芸術教科にも力を注ぎ
各分野の専門家から指導を受ける
学習院女子中・高等科長
長沼 容子先生
広野 貴校では「本物に触れる」ことを大切にした教育を行っていると伺いました。具体的に教えていただけますか。
長沼 本校では「全人教育」の理念の下、芸術教育にも力を入れています。高等科の芸術は日本画・西洋画・工芸・声楽・器楽・書道から選べ、指導はご自身も芸術活動を行っている専門の教員が行います。施設も充実しており、たとえば西洋画・工芸の教室はそれぞれホームルーム教室三つ分の広さがあり、伸び伸びと制作に取り組めます。
音楽についても、音楽室と練習室が二つずつあり、さらにコントラバスなど大型の楽器を保管する部屋も備えています。器楽の授業は、高1は初心者限定で、楽器の持ち方から専門家に習い、瞬く間に力をつけていきます。また、書道も専用教室で本格的に学ぶことができます。若いときの芸術体験は感性を磨き、人生を豊かにします。
広野 若いうちから専門的な指導を受けられるというのは、将来的に貴重な財産になりますね。コンサートなどを鑑賞する際の感じ方に深みが出たり、芸術関連の行事で表現力を発揮できたりするのではないでしょうか。
長沼 行事でも表現力を高めあう場があります。卒業を控えた高3生を送る「送別学芸会」では、中1は合唱や合奏を、中2以降の各学年は演劇を披露します。演劇では、脚本、監督、演出、衣装、大道具・小道具、音響などすべて生徒が担います。キャストはオーディションで決め、「生演奏を担当したい」「背景を描きたい」など、それぞれの得意分野が生かされます。学年が上がるごとに構成力や表現力が向上していき、生徒同士が磨きあい、高めあいながら成長している様子がうかがえます。
広野 表現力を養うような授業もありますか。
長沼 本校では、中1の国語の「表現」の授業を通して、書く力や話す力の基礎を育てています。少人数で行うスピーチの授業では、準備に時間をかけて一つのスピーチを完成させます。教員が生徒一人ひとりの原稿にアドバイスを与え、スピーチの練習もしっかり行ったうえで、原稿を頭に入れてクラス全員の前でスピーチを行います。発表後には、クラス全員と教員からの評価を受け取ります。友人のスピーチからも刺激を受け、多くのことを学びます。他教科でもレポート提出や発表の場が数多く用意されており、「表現」で培った力を発揮していきます。
入試では答えだけでなく
式や考え方もしっかりと記述してほしい
広野 貴校は校地が広く、施設も恵まれていますね。
長沼 体育施設も充実し、広々とした構内は自然にも恵まれています。こうした施設は授業や行事でも存分に生かされています。たとえば、構内に生育する植物を理科の授業の教材にすることもあります。中1の授業では、ツツジの花を解剖し、その構造を調べました。実物に触れることで理解が深まり、学びも定着します。
広野 実験や観察をして、うまくいかないことを経験するのも非常に大事ですね。動画で結果を見るだけでなく、試行錯誤しながら体験することに意味があると思います。過程を大切にするという方針は、中学入試にも反映されていますね。
長沼 算数の入試では、受験生に「式や考え方をかくように」と伝えています。採点においては、受験生が「どのように考えたか」を、ていねいに時間をかけて追い、受験生の努力を余すところなく評価するようにしています。
また、国語の入試は記述問題が中心です。理科や社会でも記述問題が出題されます。受験生が、学んできたことをもとに「自分の考えを自分のことばで表現する力」を見ています。
こうした方針は、入学後の学習指導においても同様です。「入試は、学習院女子の最初の授業」と表現した生徒がいるほど、入試問題には本校らしさが表れています。
学習院大学や東京女子医科大学との
高大連携プログラムが充実
サピックス教育事業本部
本部長 広野雅明
広野 現在、力を入れている取り組みはありますか。
長沼 本校では、半世紀以上前から国際交流に注力し、現在も海外研修の機会を増やしています。イギリスの名門・イートン校で寮生活を送るサマースクール、ホームステイをしながら現地の姉妹校に通うオーストラリア研修に加え、大学や企業を訪問する米国シリコンバレー研修も2023年度から始まりました。高い英語力が求められ、とても実りのある内容となっています。
広野 進路面では、併設大学以外への進学者が増えていると伺いました。
長沼 学習院大学への進学者は50~60%ほどです。医歯薬系や芸術系など、併設大学にはない学部をめざす生徒が増えているのが一つの理由です。また、学校推薦型選抜や総合型選抜にチャレンジする生徒も増えています。これらの入試では、みずからの興味を深く探究する本校の学びが強みとなっているように感じています。
広野 高大連携プログラムも充実していますね。
長沼 学習院大学の教授方による出張授業や高等科生が大学生の授業を聴講できる機会、さらに大学に通い授業を受け、条件を満たせば単位を修得できる科目等履修生という制度があります。理学部では夏休みの研究室体験や企業と協同実施する宇宙プロジェクトへの中高生参加の機会も設けていただき、大学での学びを知る機会が豊富にあります。

昨夏、オーストラリアの名門女子校メソジスト・レディース・カレッジ(MLC)で行われた姉妹校締結20周年記念植樹式に参加した生徒たち
また、新たに東京女子医科大学との連携も始まり、授業聴講など貴重な機会を得ることができました。
広野 医学部志望の生徒にも良い刺激になりますね。最後に、受験生と保護者の方へメッセージをお願いします。
長沼 AI時代の今だからこそ、学校で友人と共に学びあい、切磋琢磨することが人間力を育むために必要だと確信しています。本校では、多様な体験の場を設け、教員一人ひとりが生徒をかけがえのない存在として、大切に接しています。ぜひ、実際に本校に足を運んでいただき生徒たちの生き生きとした姿をご覧いただければと存じます。

昨夏、オーストラリアの名門女子校メソジスト・レディース・カレッジ(MLC)で行われた姉妹校締結20周年記念植樹式に参加した生徒たち