで相談する時間があったので、友だちとわいわい解き合うのが楽しかったです」と述べます。また、川口さんも「ぼくは数学オリンピックの出場をめざしているのですが、算額のなかには現代の数学オリンピックに出題されてもおかしくない問題もあって、とても興味深かったです」と話します。

 松本先生が「単に『問題を解いて終わり』ではなく、その先につながるような授業展開を心がけました」と話すとおり、この講習は、もともと数学が得意な生徒にはさらにその長所を伸ばし、数学が苦手な生徒にはその苦手意識を払拭してもらうよいきっかけとなりました。「3学期は算額を通常授業でも取り上げ、学年全員で挑戦したいと考えています」と松本先生。講習で得た手ごたえを授業に生かし、数学への興味喚起につなげていきたいとのことです。

講習で学んだ情報のまとめ方
今後の学びに生かしてほしい

「戦争プロパガンダを知る~戦争ビラを素材として~」では、グループごとに振り分けられたビラの内容を読み解き、全員の前で発表しました

 一方、中3を対象にした講習では、「戦争プロパガンダを知る~戦争ビラを素材として~」が開講されました。本川先生は、その趣旨についてこう説明します。「太平洋戦争時、軍がどういう宣伝をして民衆を戦争に巻き込んだかを分析する内容で進めました。ここで扱う伝単(宣伝ビラ)は、日本軍が東南アジアにまいたものであったり、米軍が日本国内にまいたものであったりとさまざまです。その立場や背景の違いを読み解いてもらおうというのが目的の一つでした」

 講習内で、日本軍が中国にまいたビラを担当した松本彩良さんは、「中国語は翻訳アプリを使って意味を調べました。『日本に従えば良いことが待ち受けているが、蔣介石についていくと地獄が待っているぞ』というメッセージが書かれているのですが、文字や絵などの意味を一つひとつ調べていくのがおもしろかったです」と話します。また、中野壬月さんも「ぼくたちのグループは米軍が日本にまいたビラを担当しました。『餓死や病死した者は靖国神社に祀られることはない。このまま戦っても、あなたたちは靖国神社には行けないのだから、早く降伏したほうがいい』という、当時の日本人の心情を理解し、そこをうまくくすぐる巧みなメッセージに驚きました」と語ります。

 この講習を受講した生徒は、一次資料の読み方やレジュメの作り方など調べ学習の基本をひと通り学んだ後、8月後半に開かれた希望制の近現代史のゼミに臨みました。そこでゲストファシリテーターを務めたのは、歴史学者で一橋大学名誉教授の吉田裕先生です。こちらのゼミでは、「戦時中に書かれた日記を読み解く」というテーマで、ビラよりももっと大量の資料に当たったそうですが、「参加した生徒たちのなかでも、特にこの二人はわかりやすくまとめ、上手に発表してくれました」と本川先生は、松本さんと中野さんのがんばりをうれしそうに振り返ります。

 本川先生は、「歴史によくある『〇〇年に△△事件が起きた』という事実は、実は抽象に過ぎず、そこにある民衆の生活にこそ、その時代のリアルがあることを生徒たちは学んだと思います」とこの講習の収穫を述べたうえで、「今回の講習で習得した多角的なものの見方や情報をまとめる力を、高校や大学での学びにつなげていってくれたらうれしいですね」と結びました。

《学校のプロフィール》

市川中学校・高等学校

所在地
 〒272-0816 千葉県市川市本北方2-38-1
 JR総武線・都営新宿線「本八幡」駅、JR武蔵野線「市川大野」駅よりバスで各11分、「市川学園」下車。JRほか「西船橋」駅より直通バス20分(登下校時のみ運行)。京成本線「鬼越」駅より徒歩20分 TEL 047-339-2681
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